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茶番劇
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さていよいよ断罪劇当日、学園の卒業式、正確には記念パーティ。
あいつもそいつも楽しみにしていた一大イベント。
俺も楽しみだったよ、卒業生じゃないけど、この国で過ごす最後の日だもの。
それにしても、態々卒業式でやるのはどうなんだろう。
確かに有力者の子供が通う学園だ、卒業式に参加する保護者もお偉いさんぞろいだ、なんなら今年は王子が卒業するから国王も参加するんだとか。
そして国王にはこの話は先に伝えられてるんだとか、というかある程度の参加者には話は通してるだろうな。
正確には、第二王子の派閥かな、そもそも今回のこれ、政敵の失脚もついでに企てようとしてるかもな、不正くらい貴族やってれば大なり小なりやるだろうし。
最低限の策略はしてるんだろなぁ、否王妃の入れ知恵らしいけど。
さてまず手始めに、侯爵の不正だとか色々持ち出してきたな。
今更言う事でもないが、こういうのは大っぴらにやるものじゃないと思うんだよ、人の口に戸は立てられないんだから、自国の貴族の恥をこんなところで晒すべきじゃないと思うんだけど。
そのついでに複数の貴族の後ろ暗い事を色々掘り出して持ち出してきた、叩けば埃がでる人間しかいない会場だけど、叩いた相手が限定されてるから正義みたいなツラしてる。
楽しんでいらっしゃるようで何より、俺とはもう関係ない事だから好きにして。
さてつまらない貴族連中の話が終わったようで、ようやっと俺たちの番か、前座が長すぎて飽きてきたところだ。
まず手始めに、俺と侯爵の間の血縁関係について持ち出してきたな。
そして平然とした顔で同意する母、驚愕する侯爵、可哀そうだね。
母を信じるのが馬鹿だったんだよ、一つ賢くなったね、次に生かしな。
次があったら、だけど。
さて次、前夫人の死について、母が毒殺したとか何とかいう話になった。
「毒を用意したのも、毒を煽るまで追い詰めたのも私よ? でもその毒を私の紅茶ではなく自分の紅茶に混ぜて飲んだのは彼女、私は強制してないわ、彼女の意思よ」
これには否定する母、どうして否定できるんだろう、ほぼ事実なのに。
我が母親ながら、滅茶苦茶なコト言ってるな。
死ぬまで追い詰めたんなら自分が殺したも同然だろうに、人間誰しも母のように自分が死ぬくらいなら相手の喉元噛み千切る、常に手負いの獣のように狂暴じゃないんだから。
でもその無茶苦茶な言葉を納得できなくとも、心に響くだけの何かがあるらしい、流石俺の母親。
母と父をはじめとした数人の人間について、罪の告発が終わり、等々俺の番が回ってきたらしい。
なんか色々並べてるけど、心底興味ないから退屈でしかない。
ようやく静かになったので、ニッコリ笑って見つめ返す。
母に似た顔に感謝だな。
笑み一つで会場の空気が変わるんだから、俺に向ける目から非難の色が抜けるんだから、人間ってのは単純だよね。
「俺が悪い? 確かにその通り、でも俺なあることないことないことないこと適度に言っても、あっさり信じたのはだぁれ? 俺の言葉と真偽すら疑わなかったくせにいざ実は嘘だったんだよってなったら途端に騙された自分は悪くないって、流石に都合が良すぎるやしないかな? 被害者ぶるなよ。自分でやったことの責任はちゃんと自分で取れ」
言い切ってから、とびきり綺麗な笑みを浮かべて、王子様に庇われながら俺を睨むアイツに目を向ける。
「俺はお前に対して詫びることは一つもない、悪いとは一切思ってない、その上でお前が俺の罪を断じたいというのなら今ここで俺を殺せ、特別に抵抗しないで殺されてあげる」
静まり返る会場、集まる視線。
さっきまでこの会場の中心だった奴らは、呆然と俺を見るだけで何もしない。
最初に動いたのは第二王子殿下、流石は王族だ、他の有象無象よりはマシな反応が出来る。
「どういうつも……」
「部外者は黙ってろ」
言葉を遮る。
でも許さないよ、邪魔はさせない。
だってお前は本当にこの件には何の関係もないもの、いかなる口出しも行動も許さない。
俺がそのまがい物に殺せと言ったのは、まがい物でも兄の姿をしているからだ、その姿に免じて、特別にチャンスをあげようと思っただけ。
お前はおまけなんだから、今はそこに大人しくたってなよ。
立っているだけなら、何も言わないで置いてあげた、だって一応は王族だもの。
この国に生きる一国民として、最低限の礼儀は払うよ。
そして、この間もアイツは動かない、何も言えない。
殺せないのか、やっぱりなと思うし、拍子抜けだとも思う。
優しいから?
善良だから?
