その愛は毒だから~或る令嬢の日記~

天海月

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4.どうかお変わりなく

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わたくしはあなたに変わってほしいとは、もう口にしないことにいたしましょう。

何度変わってくださいと、時には涙まで流して懇願しても、あなたは何一つ変わってくださらない。

そもそもお変わりになる気など、毛頭ないのでしょう。

あなたはご自分のことだけを愛していらっしゃるのです。

あなたにとって、わたくしが何を考えているのかなど、取るに足らないことでしょう。

ですから、どうせ変わる気もないのでしたら、どうかずっと、そのままでいらしてください。

どうか、愚かなあなたのままで。

もうわたくしのことなど、知ろうとする必要もありません。

よろしいでしょう?

それが、あなたの望みだったのですから。

以前、煩い女など、嫌いだとはっきりとわたくしにおっしゃったのですから。

良かったではありませんか。

わたくしはあなたの希望にしたがっただけなのです。


そして、ただ、わたくしは微笑んで差し上げるだけです。

いつものように。


あなたが、あまりにもわたくしの言葉を聞いてくださらないので、わたくしは遂に、あれほど愛していたはずのあなたのことがどうでも良くなってしまったのです。

あなたの一言一句に、胸を躍らせたり、落ち込んで泣き崩れたりするわたくしは、もうどこにも居なくなってしまったのです。

あなたによって、わたくしは作りかえられたのです。

いつのまにか、愛など無くとも、ただ何の諍いもなく毎日が過ぎれば、それが一番良いのだと思うようになってしまったのです。


もう以前のように戻ることはできないでしょう。

あなたがいつか変わるかもしれないと信じ続けることも、何もかも。

残念ですが、今のわたくしは、もうあなたのことなど、何一つ興味が持てないのです。

ですから、あなたが愚かでも、そうでなくとも、わたくしにはどうでも良いのです。

あなたも今更わたくしの気持ちを尋ねるようなことはおやめください。

きっと、今のあなたが望んでいるような甘やかな返事は、もうわたくしにはできないのですから。

あなたを失望させるのは、いささか面倒でしかありませんから。


ですから、重ねて申し上げましょう。

どうか、いつまでもお好きなことをなさって、わたくしに構うこともなく、お変わりなくお過ごしくださいませ、と。


fin.
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