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最終章 再生産
2353年⑴
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札幌市役所に勤務するT文は今や一男一女の父親である。長男誕生のときには、就職してすぐに産休・育休を取らざるを得なかったため、職場に迷惑をかけてしまったが、だからといって何か昇給などに影響があるわけではなかった。お役所様々である。
その妻のF実は結婚後もしばらくはホテルで勤務していたが、長女出産を機に退職し、今は子どもたちを幼稚園に預けてパートの仕事をしている。
そんな中、F実の携帯電話に連絡があった。90近くになる祖母のU子からだ。
「F実、お父さんが死んだよ。さっき伊勢佐木署から電話があった。」
「伊勢佐木署って横浜? 何で横浜なのよ。」
「どうも流れに流れて、関内駅周辺でホームレスやってたみたい。生活保護で大人しく暮らしてれば良かったのにね。」
F実の父親であるD夫は、栄養失調からそのまま帰らぬ人となったようだ。ちなみに、その際人定に役立ったのが、D夫が持っていたもう使えなくなった携帯電話だった。警察で中の情報をリカバリーし、電話番号などから元の契約者を特定したという。
「それで、私は警察にどうするかって聞かれてね、可哀想だから遺体を引き取って焼き場に持っていくことにしたの。あれでも一応息子だからね。」
「待って、その火葬場に行くの、私もついて行っていい?」
F実の言葉にU子はびっくりした。
「いいけど、あなたはD夫のことは嫌いなんじゃないの?」
「嫌いだから行くのよ。あいつが死んだっていう実感が欲しい。」
その日、F実はパート先に忌引の連絡をしたり、飛行機の予約をしたり、喪服をレンタルしたりした後、夕飯用に大きなステーキ肉を買った。
「今日の晩御飯は豪勢だな。」
T文が言うと、F実はニコニコして答えた。
「聞いて! あいつが死んだからお祝いなの。」
T文はギョッとした表情をした。
「あいつってどいつ?」
「私を産んだ男よ。明日、おばあちゃんが遺体を引き取って火葬場に持っていくっていうから、私も行くね。明日・明後日だけ東京に帰らせてね。子どもたちをよろしく。」
急な話だったが、F実の異様なハイテンションさに、T文は「あ、ああ、分かった。」とだけ言った。
長男が「ママ、どうしたの、すごく楽しそう。」と様子を伺ってくるので、F実は、「悪いやつが死んだの!」とだけ答えた。
翌朝、一番早い飛行機でF実は新千歳空港から羽田へ向かった。実に12年振りの東京だが、こんなふうに清々しい気分で帰省できるとは思わなかった。あまりにも気分が良かったので、F実はU子のためにお土産として、「白い恋人Ⅲ」を購入したくらいである。
羽田に着くと、F実はタクシーでU子の住むマンションへ行った。U子はF実が出ていったときから引っ越していないという話だったので、F実は記憶を辿りながら元々住んでいたマンションの部屋へ行って呼び鈴を押した。
「あ、F実、ちょっと待ってね。」
中から声がして、数十秒後に出てきたのは歳をとって小さくなったU子だった。
「おばあちゃん、大丈夫だったの?」
「あんまり大丈夫じゃないよ。足は痛いし、耳だって補聴器だし。でもおかげさまで特に悪いところはないみたい。さあ、上がって。」
マンションのリビングは特に変わりがないようだった。U子は言った。
「昔、あんたが使ってた部屋にD夫のこと寝かせてあるからね。もう秋だし、業者に冷却装置付けてもらってるから臭くはないと思うけど。」
F実は身を乗り出して言った。
「それ、見に行っていい?」
「どうぞ、お好きなように。」
F実は、自分が元々使っていた部屋に入った。電気はついているので、すぐに布団に寝かされているD夫の遺体が目に入った。髭はぼうぼうで、青白い顔をしている。
「こいつ、本当に死にやがった!」
大きな声でF実が叫んだので、U子はたしなめた。