そんなわけないだろ。
ただ甘ったれてるだけだ、覚悟が決まってないだけ。
見当違いにも俺を憎んでるくせに、俺を殺す覚悟はない甘ったれ。
だからコレはダメなんだ。
兄なら俺が罪を認めなければいけないよと言ったようし、罪の清算として殺せと言えば君がそう望むのならと俺を殺してた。
優しいけど、寛容だけど相手の意思を尊重して覚悟を重んじる。
そういう人間だ。
兄は母の形見を俺に盗まれた時、窃盗はいけないと言ったんだぞ。
俺を責めるでもなく、感情をぶつけるでもない、ただ静かにそう論してきた。
ソレは同じ状況で同じこと言えるのか。
言えるわけないだろ。
きっと責めただろうね、感情を露わにしたかもしれない、そんなつまらないヤツだろ。
そんなヤツを庇う連中に、追い込まれる連中。
つまらないな。
つまらない奴しかいない、気に入らない。
ほら、母さんなんて飽きたのか欠伸してる、折角断頭台に登る覚悟決めて長い髪まで切ったのに。
絹糸か何かのような白銀の髪をバッサリ切っても相変わらず綺麗な母は、きっと死ぬ時まで綺麗だろうな。
こんな茶番が続いてちゃ母さんの覚悟が安っぽくなるじゃん。
つまらない連中にため息が漏れる。
全くやってられない。
「俺からの最後のチャンスを捨てるつもりらしいお前らの茶番にはもう付き合ってられないし、そろそろ退場させてもらうよ」
俺を裁く資格なんてない人間に、折角俺が特別に裁くチャンスをくれてやったのに。
兄にすらくれてやらなかったんだよ、兄ならやろうと思えば自分でつかみ取れるだろうけど、お前らじゃ自力では無理だから俺がくれてやったのに。
折角のチャンスをものにできないなんて、なんてつまらない人間なのだろう。
草木のようにそこに立っているだけで何の行動も起こさない連中の頭上を飛び越えて、窓を全開にして枠に足をかける。
「それじゃぁ、さよなら」
最後に挨拶、思い出したように動き出した連中に上着を投げつけて背中から窓の外に身を投げ出す。
落下しながら体勢を変え、建物の壁を駆け下りながら勢いを殺し、近くの木の枝目掛けて跳ぶ。
枝を掴むと物理法則に従ってエグイくらいたわむ、体を後ろに振ってから勢いそのまま前に飛びながら手を離す。
我ながらサーカス並みの曲芸、これで食っていけるかも。
あいつもそいつも楽しみにしていた一大イベント。
俺も楽しみだったよ、卒業生じゃないけど、この国で過ごす最後の日だもの。
それにしても、態々卒業式でやるのはどうなんだろう。
確かに有力者の子供が通う学園だ、卒業式に参加する保護者もお偉いさんぞろいだ、なんなら今年は王子が卒業するから国王も参加するんだとか。
そして国王にはこの話は先に伝えられてるんだとか、というかある程度の参加者には話は通してるだろうな。
正確には、第二王子の派閥かな、そもそも今回のこれ、政敵の失脚もついでに企てようとしてるかもな、不正くらい貴族やってれば大なり小なりやるだろうし。
最低限の策略はしてるんだろなぁ、否王妃の入れ知恵らしいけど。
さてまず手始めに、侯爵の不正だとか色々持ち出してきたな。
今更言う事でもないが、こういうのは大っぴらにやるものじゃないと思うんだよ、人の口に戸は立てられないんだから、自国の貴族の恥をこんなところで晒すべきじゃないと思うんだけど。
そのついでに複数の貴族の後ろ暗い事を色々掘り出して持ち出してきた、叩けば埃がでる人間しかいない会場だけど、叩いた相手が限定されてるから正義みたいなツラしてる。
楽しんでいらっしゃるようで何より、俺とはもう関係ない事だから好きにして。
さてつまらない貴族連中の話が終わったようで、ようやっと俺たちの番か、前座が長すぎて飽きてきたところだ。
まず手始めに、俺と侯爵の間の血縁関係について持ち出してきたな。
そして平然とした顔で同意する母、驚愕する侯爵、可哀そうだね。
母を信じるのが馬鹿だったんだよ、一つ賢くなったね、次に生かしな。
次があったら、だけど。
さて次、前夫人の死について、母が毒殺したとか何とかいう話になった。
「毒を用意したのも、毒を煽るまで追い詰めたのも私よ? でもその毒を私の紅茶ではなく自分の紅茶に混ぜて飲んだのは彼女、私は強制してないわ、彼女の意思よ」
これには否定する母、どうして否定できるんだろう、ほぼ事実なのに。
我が母親ながら、滅茶苦茶なコト言ってるな。
死ぬまで追い詰めたんなら自分が殺したも同然だろうに、人間誰しも母のように自分が死ぬくらいなら相手の喉元噛み千切る、常に手負いの獣のように狂暴じゃないんだから。
