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エレーヌに余計な気を張らせず、出来るだけ彼女の本音が聞きたいと考えた国王は、正式な謁見の形式を敢えて避け、奥まった部屋に茶会のようなテーブルをセッティングさせ、彼女をそこへ座らせた。
「待ち遠しかったぞ、エレーヌ。息災であったか?」
「はい」
どこか諦めたような表情のエレーヌは、微笑みつつもどこか力なく返事をした。
「先日の返事を聞かせてくれるだろうか?」
「つつしんで、お話をお受けしようと思いま・・・」
エレーヌが俯き加減で、そう口にした瞬間、扉が大きな音を立てて開き、銀髪の小柄な令嬢が勢い良く入って来て、言い放った。
「異議ありっ!!」
「そなたは誰だ?!近衛はどうしている・・・!」
突然の出来事に、国王は思わず立ち上がり、人を呼ぶが、どこからも返事が返ってくる事は無かった。
外に待機していたはずの近衛騎士達は皆、魔術を掛けられ眠ってしまっていた。
ここにいるはずの無い義妹を見たエレーヌは驚いた。
「カノン・・・!あなたがどうしてここに?!」
「カノン?というと、そなたは・・・先日エレーヌが口にしていた義妹か?」
状況が呑み込めない国王とエレーヌ。
カノンは、きょとんとしているエレーヌの瞳を優しく見つめて言う。
「もう思い出されたのでしょう?・・・随分お待たせしてしまいましたが、あなたを迎えに来たのです、エレーヌ」
そう春に咲く花の様にふわりと微笑むと、次の瞬間、娘の姿だったカノンは真の姿を現した。
それはエレーヌの記憶の中にある銀色の髪をした美しい青年の姿そのままだった。
エレーヌは、ある日突然屋敷にやってきたはずの義妹を、何故か以前から知っていたように何度も思ったその違和感の正体を、驚きとともにようやく悟った。
そして、メリダが『彼はいつも近くで見守っている』と告げた意味を理解したエレーヌは、胸の奥が熱くなるのを感じた。
本当にずっと傍に居てくれたのね・・・嬉しい!
「・・・カノンが西の王子殿下だったなんて!だから、あの舞踏会の夜、私に触れたあなたの手を懐かしいと感じたのね」
カノンは自然な動作でエレーヌの手を取り、口づけを落とした。
エレーヌは頬を染めた。
喜びは感じるものの、まだどこか混乱しているエレーヌをよそに、満面の笑みを浮かべるカノン。
「ずっと、この時を待ちわびていたのです。例え相手が一国の王でも、神でも、もうあなたを誰にも渡したりなどしません。この者の事は捨て置いて、私と二人で逃げましょう?」
◇
わざとらしく息を切らせたバートンは、問題の部屋に入室するなり、ちらりとカノンに目配せした後、一呼吸置くと棒読みで叫んだ。
「大変だー!化物だー!化物が出たー!令嬢が攫われてしまうぞーー!!」
「・・・」
唖然としている国王に、バートンは言う。
「さぁ、危険ですから!あれは恐ろしい化物に違いありませんから!すぐに陛下もここから避難致しましょう!!」
「いや、待て・・・待ってくれ、西の王子でカノンだと?」
「何か気がかりな事でも?」
(何か嫌な予感が・・・)
バートンは国王が、これからどんな面倒なことを言い出すのだろうかと想像すると、眩暈がしそうだった。
「俄には信じがたいが、銀髪に宝石の様な赤い瞳・・・その名、そして、離れていても伝わってくるこの凄まじいまでの魔力量・・・まさかあれが本当に、あの『西の国の王子』だというのか?!」
興奮した様子で、誰に聞かせるでもなく独り言のようにぶつぶつと呟き始める国王。
(そういえば、この方が常識外に熱烈な魔術史研究家だというのを忘れていた・・・!)