「ちょっと、一応人が死んでるんだから静かにしなさい。」
「で、どうすんの? 火葬場への手配はどうなってる??」
「明日の朝、業者が運んでくれることになってる。ちゃんと焼き場の予約も取れたんだって。」
F実は不満げな顔をした。
「え、こんなやつと一晩一緒にいるとか嫌だよ。今日にできないの?」
U子は苦々しい表情で言った。
「あのね、都内は焼き場も混んでるのよ。たまたま明日あいてたから、それが最短なんだから。」
「そっか。じゃあ、私、今からどこかホテル探すわ。」
F実はU子とリビングに戻ると、カバンから、「白い恋人Ⅲ」を取り出した。
「おばあちゃん、これ北海道土産ね。」
U子は、「ありがとう」と言ったものの、動こうとしない。
「おばあちゃん、もしかして悲しいの?!」
F実の質問に、U子はゆっくりと答えた。
「そりゃ悲しいよ。一人しかいない息子が死んだんだもの。あんたは北海道に行ったままで帰ってこないし。」
そういえば、F実はU子とは、自分の結婚式以来会っていなかった。F実が北海道に遊びに来るように言っていたのだが、U子は足腰が痛いことを理由に来ようとしなかった。U子は、F実の子どもたちとはテレビ電話でたまに話すくらいだった。
「もうさ、おばあちゃん、北海道に来ればいいんだよ。こいつも死んだし、東京に住んでる理由ないじゃない。」
F実の提案に、U子は首を横に振った。
「もうこの歳で引っ越すのは辛いよ。幸い、東京には知り合いがいるし、何とかする。」
「そっか。」
F実はスマートフォンで検索して、マンションの近くのホテルを探した。池袋駅近くの安いホテルが空いているというので、今晩はそこに泊まることにした。
「そうだ、おばあちゃん、こいつのためにいくらかかるの?」
U子はテーブルの上のファイルを取り出して、領収書を見せた。
「式やらないから、20万くらいだね。」
F実は言った。
「それ、うちが半額もつよ。」
U子は手を顔の前で振った。
「いいよ、私が母親なんだから、私が払うので構わない。年金貯めてたのがあったから大丈夫よ。」
「そっか、ごめんね。」
F実は内心ホッとしていた。子育てにはお金がかかる。
「じゃあ、お昼は出前取ろうね。それは私が払うから。」
U子は出前の蕎麦を食べながら、こう呟いた。
「D夫は私が殺したようなもんだ。」
「おばあちゃん、何を言うの? あいつは大人なんだよ、放っておいたら勝手に死んだだけじゃない!」
「でもね、私にもっとできることがあったんじゃないかって。」
U子が目に涙を貯めているのを見て、F実は言った。
「おばあちゃん、もしこいつにずっと関わってたら、おばあちゃんは心労でこんなに長生きできてないよ! 自分の命のほうがだいじだよ。」
「そんなもんかねぇ。」
U子があまり納得していないようだったので、F実はここから早く出て一人で喜びを満喫しようと思った。湿っぽい空気はごめんだ。
「おばあちゃん、明日はここに何時に来たらいい? 私、久々にこっちで買い物したいんだ。」
U子はうつむいたままで言った。
「早いけど8時でお願い。」
F実は再びタクシーを呼ぶと、荷物を持ってマンションを出、池袋駅近くのホテルに行った。フロントには、まだチェックイン時刻前だと言われたので、スーツケースを預けて池袋の街を散策することにした。
「本当に何も変わってないのね。」
池袋東口には、西武百貨店が営業を続けていたが、その壁面には巨大スクリーンがあって、最新ファッション情報を流したり、防犯を呼びかけたりしている。時折ポリスロボットが巡回して、フクロウ型の交番の中に入って行くのが見えた。駅前の明治通りは、地上を走る車と浮かんで走るスカイカーやスカイスクーターでごった返していた。もちろん歩道にもたくさんの通行人がいる。
「どこからこんなに人が出てくるのかしらね。」
F実はとりあえず西武百貨店に入って、ショッピングを楽しむことにした。ゆっくりこうやって東京で買い物ができる日が来るとは思わなかった。その喜びを噛み締めるように、F実はワンフロアずつ丁寧にデパート内を見て回った。
