傷心クルーズ 〜大人だけの遊覧船〜

タロウ

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3 ラウンジにて

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部屋に戻ると、テーブルの上に見覚えのある箱が置かれていた。
開けてみれば、昨日とは違うドレス――
膝より上の丈、可愛らしさを強調するデザイン。
「今夜はこれで」――そう言われているのがわかる。
また船の仕組みに導かれるように、彼女はそのドレスに袖を通した。
そして夜、ラウンジレストランへと向かう。
そこに待つのは、まだ知らぬ新しい出会いだった。


レストランの扉を開けると、シャンデリアの光が反射する優雅な空間が広がった。
昨日とは違う、少し可愛らしいドレスに身を包み、彼女はスタッフに案内されるまま席に着いた。
「よろしければ、ご一緒しても?」
隣の席から声をかけてきたのは、落ち着いた雰囲気の男だった。
スーツをきちんと着こなし、物腰も柔らかい。
「もちろんです」
グラスを傾けるたび、琥珀色のワインが灯りを映した。
レストランは上品なざわめきに包まれ、ピアノの旋律が遠くから届く。
「旅はお好きですか?」
彼の問いは穏やかで、声も落ち着いている。
「ええ。……でも、こうして一人で船に乗るのは初めてです」
「勇気がいったでしょう」
「少しだけ。でも……来てよかったと思っています」
気づけば、口が滑らかになっていた。
彼は聞き上手で、否定も茶化しもしない。ただ時折短く頷き、質問を重ねる。
安心感が胸に広がり、つい余計なことまで話してしまいそうになる。
「あなたみたいな方は珍しい」
「そうですか?」
「ええ。……女性はたいてい、もっと早く“答え”を欲しがるものです」
一瞬、微笑んだ口元が鋭さを帯びたように見えた。
けれど次の瞬間にはまた柔らかな表情に戻る。
ワインの酔いのせいか、彼女は気に留めずに笑みを返した。
食事が進むほどに、不思議な高揚感が増していく。
そのせいで、最後の一杯を飲み干したとき、心が少し浮き立っていた。
「ご一緒に少し歩きませんか」
食後に誘われ、頷いて席を立つ。
彼の背に導かれ、レストランの奥へ。
人の気配が途絶え、静かな空気が流れる。
壁際で立ち止まると、彼は振り返り、すっと彼女の手を取った。
「落ち着きますか? 僕といて」
「……ええ。安心感があります」
その言葉を聞いた瞬間、彼の瞳にぞくりとする光が宿った。
「――安心、ね」
囁きは柔らかいのに、意味が違う。
「安心する女ほど、壊したくなる」
手首を取られ、背中が壁に押しつけられる。
「……っ!」
「本当は期待してるんでしょう? さっきから目がそう言ってる」
紳士的な仮面は完全に剥がれ落ち、冷たい笑みが間近に迫る。
強引に塞がれた唇に、否応なく心臓が跳ねた。

そのまま連れていかれたのは、化粧室の奥。
彼は彼女を洗面台へ押しやり、鏡の前で立たせた。
背後から腕を絡め、低い声で囁く。
「鏡を見てください。……ほら、自分がどんな顔をしているか」
肩越しに映った自分の姿。
頬は赤く、唇は濡れ、瞳は潤んでいる。
まだ何もされていないのに、既に熱に浮かされた顔をしていた。
「……いや……そんな……」
「そんな顔をして否定するんですか。随分、はしたない」
胸を覆う布地の上から指が這い、わざとゆっくりと揉み上げる。
「ん……っ」
呻く声が、鏡越しに自分の耳へ返ってくる。
羞恥と快感が混じり、思考が揺らいだ。
下腹部にも手が伸びる。
下着の縁をなぞり、すぐには触れず、布の上を軽く押す。
「ほら、濡れてきてますよ。……まだ挿れてもいないのに」
「……お願い、やめ……」
「やめて欲しい? それとも、もっと?」
舌が首筋に這い、唾液が冷たく光る。
胸の先端を舌で転がしながら、股間は一切解放しない。
「声が震えてますね。……我慢できないんでしょう」
彼女は鏡の中の自分を見ながら、ついに言葉を零した。
「……イかせて……もう、イキたい……」
彼は喉をくぐもらせて笑った。
「懇願する姿、いいですね。……でも、まだ駄目です」
乳首を強く吸い上げ、指で擦り、何度も痙攣させながら、核心には触れない。
 胸も下も唾液でぐちゃぐちゃになり、彼女は涙をにじませて鏡にしがみつく。
「鏡を見て。こんな淫らな顔、あなた自身が一番よくわかるでしょう」
「や……いやぁ……っ」
「でも体は、正直だ」
限界を越えて震える彼女の腰を、彼は片手で抱え込んだ。
そして壁に押しつけ、背後から深く貫いた。
「……っあああっ!」
最初の一突きで、全身が跳ねた。
「いい顔ですね。…ほら、ご褒美ですよ」
耳元に吐息をかけながら、深く、何度も突き上げる。
「んぁ……っ、ああ……ご褒美……っ」
言葉を繰り返すたび、痙攣は強くなる。
絶頂の最中も容赦なく責められ、声は抑えきれずに室内に響いた。
「はぁ…、すごく中がうねってますね…」
「イク…!イって…あぁ!っんぅ…」
幾度も繰り返され、体が力を失うまで与えられた快楽。
最後に記憶が途切れたのは、彼の囁きだった。
「今度は、もっと長く差し上げましょう」

目を覚ますと、個室ではなく自分の部屋のベッドにいた。
ドレスのまま、毛布がかけられている。
テーブルにはまだ冷たいグラスと、一枚の紙切れ。
『また後で』
昨日、今日――繰り返される不思議な現象に、彼女は息をつきながら紙を指でなぞった。
疑問と、次を期待する熱が、同じくらい胸を満たしていた。
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