傷心クルーズ 〜大人だけの遊覧船〜

タロウ

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船旅の終わり

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船内放送が流れ、港に停泊する知らせが届いた。
目覚めたベッドサイドには、またしても箱が置かれている。
中身は首の後ろでリボンを結ぶタイプのワンピース。
一度解けば、そのまま脱げてしまいそうな、危うい仕立てだった。
それでも、もう違和感はなかった。
――これも“そういうもの”だと、自然に受け入れてしまっている自分に気づく。
荷物をまとめて甲板へ出ると、港の街並みが目に飛び込んだ。
シチリアを思わせる賑わい。陽光に照らされた石畳、カラフルなガーランドが風に揺れる。
音楽と笑い声が交じり合い、華やかで開放的な空気が広がっていた。
「お姉さん!」
突然、背後から声を掛けられる。
振り返ると、若い男が笑顔で駆け寄ってきた。
小麦色の肌に輝く瞳。陽気さと無邪気さを併せ持つその姿に、思わず見入ってしまう。
「僕、ルカ。案内を任されてるんだ」
そう言って差し出された手に、彼女は自然に応じてしまう。
「……わたしは、“ゆか”」
口にして気づく。
――この旅で初めて、自分の名前を名乗ったことに。
ルカは荷物を軽々と肩に担ぎ、「じゃあ行こう」と先導する。
通りを歩けば、陽気な音楽と露店の匂いが漂い、港町の熱気が体を包み込む。
けれど、路地をひとつ外れると、急に人影が薄れた。
石畳の道はひっそりとし、建物の造りもどこか高級感を帯びている。
ルカが立ち止まったのは、大きなアイアンゲートの前。
くねる装飾が施された黒鉄の門が、重々しくそびえていた。
「今夜からは、ここだよ」

ルカの言葉に目を上げると、アイアンゲートの向こうに広がる庭が視界に飛び込んだ。
 石畳の小径の両脇には花々が整然と植えられ、どこかヨーロッパの貴族の庭園を思わせる。
 けれど観光地らしい人の気配はまるでなく、静まり返った空気が広がっている。

「……素敵な場所ね」
 思わず零した声に、ルカは得意げに笑う。
「でしょ? 僕のお気に入りなんだ」
彼に続き歩くと、視界の奥に小さなガゼボが現れる。
白い鉄骨に蔦が絡まり、可愛らしい形をしている。
「ほら、ここ。入ってみて」
生垣に囲まれたガゼボに足を踏み入れると、外の喧騒が嘘のように静かだった。
ベンチに腰を下ろしたゆかを前に、ルカはしゃがみ込んで覗き込む。
「ねえ、ゆか。僕、まだご褒美もらってないんだ」
「……ご褒美?」
問い返すより早く、彼の手が膝に置かれる。
子犬のように無邪気な笑顔を浮かべながらも、その瞳には熱が宿っていた。
「ここで、貰っていい?」
胸が跳ねる。
船での夜を思い出す熱が、全身に広がる。
――こんなところで、でも……。
迷いが一瞬で、欲の方に傾いた。
小さく頷くと、ルカの笑顔がさらに弾ける。
「ありがとう」
スカートを捲り上げ、顔を埋められる。
「ひ、…んぅ…」
舌が秘部を舐め、無邪気な声で「甘いね」と笑い、また強く吸い上げる。
「っあ……だめ、ルカ……」
「だめって言うくせに、逃げないんだ」
指が入り、舌が絡み、ゆかは幾度も小さな絶頂を重ねた。
「も、…もぅ…イってるの…!」
また激しく痙攣しつつ、足がピンと張りつめる。
「ずっとイってる…可愛い」
小さく悲鳴を漏らし、今までより深い絶頂を迎え震えた。
最後には潮まで吹かされ、スカートの奥が濡れそぼる。
ルカは満足そうに口元を拭い、「ご馳走様」と囁く。
身を整えながら、悪戯っぽく笑った。
「ちょっと責めすぎたかな…でもさ、まだまだこれからだから」
彼に手を引かれ、火照った身体のまま再び庭を抜ける。
見上げれば、屋敷は静かにその姿を現していた。
高い窓、重厚な石造りの壁、扉の奥に広がる未知の空間――
足を踏み入れる直前、ゆかの胸は高鳴りと不安でいっぱいになっていた。
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