夕方になると、F実はコンビニで夕飯と缶ビール二本とつまみを買ってホテルに戻った。一人で飲食店に入るのははばかられたからだ。
「よし、これから一人だけど祝杯だ!」
F実はビール缶のプルタブを引いた。
その妻のF実は結婚後もしばらくはホテルで勤務していたが、長女出産を機に退職し、今は子どもたちを幼稚園に預けてパートの仕事をしている。
そんな中、F実の携帯電話に連絡があった。90近くになる祖母のU子からだ。
「F実、お父さんが死んだよ。さっき伊勢佐木署から電話があった。」
「伊勢佐木署って横浜? 何で横浜なのよ。」
「どうも流れに流れて、関内駅周辺でホームレスやってたみたい。生活保護で大人しく暮らしてれば良かったのにね。」
F実の父親であるD夫は、栄養失調からそのまま帰らぬ人となったようだ。ちなみに、その際人定に役立ったのが、D夫が持っていたもう使えなくなった携帯電話だった。警察で中の情報をリカバリーし、電話番号などから元の契約者を特定したという。
「それで、私は警察にどうするかって聞かれてね、可哀想だから遺体を引き取って焼き場に持っていくことにしたの。あれでも一応息子だからね。」
「待って、その火葬場に行くの、私もついて行っていい?」
F実の言葉にU子はびっくりした。
「いいけど、あなたはD夫のことは嫌いなんじゃないの?」
「嫌いだから行くのよ。あいつが死んだっていう実感が欲しい。」
その日、F実はパート先に忌引の連絡をしたり、飛行機の予約をしたり、喪服をレンタルしたりした後、夕飯用に大きなステーキ肉を買った。
「今日の晩御飯は豪勢だな。」
T文が言うと、F実はニコニコして答えた。
「聞いて! あいつが死んだからお祝いなの。」
T文はギョッとした表情をした。
「あいつってどいつ?」
「私を産んだ男よ。明日、おばあちゃんが遺体を引き取って火葬場に持っていくっていうから、私も行くね。明日・明後日だけ東京に帰らせてね。子どもたちをよろしく。」
急な話だったが、F実の異様なハイテンションさに、T文は「あ、ああ、分かった。」とだけ言った。
長男が「ママ、どうしたの、すごく楽しそう。」と様子を伺ってくるので、F実は、「悪いやつが死んだの!」とだけ答えた。
翌朝、一番早い飛行機でF実は新千歳空港から羽田へ向かった。実に12年振りの東京だが、こんなふうに清々しい気分で帰省できるとは思わなかった。あまりにも気分が良かったので、F実はU子のためにお土産として、「白い恋人Ⅲ」を購入したくらいである。
羽田に着くと、F実はタクシーでU子の住むマンションへ行った。U子はF実が出ていったときから引っ越していないという話だったので、F実は記憶を辿りながら元々住んでいたマンションの部屋へ行って呼び鈴を押した。
「あ、F実、ちょっと待ってね。」
中から声がして、数十秒後に出てきたのは歳をとって小さくなったU子だった。
「おばあちゃん、大丈夫だったの?」
「あんまり大丈夫じゃないよ。足は痛いし、耳だって補聴器だし。でもおかげさまで特に悪いところはないみたい。さあ、上がって。」
マンションのリビングは特に変わりがないようだった。U子は言った。
「昔、あんたが使ってた部屋にD夫のこと寝かせてあるからね。もう秋だし、業者に冷却装置付けてもらってるから臭くはないと思うけど。」
F実は身を乗り出して言った。
「それ、見に行っていい?」
「どうぞ、お好きなように。」
F実は、自分が元々使っていた部屋に入った。電気はついているので、すぐに布団に寝かされているD夫の遺体が目に入った。髭はぼうぼうで、青白い顔をしている。
「こいつ、本当に死にやがった!」
大きな声でF実が叫んだので、U子はたしなめた。
「ちょっと、一応人が死んでるんだから静かにしなさい。」
「で、どうすんの? 火葬場への手配はどうなってる??」
「明日の朝、業者が運んでくれることになってる。ちゃんと焼き場の予約も取れたんだって。」
F実は不満げな顔をした。
「え、こんなやつと一晩一緒にいるとか嫌だよ。今日にできないの?」
