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屋敷に戻ったカノンは一人思案していた。
バートンとの話し合いで、このまま引き延ばせば延ばすほど二人にとって良くないのだから、すぐにでも彼女に全てを伝えるべきだと言われ、自身でも納得したものの、どこからどう話を切り出せば良いものかわからなかった。
せめて、出来ることだけでもと思い、周囲の者に掛けていた魅了だけは解いてみたが、それ以上のことは何も出来ずにいた。
記憶がない彼女に、いきなり前世がどうのと話しても、気が違っているのではないかと疑われでもしたら・・・と思うととても冷静ではいられなかった。
ならば、先に正体を明かすにしても、今まで妹だと思っていた者が、得体も知れぬ男だとわかったら・・・それでも、彼女は自分を傍に置いてくれるだろうかという恐れ。
だが、きっと彼女はそんな些末な事は気にしないでくれる筈だという期待。
それ以上に、つらい記憶を思い出させて、彼女を苦しめたくないという思い。
何より、昔から腕っ節ばかりで、気の利いたことを思いつくことが出来ず、大切な存在を守りきれなかった自分自身がもどかしかった。
様々な考えが、頭の中に浮かんでは消えてを繰り返し、カノンは上手く考えをまとめることが出来なかった。
「これだけ待ち続けて、ようやくまた出会えたというのに・・・こんなに近くにいるのに・・・なんて、あなたは遠いのだろう」
◇
王宮でのある日の午後。
王に呼び出され、話を聞いた宮廷魔術師バートンは、平静を装いながらも内心穏やかではいられなかった。
「舞踏会の夜にお主と話しておったブラン家の令嬢だ。名は何と言ったか・・・」
「エレーヌ嬢・・・でしょうか?」
「実に興味深い令嬢だ。魔術師としてお主も気になったのではないか、あの夜、身に着けていたのは魔蚕のドレスであろう?」
「はい・・・恐らく」
(目敏い方だ・・・)
「私は長らく、いつかあれを見てみたいと思っていたのだ。だが、ほとんど伝説に近いもので、本当に存在するのかどうかさえ話半分という代物。まさか、現物を目にすることができるとは思ってもみなかった!
こんなことが稀にある故に、この耐えがたい程につまらない王座にも少しは価値があると思えるものだ。
お主が令嬢と話しているのを横目に、気になって仕方がなかったのだが、あの日は下らないが蔑ろにはできぬ付き合いの為に席を外すことがかなわなくてな・・・」
この時代、魔族の殆どは別の大陸に移動し、魔力を持った人間は一部の貴族や王族に限られていた。
この国の王は、その僅かなうちの一人だった。
そして、彼は魔術史の研究に精通する、無類の魔道具の収集家でもあった。
その実、立場上、仕方なく王位を継承したが、本人はその地位に対して何の執着も持たぬ自由人な性質の人間だった。
「エレーヌ嬢も魔道具に興味があるのだろうか?今度、あらためてかの令嬢をここへ呼び、お主も交えて魔道具の話をしようではないか。出来れば譲ってもらえれば最高だが・・・」
「はぁ・・・」
(ずいぶん面倒な事になってしまったようですよ・・・カノン様)
バートンとの話し合いで、このまま引き延ばせば延ばすほど二人にとって良くないのだから、すぐにでも彼女に全てを伝えるべきだと言われ、自身でも納得したものの、どこからどう話を切り出せば良いものかわからなかった。
せめて、出来ることだけでもと思い、周囲の者に掛けていた魅了だけは解いてみたが、それ以上のことは何も出来ずにいた。
記憶がない彼女に、いきなり前世がどうのと話しても、気が違っているのではないかと疑われでもしたら・・・と思うととても冷静ではいられなかった。
ならば、先に正体を明かすにしても、今まで妹だと思っていた者が、得体も知れぬ男だとわかったら・・・それでも、彼女は自分を傍に置いてくれるだろうかという恐れ。
だが、きっと彼女はそんな些末な事は気にしないでくれる筈だという期待。
それ以上に、つらい記憶を思い出させて、彼女を苦しめたくないという思い。
何より、昔から腕っ節ばかりで、気の利いたことを思いつくことが出来ず、大切な存在を守りきれなかった自分自身がもどかしかった。
様々な考えが、頭の中に浮かんでは消えてを繰り返し、カノンは上手く考えをまとめることが出来なかった。
「これだけ待ち続けて、ようやくまた出会えたというのに・・・こんなに近くにいるのに・・・なんて、あなたは遠いのだろう」
◇
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王に呼び出され、話を聞いた宮廷魔術師バートンは、平静を装いながらも内心穏やかではいられなかった。
「舞踏会の夜にお主と話しておったブラン家の令嬢だ。名は何と言ったか・・・」
「エレーヌ嬢・・・でしょうか?」
「実に興味深い令嬢だ。魔術師としてお主も気になったのではないか、あの夜、身に着けていたのは魔蚕のドレスであろう?」
「はい・・・恐らく」
(目敏い方だ・・・)
「私は長らく、いつかあれを見てみたいと思っていたのだ。だが、ほとんど伝説に近いもので、本当に存在するのかどうかさえ話半分という代物。まさか、現物を目にすることができるとは思ってもみなかった!
こんなことが稀にある故に、この耐えがたい程につまらない王座にも少しは価値があると思えるものだ。
お主が令嬢と話しているのを横目に、気になって仕方がなかったのだが、あの日は下らないが蔑ろにはできぬ付き合いの為に席を外すことがかなわなくてな・・・」
この時代、魔族の殆どは別の大陸に移動し、魔力を持った人間は一部の貴族や王族に限られていた。
この国の王は、その僅かなうちの一人だった。
そして、彼は魔術史の研究に精通する、無類の魔道具の収集家でもあった。
その実、立場上、仕方なく王位を継承したが、本人はその地位に対して何の執着も持たぬ自由人な性質の人間だった。
「エレーヌ嬢も魔道具に興味があるのだろうか?今度、あらためてかの令嬢をここへ呼び、お主も交えて魔道具の話をしようではないか。出来れば譲ってもらえれば最高だが・・・」
「はぁ・・・」
(ずいぶん面倒な事になってしまったようですよ・・・カノン様)
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