でもその無茶苦茶な言葉を納得できなくとも、心に響くだけの何かがあるらしい、流石俺の母親。
母と父をはじめとした数人の人間について、罪の告発が終わり、等々俺の番が回ってきたらしい。
なんか色々並べてるけど、心底興味ないから退屈でしかない。
ようやく静かになったので、ニッコリ笑って見つめ返す。
母に似た顔に感謝だな。
笑み一つで会場の空気が変わるんだから、俺に向ける目から非難の色が抜けるんだから、人間ってのは単純だよね。
「俺が悪い? 確かにその通り、でも俺なあることないことないことないこと適度に言っても、あっさり信じたのはだぁれ? 俺の言葉と真偽すら疑わなかったくせにいざ実は嘘だったんだよってなったら途端に騙された自分は悪くないって、流石に都合が良すぎるやしないかな? 被害者ぶるなよ。自分でやったことの責任はちゃんと自分で取れ」
言い切ってから、とびきり綺麗な笑みを浮かべて、王子様に庇われながら俺を睨むアイツに目を向ける。
「俺はお前に対して詫びることは一つもない、悪いとは一切思ってない、その上でお前が俺の罪を断じたいというのなら今ここで俺を殺せ、特別に抵抗しないで殺されてあげる」
静まり返る会場、集まる視線。
さっきまでこの会場の中心だった奴らは、呆然と俺を見るだけで何もしない。
最初に動いたのは第二王子殿下、流石は王族だ、他の有象無象よりはマシな反応が出来る。
「どういうつも……」
「部外者は黙ってろ」
言葉を遮る。
でも許さないよ、邪魔はさせない。
だってお前は本当にこの件には何の関係もないもの、いかなる口出しも行動も許さない。
俺がそのまがい物に殺せと言ったのは、まがい物でも兄の姿をしているからだ、その姿に免じて、特別にチャンスをあげようと思っただけ。
お前はおまけなんだから、今はそこに大人しくたってなよ。
立っているだけなら、何も言わないで置いてあげた、だって一応は王族だもの。
この国に生きる一国民として、最低限の礼儀は払うよ。
そして、この間もアイツは動かない、何も言えない。
殺せないのか、やっぱりなと思うし、拍子抜けだとも思う。
優しいから?
善良だから?
そんなわけないだろ。
ただ甘ったれてるだけだ、覚悟が決まってないだけ。
見当違いにも俺を憎んでるくせに、俺を殺す覚悟はない甘ったれ。
だからコレはダメなんだ。
兄なら俺が罪を認めなければいけないよと言ったようし、罪の清算として殺せと言えば君がそう望むのならと俺を殺してた。
優しいけど、寛容だけど相手の意思を尊重して覚悟を重んじる。
そういう人間だ。
兄は母の形見を俺に盗まれた時、窃盗はいけないと言ったんだぞ。
俺を責めるでもなく、感情をぶつけるでもない、ただ静かにそう論してきた。
ソレは同じ状況で同じこと言えるのか。
言えるわけないだろ。
きっと責めただろうね、感情を露わにしたかもしれない、そんなつまらないヤツだろ。
そんなヤツを庇う連中に、追い込まれる連中。
つまらないな。
つまらない奴しかいない、気に入らない。
ほら、母さんなんて飽きたのか欠伸してる、折角断頭台に登る覚悟決めて長い髪まで切ったのに。
絹糸か何かのような白銀の髪をバッサリ切っても相変わらず綺麗な母は、きっと死ぬ時まで綺麗だろうな。
こんな茶番が続いてちゃ母さんの覚悟が安っぽくなるじゃん。
つまらない連中にため息が漏れる。
全くやってられない。
「俺からの最後のチャンスを捨てるつもりらしいお前らの茶番にはもう付き合ってられないし、そろそろ退場させてもらうよ」
俺を裁く資格なんてない人間に、折角俺が特別に裁くチャンスをくれてやったのに。
兄にすらくれてやらなかったんだよ、兄ならやろうと思えば自分でつかみ取れるだろうけど、お前らじゃ自力では無理だから俺がくれてやったのに。
折角のチャンスをものにできないなんて、なんてつまらない人間なのだろう。
草木のようにそこに立っているだけで何の行動も起こさない連中の頭上を飛び越えて、窓を全開にして枠に足をかける。
「それじゃぁ、さよなら」
最後に挨拶、思い出したように動き出した連中に上着を投げつけて背中から窓の外に身を投げ出す。
落下しながら体勢を変え、建物の壁を駆け下りながら勢いを殺し、近くの木の枝目掛けて跳ぶ。
枝を掴むと物理法則に従ってエグイくらいたわむ、体を後ろに振ってから勢いそのまま前に飛びながら手を離す。
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