U子は苦々しい表情で言った。
「あのね、都内は焼き場も混んでるのよ。たまたま明日あいてたから、それが最短なんだから。」
「そっか。じゃあ、私、今からどこかホテル探すわ。」
F実はU子とリビングに戻ると、カバンから、「白い恋人Ⅲ」を取り出した。
「おばあちゃん、これ北海道土産ね。」
U子は、「ありがとう」と言ったものの、動こうとしない。
「おばあちゃん、もしかして悲しいの?!」
F実の質問に、U子はゆっくりと答えた。
「そりゃ悲しいよ。一人しかいない息子が死んだんだもの。あんたは北海道に行ったままで帰ってこないし。」
そういえば、F実はU子とは、自分の結婚式以来会っていなかった。F実が北海道に遊びに来るように言っていたのだが、U子は足腰が痛いことを理由に来ようとしなかった。U子は、F実の子どもたちとはテレビ電話でたまに話すくらいだった。
「もうさ、おばあちゃん、北海道に来ればいいんだよ。こいつも死んだし、東京に住んでる理由ないじゃない。」
F実の提案に、U子は首を横に振った。
「もうこの歳で引っ越すのは辛いよ。幸い、東京には知り合いがいるし、何とかする。」
「そっか。」
F実はスマートフォンで検索して、マンションの近くのホテルを探した。池袋駅近くの安いホテルが空いているというので、今晩はそこに泊まることにした。
「そうだ、おばあちゃん、こいつのためにいくらかかるの?」
U子はテーブルの上のファイルを取り出して、領収書を見せた。
「式やらないから、20万くらいだね。」
F実は言った。
「それ、うちが半額もつよ。」
U子は手を顔の前で振った。
「いいよ、私が母親なんだから、私が払うので構わない。年金貯めてたのがあったから大丈夫よ。」
「そっか、ごめんね。」
F実は内心ホッとしていた。子育てにはお金がかかる。
「じゃあ、お昼は出前取ろうね。それは私が払うから。」
U子は出前の蕎麦を食べながら、こう呟いた。
「D夫は私が殺したようなもんだ。」
「おばあちゃん、何を言うの? あいつは大人なんだよ、放っておいたら勝手に死んだだけじゃない!」
「でもね、私にもっとできることがあったんじゃないかって。」
U子が目に涙を貯めているのを見て、F実は言った。
「おばあちゃん、もしこいつにずっと関わってたら、おばあちゃんは心労でこんなに長生きできてないよ! 自分の命のほうがだいじだよ。」
「そんなもんかねぇ。」
U子があまり納得していないようだったので、F実はここから早く出て一人で喜びを満喫しようと思った。湿っぽい空気はごめんだ。
「おばあちゃん、明日はここに何時に来たらいい? 私、久々にこっちで買い物したいんだ。」
U子はうつむいたままで言った。
「早いけど8時でお願い。」
F実は再びタクシーを呼ぶと、荷物を持ってマンションを出、池袋駅近くのホテルに行った。フロントには、まだチェックイン時刻前だと言われたので、スーツケースを預けて池袋の街を散策することにした。
「本当に何も変わってないのね。」
池袋東口には、西武百貨店が営業を続けていたが、その壁面には巨大スクリーンがあって、最新ファッション情報を流したり、防犯を呼びかけたりしている。時折ポリスロボットが巡回して、フクロウ型の交番の中に入って行くのが見えた。駅前の明治通りは、地上を走る車と浮かんで走るスカイカーやスカイスクーターでごった返していた。もちろん歩道にもたくさんの通行人がいる。
「どこからこんなに人が出てくるのかしらね。」
F実はとりあえず西武百貨店に入って、ショッピングを楽しむことにした。ゆっくりこうやって東京で買い物ができる日が来るとは思わなかった。その喜びを噛み締めるように、F実はワンフロアずつ丁寧にデパート内を見て回った。
夕方になると、F実はコンビニで夕飯と缶ビール二本とつまみを買ってホテルに戻った。一人で飲食店に入るのははばかられたからだ。
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