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エレーヌの婚約者、ロベルトが男爵家にやってきた。
彼を見つけたカノンはまっさきに駆け寄った。
「ロベルト様!お会いしたかったですわ。お義姉様との婚約を解消して、私のお相手になっていただけるというのは本当なのですか?」
「ああ」
その美しい顔に、満面の笑みを湛えながら問いかけるカノンを見て、ロベルトは顔を赤らめつつ短く答えた。
「お父上との話ももうほとんど済んでいる。今度の舞踏会では僕が君のエスコートをすることになるはずだ」
「まぁ、嬉しい!」
「僕もエレーヌではなくて、君と婚約することができて嬉しいと思っているよ。だが、少し急な事ではあったし、エレーヌには気の毒な事をしてしまったとは思っている。償いという意味でも、せめて新しいドレス位は贈った方が良かっただろうか?」
ロベルトは少しだけ顔を曇らせて言った。
「いいえ、ロベルト様。お義姉様には、私から相応しいものを既に贈っておきましたわ。ですから、余計なご心配は無用です」
カノンはにこやかに伝えた。
「君は美しいうえに、優しい人だね。それに比べて、エレーヌはこんな時でさえ、僕の顔を見に来る事すらしない・・・本当に冷たい女だ」
それを聞いたカノンは僅かに眉間に皺を寄せたが、また直ぐに微笑んで言った。
「そんな事を仰らないで下さいませ、ロベルト様。お義姉様は私にとって大切な方なのですから・・・」
◇
ガチャリとドアが開く音がしたのと同時に、エレーヌが自室から出てきた。
「どうして、鍵も閉まっていないのに扉が開かなかったのかしら?
それにしても、今日はロベルト様がこちらに来られると聞いていたから、せめてご挨拶くらいはしたかったのだけれど・・・きっともうお帰りになってしまったわね」
窓から射し込んでくる西日に目を細めたエレーヌは呟いた。
仕事とはいえ、常にエレーヌの傍から離れる事が無いメリダ。
カノンがこの屋敷に迎え入れられてからというもの、ほとんどの使用人は、エレーヌを居ないものの様に扱うようになっていた。
そんな中で、メリダだけはエレーヌに不自由が無いようにと、自分の時間を削ってまで尽くそうとしてくれる。
彼女の気持ちはありがたかったが、ずっとそんな調子では息が詰まってしまうだろうとエレーヌは思った。
そんなこともあり、少しでも息抜きにでもなればと適当な名目をつけて、朝から外出させていたメリダが帰ってきたのは、日が暮れてからだった。
彼を見つけたカノンはまっさきに駆け寄った。
「ロベルト様!お会いしたかったですわ。お義姉様との婚約を解消して、私のお相手になっていただけるというのは本当なのですか?」
「ああ」
その美しい顔に、満面の笑みを湛えながら問いかけるカノンを見て、ロベルトは顔を赤らめつつ短く答えた。
「お父上との話ももうほとんど済んでいる。今度の舞踏会では僕が君のエスコートをすることになるはずだ」
「まぁ、嬉しい!」
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ロベルトは少しだけ顔を曇らせて言った。
「いいえ、ロベルト様。お義姉様には、私から相応しいものを既に贈っておきましたわ。ですから、余計なご心配は無用です」
カノンはにこやかに伝えた。
「君は美しいうえに、優しい人だね。それに比べて、エレーヌはこんな時でさえ、僕の顔を見に来る事すらしない・・・本当に冷たい女だ」
それを聞いたカノンは僅かに眉間に皺を寄せたが、また直ぐに微笑んで言った。
「そんな事を仰らないで下さいませ、ロベルト様。お義姉様は私にとって大切な方なのですから・・・」
◇
ガチャリとドアが開く音がしたのと同時に、エレーヌが自室から出てきた。
「どうして、鍵も閉まっていないのに扉が開かなかったのかしら?
それにしても、今日はロベルト様がこちらに来られると聞いていたから、せめてご挨拶くらいはしたかったのだけれど・・・きっともうお帰りになってしまったわね」
窓から射し込んでくる西日に目を細めたエレーヌは呟いた。
仕事とはいえ、常にエレーヌの傍から離れる事が無いメリダ。
カノンがこの屋敷に迎え入れられてからというもの、ほとんどの使用人は、エレーヌを居ないものの様に扱うようになっていた。
そんな中で、メリダだけはエレーヌに不自由が無いようにと、自分の時間を削ってまで尽くそうとしてくれる。
彼女の気持ちはありがたかったが、ずっとそんな調子では息が詰まってしまうだろうとエレーヌは思った。
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