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3. side ロザリア
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待ち望み続けて、やっと会う事がかなった憧れのアーロンは、かつての面影を失くしていた。
正義感と優しさに満ちていたはずの、彼の空色の瞳は色あせてしまったかのように何も映してはいなかった。
少し前まで、誰かと肌を重ねていた様な気だるい空気を漂わせながら、朝から酒場の隅に陣取って、独りきりで浴びるように酒を口にする彼は、まるで自分の知らない人のように見えた。
けれど、話をしてみれば、刺々しさはあるものの、記憶の中にあるよりも少し大人びて掠れたような彼の声に胸が締め付けられるようだった。
アーロンとはもう二度と会う事も無いだろう。
彼は随分変わってしまっていたし、酷い言葉もかけられ、自分が思っていた様な再会にはならなかった。
けれども、それでも最期に彼に一目でも会えて良かったと思った。
死にたくはなかったけれど、これで思い残すことは無い・・・。
◇
私が七歳になったばかりの頃、王女付きの近衛騎士としてアーロンがやってきた。
彼は十七歳で、まだ騎士になったばかりだった。
彼自身の才能に加え、彼の父も祖父も代々騎士団長を務めてきた家系という期待の高さから、若くして近衛に抜擢されたのだ。
当時のアーロンと同じ年齢になった今思い返してみれば、どこか未熟な初々しさを感じさせるような表情だったが、初めて出会った日、はにかむ様に微笑んだ彼は、あの時幼かった私の目にはひどく大人びて眩しく映った。
彼の晴れ渡る夏の空のような瞳に心を射抜かれた。
その日から、アーロンは私のお気に入りになった。
どこへ行くにも彼を連れて歩いた。
気が付くと、彼を自分だけのものにしたくなっていた。
そして、彼は誓ってくれた。
私を一生守ると。
私は彼を独り占め出来たような気持ちになって嬉しかった。
けれど、その誓いは約束して幾らも経たないうちに破られることになった。
初めて彼に会ってから二年後の冬だった。
騎士団に洞窟の災厄の討伐話が持ち上がったのだ。
この国の中から、そろそろ生贄を出さなくてはならない時期になったが、当時、条件に見合うような魔力の高い年頃の娘を見つける事が出来なかった。
それに連動して、どうせ贄を用意できずに災厄に蹂躙されるのならば、駄目で元々だとしても、討伐を試みるべきだという意見が国中で多く挙がったのだ。
そして、彼の父である総騎士団長を代表として、各騎士団から優秀な者を選抜した討伐部隊が臨時に組織された。
洞窟の災厄は、魔力を込めた攻撃でなくては傷つける事がかなわないという理由から、魔術の才もあったアーロンは近衛騎士にも関わらず、その部隊に加えられる事になった。
出征の前の彼は、必ず手柄をあげて戻りますと言って、自分の父の力になれる事を喜んでいた。
けれど、討伐は失敗に終わってしまった。
討伐に向かった彼以外の全ての人間が命を落とした。
もちろん、その中には彼の父も含まれていた。
その後、彼は近衛騎士として私のところに戻ってきたが、以前のような明るさは無く、一言も口をきかなくなってしまった。
そして、それからしばらくすると突然騎士を辞し、私の前から姿を消してしまったのだった。
正義感と優しさに満ちていたはずの、彼の空色の瞳は色あせてしまったかのように何も映してはいなかった。
少し前まで、誰かと肌を重ねていた様な気だるい空気を漂わせながら、朝から酒場の隅に陣取って、独りきりで浴びるように酒を口にする彼は、まるで自分の知らない人のように見えた。
けれど、話をしてみれば、刺々しさはあるものの、記憶の中にあるよりも少し大人びて掠れたような彼の声に胸が締め付けられるようだった。
アーロンとはもう二度と会う事も無いだろう。
彼は随分変わってしまっていたし、酷い言葉もかけられ、自分が思っていた様な再会にはならなかった。
けれども、それでも最期に彼に一目でも会えて良かったと思った。
死にたくはなかったけれど、これで思い残すことは無い・・・。
◇
私が七歳になったばかりの頃、王女付きの近衛騎士としてアーロンがやってきた。
彼は十七歳で、まだ騎士になったばかりだった。
彼自身の才能に加え、彼の父も祖父も代々騎士団長を務めてきた家系という期待の高さから、若くして近衛に抜擢されたのだ。
当時のアーロンと同じ年齢になった今思い返してみれば、どこか未熟な初々しさを感じさせるような表情だったが、初めて出会った日、はにかむ様に微笑んだ彼は、あの時幼かった私の目にはひどく大人びて眩しく映った。
彼の晴れ渡る夏の空のような瞳に心を射抜かれた。
その日から、アーロンは私のお気に入りになった。
どこへ行くにも彼を連れて歩いた。
気が付くと、彼を自分だけのものにしたくなっていた。
そして、彼は誓ってくれた。
私を一生守ると。
私は彼を独り占め出来たような気持ちになって嬉しかった。
けれど、その誓いは約束して幾らも経たないうちに破られることになった。
初めて彼に会ってから二年後の冬だった。
騎士団に洞窟の災厄の討伐話が持ち上がったのだ。
この国の中から、そろそろ生贄を出さなくてはならない時期になったが、当時、条件に見合うような魔力の高い年頃の娘を見つける事が出来なかった。
それに連動して、どうせ贄を用意できずに災厄に蹂躙されるのならば、駄目で元々だとしても、討伐を試みるべきだという意見が国中で多く挙がったのだ。
そして、彼の父である総騎士団長を代表として、各騎士団から優秀な者を選抜した討伐部隊が臨時に組織された。
洞窟の災厄は、魔力を込めた攻撃でなくては傷つける事がかなわないという理由から、魔術の才もあったアーロンは近衛騎士にも関わらず、その部隊に加えられる事になった。
出征の前の彼は、必ず手柄をあげて戻りますと言って、自分の父の力になれる事を喜んでいた。
けれど、討伐は失敗に終わってしまった。
討伐に向かった彼以外の全ての人間が命を落とした。
もちろん、その中には彼の父も含まれていた。
その後、彼は近衛騎士として私のところに戻ってきたが、以前のような明るさは無く、一言も口をきかなくなってしまった。
そして、それからしばらくすると突然騎士を辞し、私の前から姿を消してしまったのだった。
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