3 / 20
3. side ロザリア
しおりを挟む
待ち望み続けて、やっと会う事がかなった憧れのアーロンは、かつての面影を失くしていた。
正義感と優しさに満ちていたはずの、彼の空色の瞳は色あせてしまったかのように何も映してはいなかった。
少し前まで、誰かと肌を重ねていた様な気だるい空気を漂わせながら、朝から酒場の隅に陣取って、独りきりで浴びるように酒を口にする彼は、まるで自分の知らない人のように見えた。
けれど、話をしてみれば、刺々しさはあるものの、記憶の中にあるよりも少し大人びて掠れたような彼の声に胸が締め付けられるようだった。
アーロンとはもう二度と会う事も無いだろう。
彼は随分変わってしまっていたし、酷い言葉もかけられ、自分が思っていた様な再会にはならなかった。
けれども、それでも最期に彼に一目でも会えて良かったと思った。
死にたくはなかったけれど、これで思い残すことは無い・・・。
◇
私が七歳になったばかりの頃、王女付きの近衛騎士としてアーロンがやってきた。
彼は十七歳で、まだ騎士になったばかりだった。
彼自身の才能に加え、彼の父も祖父も代々騎士団長を務めてきた家系という期待の高さから、若くして近衛に抜擢されたのだ。
当時のアーロンと同じ年齢になった今思い返してみれば、どこか未熟な初々しさを感じさせるような表情だったが、初めて出会った日、はにかむ様に微笑んだ彼は、あの時幼かった私の目にはひどく大人びて眩しく映った。
彼の晴れ渡る夏の空のような瞳に心を射抜かれた。
その日から、アーロンは私のお気に入りになった。
どこへ行くにも彼を連れて歩いた。
気が付くと、彼を自分だけのものにしたくなっていた。
そして、彼は誓ってくれた。
私を一生守ると。
私は彼を独り占め出来たような気持ちになって嬉しかった。
けれど、その誓いは約束して幾らも経たないうちに破られることになった。
初めて彼に会ってから二年後の冬だった。
騎士団に洞窟の災厄の討伐話が持ち上がったのだ。
この国の中から、そろそろ生贄を出さなくてはならない時期になったが、当時、条件に見合うような魔力の高い年頃の娘を見つける事が出来なかった。
それに連動して、どうせ贄を用意できずに災厄に蹂躙されるのならば、駄目で元々だとしても、討伐を試みるべきだという意見が国中で多く挙がったのだ。
そして、彼の父である総騎士団長を代表として、各騎士団から優秀な者を選抜した討伐部隊が臨時に組織された。
洞窟の災厄は、魔力を込めた攻撃でなくては傷つける事がかなわないという理由から、魔術の才もあったアーロンは近衛騎士にも関わらず、その部隊に加えられる事になった。
出征の前の彼は、必ず手柄をあげて戻りますと言って、自分の父の力になれる事を喜んでいた。
けれど、討伐は失敗に終わってしまった。
討伐に向かった彼以外の全ての人間が命を落とした。
もちろん、その中には彼の父も含まれていた。
その後、彼は近衛騎士として私のところに戻ってきたが、以前のような明るさは無く、一言も口をきかなくなってしまった。
そして、それからしばらくすると突然騎士を辞し、私の前から姿を消してしまったのだった。
正義感と優しさに満ちていたはずの、彼の空色の瞳は色あせてしまったかのように何も映してはいなかった。
少し前まで、誰かと肌を重ねていた様な気だるい空気を漂わせながら、朝から酒場の隅に陣取って、独りきりで浴びるように酒を口にする彼は、まるで自分の知らない人のように見えた。
けれど、話をしてみれば、刺々しさはあるものの、記憶の中にあるよりも少し大人びて掠れたような彼の声に胸が締め付けられるようだった。
アーロンとはもう二度と会う事も無いだろう。
彼は随分変わってしまっていたし、酷い言葉もかけられ、自分が思っていた様な再会にはならなかった。
けれども、それでも最期に彼に一目でも会えて良かったと思った。
死にたくはなかったけれど、これで思い残すことは無い・・・。
◇
私が七歳になったばかりの頃、王女付きの近衛騎士としてアーロンがやってきた。
彼は十七歳で、まだ騎士になったばかりだった。
彼自身の才能に加え、彼の父も祖父も代々騎士団長を務めてきた家系という期待の高さから、若くして近衛に抜擢されたのだ。
当時のアーロンと同じ年齢になった今思い返してみれば、どこか未熟な初々しさを感じさせるような表情だったが、初めて出会った日、はにかむ様に微笑んだ彼は、あの時幼かった私の目にはひどく大人びて眩しく映った。
彼の晴れ渡る夏の空のような瞳に心を射抜かれた。
その日から、アーロンは私のお気に入りになった。
どこへ行くにも彼を連れて歩いた。
気が付くと、彼を自分だけのものにしたくなっていた。
そして、彼は誓ってくれた。
私を一生守ると。
私は彼を独り占め出来たような気持ちになって嬉しかった。
けれど、その誓いは約束して幾らも経たないうちに破られることになった。
初めて彼に会ってから二年後の冬だった。
騎士団に洞窟の災厄の討伐話が持ち上がったのだ。
この国の中から、そろそろ生贄を出さなくてはならない時期になったが、当時、条件に見合うような魔力の高い年頃の娘を見つける事が出来なかった。
それに連動して、どうせ贄を用意できずに災厄に蹂躙されるのならば、駄目で元々だとしても、討伐を試みるべきだという意見が国中で多く挙がったのだ。
そして、彼の父である総騎士団長を代表として、各騎士団から優秀な者を選抜した討伐部隊が臨時に組織された。
洞窟の災厄は、魔力を込めた攻撃でなくては傷つける事がかなわないという理由から、魔術の才もあったアーロンは近衛騎士にも関わらず、その部隊に加えられる事になった。
出征の前の彼は、必ず手柄をあげて戻りますと言って、自分の父の力になれる事を喜んでいた。
けれど、討伐は失敗に終わってしまった。
討伐に向かった彼以外の全ての人間が命を落とした。
もちろん、その中には彼の父も含まれていた。
その後、彼は近衛騎士として私のところに戻ってきたが、以前のような明るさは無く、一言も口をきかなくなってしまった。
そして、それからしばらくすると突然騎士を辞し、私の前から姿を消してしまったのだった。
42
あなたにおすすめの小説
安らかにお眠りください
くびのほきょう
恋愛
父母兄を馬車の事故で亡くし6歳で天涯孤独になった侯爵令嬢と、その婚約者で、母を愛しているために側室を娶らない自分の父に憧れて自分も父王のように誠実に生きたいと思っていた王子の話。
※突然残酷な描写が入ります。
※視点がコロコロ変わり分かりづらい構成です。
※小説家になろう様へも投稿しています。
リアンの白い雪
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
その日の朝、リアンは婚約者のフィンリーと言い合いをした。
いつもの日常の、些細な出来事。
仲直りしていつもの二人に戻れるはずだった。
だがその後、二人の関係は一変してしまう。
辺境の地の砦に立ち魔物の棲む森を見張り、魔物から人を守る兵士リアン。
記憶を失くし一人でいたところをリアンに助けられたフィンリー。
二人の未来は?
※全15話
※本作は私の頭のストレッチ第二弾のため感想欄は開けておりません。
(全話投稿完了後、開ける予定です)
※1/29 完結しました。
感想欄を開けさせていただきます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
いただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
あなたのためなら
天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。
その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。
アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。
しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。
理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。
全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。
踏み台令嬢はへこたれない
三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。
表紙絵:三屋城衣智子
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる