傷心クルーズ 〜大人だけの遊覧船〜

タロウ

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温室にて

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アンドレに導かれ、ゆかは屋敷の中を歩いた。
 高い書棚が並ぶ図書室では、背表紙の並ぶ静けさに胸が落ち着き、
 音楽室ではグランドピアノの黒い艶が、深い静謐を湛えていた。
 美術室には鮮やかな絵画や彫刻が置かれ、台所には大きな薪のオーブンが据えられている。

「気に入った場所があれば、遠慮なく使っていい」
 落ち着いた声が背に届く。
 ゆかは頷きながら、自然とその声に安心を覚えていた。

 やがて扉を抜けると、広い庭に出た。
 芝生の緑は朝露を帯び、噴水が陽光にきらめく。
 小径には花々が咲き揃い、季節ごとに手入れされていることが伝わってくる。

「この庭は、時間ごとに表情が変わる。今は薔薇が見頃だ」
 アンドレの説明に視線を移すと、赤や白の薔薇が一面に揺れていた。
 そのゆったりとした歩調に合わせ、ゆかは肩の力を抜いて歩いている自分に気づく。

 庭の一角に、白い温室があった。
 アンドレが扉を押し開けると、湿り気を帯びた温かな空気と、花々の香りが押し寄せる。

「……すごい」
 思わず声が洩れる。
 中には見たことのない花が色とりどりに咲き、天窓から差す光に透けて輝いていた。
 アイアンのガーデンチェアと小さなテーブルが置かれ、まるで秘密の庭のようだった。

 ゆかは夢中で花を見渡し、香りを吸い込み、足を止めるごとに小さな感嘆を漏らす。
 その姿を、アンドレは少し離れたところから穏やかに見つめていた。
 まるで陽だまりに咲く花を慈しむように。

 ――その視線の温かさに気づいた瞬間、ゆかの胸の奥にじんわりとした熱が灯った。

温室の扉が閉じると、湿った空気と花の香りが全身を包んだ。
 見たこともない花々が天窓の光を浴びて揺れている。
「……すごい。こんな場所、初めて」
 思わず呟くと、背後から低く落ち着いた声が降りてきた。

「君がここにいると、花より美しい」
 その言葉に頬が熱くなる。振り返る間もなく、アンドレの大きな掌が頬を包み、深い口付けが落ちてきた。

 重なった唇は穏やかで、けれど息を奪うほど濃厚だった。
 舌が触れ合うたびに、胸の奥がじんわりと熱くなっていく。
 抗う気持ちよりも、ただ受け入れてしまいたい――そんな欲望が体を支配していく。
「んっ…ふぅ……うっ」
 アイアンチェアに座らされ、手を取られる。
「鼓動が速いな。……期待と不安が混ざっている」
 指先を撫でられるだけで小さな震えが伝わり、心臓の音が余計に大きく響く。

 服のボタンをひとつずつ外され、唇が鎖骨に触れる。
「ここ、もう赤くなっている」
 淡々と告げられるたび、羞恥に体が熱くなる。

 裾を捲られ、下着越しに触れられる。
「もう濡れているな。寝起きから疼いていた証拠だ」
「……言わないで……」
 顔を隠そうとした手を掴まれ、その指に口付けが落ちる。
「隠すな、全部見せろ」

 下着をずらされると、視線の先に赤く腫れた蕾が晒された。
「見ろ……こんなに大きくなっている」
 指が軽く擦るたび、背が跳ねる。
「敏感だな。……触れられるのを待っていたんだろう」
「ん……あっ…、」
 耳元で囁かれる声に、抗いようもなく甘い声が洩れる。
 胸も大きな掌で包まれ、尖った先を弄られ、羞恥と快感で涙が滲んだ。

「ここも張っている。……触れられたくて仕方なかったんだな」
「や……っ」
 言葉と裏腹に身体は素直に震え、奥へと指を迎え入れてしまう。

 腰を抱かれ、硬く反った熱が押し当てられる。
「怖がらなくていい。……ただ俺に包まれていればいい」
 ゆっくりと押し入れられると、敏感すぎる内側が痙攣し、全身に電流のような快感が走った。

「ん、…あ、あぁぁっ……!」
 「いい、奥まで受け入れている。……君はもう俺の一部だ」
 ゆっくりと、しかし逃げ場を与えない律動で、何度も絶頂へ導かれていく。

「イッ……イッてる、からぁ……」
「可愛い……最高の顔だな」
最奥を強く打ち付け、ゆかの中を満たした。
汗に濡れた髪を撫で、涙を拭われながら抱きしめられる。
力が抜け、彼の胸に身を委ねたまま、呼吸が乱れた。

 「…君には、まず体力が必要だな」
 低い声に包まれ、髪を撫でられながら意識がふっと遠のく。
 花の香りに満ちた温室で、ゆかは安らかな眠りに落ちていった。
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