あなたが残した世界で

天海月

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4. side アーロン

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その日も、また頭の中でいつまでも止まない自己批判と否定から逃れるために、途切れる間もなく酒を流し込んでいた。

まさか、あの人がやって来るだなんて思いもせずに・・・。

ずいぶん久方ぶりに目にしたロザリア様は、あの頃も可愛らしかったが、美しい人になっていた。

流れるような銀の髪に藤色の瞳を見て、すぐに誰なのか分かった。

もう一度会えるだなんて思っていなかったが、わざわざ俺を探して会いに来てくれたのだと解って、少し嬉しかった。

けれど、心にもない言葉をぶつけてしまった。

せっかく会えたのに、帰れだなんて・・・。

とにかく、今の落ちぶれた自分を彼女に見られたくなかった。

いつも期待の目で俺を見てくれたあの人の前でだけは、完璧な騎士でいたかったから。

彼女はこんな俺を見て、失望してしまったに違いない。





彼女の近衛騎士だった当時、訓練中に不注意で怪我を負った時のことだ。

「ロザリア様、お手が汚れます」

「大丈夫よ、私の騎士が傷つくなんて見ていられないわ」

血の滲んだ包帯が巻かれている上から彼女が手を翳すと、一瞬で痛みが無くなるのを感じた。

後で、包帯を外してみると、傷はきれいに消えていた。

俺は彼女の魔術の才能に驚き、称賛の思いを抱いたが、その資質の高さこそが原因となって今回の不運に繋がったかと思うと、どこかやりきれない気持ちになった。





それにしても、あの人が災厄の生贄に選ばれてしまうだなんて・・・。

彼女の言葉を聞いて、どこかもう会えないくらいに遠い国へ嫁ぐから、別れを告げに来たに違いないのだと軽く考えていた自分を殴り飛ばしてやりたい。

あの約束を忘れたわけでは無かった。

けれど、わざわざ罪人にも等しいような自分があの人を守らなくても、あの人の周りにいる誰かが守ればその方が良いだろうと思っていた・・・。

こんな人間は彼女の傍にいない方が良いのだと。

だから、あの人の下を去ったのに。

あの人はどんな胸中で、俺に会いに来てくれたのだろう・・・。

どうして、俺はもっと違う言葉を掛けられなかったのだろうか。



また、俺のせいで、大切な人が死ぬ・・・。

もう、今の俺は騎士でも何でもないただの破落戸同然のような男だが、今こそあのたった一つの誓いを果たさなくては・・・。

毎日死ぬべきだと思いながらも、無駄にここまで長々と生き続けてしまった。

だが、今思えば、俺の命はこの時の為に残されていたんだろう。

もう騎士ではなかったとしても、俺の生涯の主と決めた彼女を、むざむざ死なせたりはしない。

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