このことをうっかり計算に入れ忘れていたバートンはどこか遠い目をした。
どうやら、西の王子というキーワードは、国王の研究家としての探求心に火を付けてしまったらしい。
「待ち遠しかったぞ、エレーヌ。息災であったか?」
「はい」
どこか諦めたような表情のエレーヌは、微笑みつつもどこか力なく返事をした。
「先日の返事を聞かせてくれるだろうか?」
「つつしんで、お話をお受けしようと思いま・・・」
エレーヌが俯き加減で、そう口にした瞬間、扉が大きな音を立てて開き、銀髪の小柄な令嬢が勢い良く入って来て、言い放った。
「異議ありっ!!」
「そなたは誰だ?!近衛はどうしている・・・!」
突然の出来事に、国王は思わず立ち上がり、人を呼ぶが、どこからも返事が返ってくる事は無かった。
外に待機していたはずの近衛騎士達は皆、魔術を掛けられ眠ってしまっていた。
ここにいるはずの無い義妹を見たエレーヌは驚いた。
「カノン・・・!あなたがどうしてここに?!」
「カノン?というと、そなたは・・・先日エレーヌが口にしていた義妹か?」
状況が呑み込めない国王とエレーヌ。
カノンは、きょとんとしているエレーヌの瞳を優しく見つめて言う。
「もう思い出されたのでしょう?・・・随分お待たせしてしまいましたが、あなたを迎えに来たのです、エレーヌ」
そう春に咲く花の様にふわりと微笑むと、次の瞬間、娘の姿だったカノンは真の姿を現した。
それはエレーヌの記憶の中にある銀色の髪をした美しい青年の姿そのままだった。
エレーヌは、ある日突然屋敷にやってきたはずの義妹を、何故か以前から知っていたように何度も思ったその違和感の正体を、驚きとともにようやく悟った。
そして、メリダが『彼はいつも近くで見守っている』と告げた意味を理解したエレーヌは、胸の奥が熱くなるのを感じた。
本当にずっと傍に居てくれたのね・・・嬉しい!
「・・・カノンが西の王子殿下だったなんて!だから、あの舞踏会の夜、私に触れたあなたの手を懐かしいと感じたのね」
カノンは自然な動作でエレーヌの手を取り、口づけを落とした。
エレーヌは頬を染めた。
喜びは感じるものの、まだどこか混乱しているエレーヌをよそに、満面の笑みを浮かべるカノン。
「ずっと、この時を待ちわびていたのです。例え相手が一国の王でも、神でも、もうあなたを誰にも渡したりなどしません。この者の事は捨て置いて、私と二人で逃げましょう?」
◇
わざとらしく息を切らせたバートンは、問題の部屋に入室するなり、ちらりとカノンに目配せした後、一呼吸置くと棒読みで叫んだ。
「大変だー!化物だー!化物が出たー!令嬢が攫われてしまうぞーー!!」
「・・・」
唖然としている国王に、バートンは言う。
「さぁ、危険ですから!あれは恐ろしい化物に違いありませんから!すぐに陛下もここから避難致しましょう!!」
「いや、待て・・・待ってくれ、西の王子でカノンだと?」
「何か気がかりな事でも?」
(何か嫌な予感が・・・)
バートンは国王が、これからどんな面倒なことを言い出すのだろうかと想像すると、眩暈がしそうだった。
「俄には信じがたいが、銀髪に宝石の様な赤い瞳・・・その名、そして、離れていても伝わってくるこの凄まじいまでの魔力量・・・まさかあれが本当に、あの『西の国の王子』だというのか?!」
興奮した様子で、誰に聞かせるでもなく独り言のようにぶつぶつと呟き始める国王。
(そういえば、この方が常識外に熱烈な魔術史研究家だというのを忘れていた・・・!)
このことをうっかり計算に入れ忘れていたバートンはどこか遠い目をした。
どうやら、西の王子というキーワードは、国王の研究家としての探求心に火を付けてしまったらしい。
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