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焦げたフレンチトースト
しおりを挟む「っうう、う」
「大丈夫だよ、安心して、もうしないから」
雄を抜き出したカイは、下半身に力が入らないユイトが崩れ落ちる身体を支えた。許容範囲を超えた快楽で涙を流しているユイトを、食い入るように見つめる。
目は充血して、唇と肩が小刻みに震えている。首に回された手に力が入っている。自分の愛する存在を強く抱きしめて、優しく背中をさする。
「愛してる、ユイト、愛してる、ユイトを全て食べてしまいたい」
「う、うん、僕も、カイ、愛してる」
その後は淫らな吐息を漏らすユイトが、息を整え落ち着くまで、浴室で抱き合ったままカイは待った。ユイトのお強請りする一言で、カイは理性を保つ事が出来なかった。濡れたしっとりした髪を撫でて、安心させようと濡れた頬や首筋に何度も口づけを降らした。
「食欲ある?」
「・・・・・・少しなら」
「ユイトがせっかく作ってくれたんだ、食べないと罰が当たる、少し待っていてね」
浴室を出たら甲斐甲斐しく、ユイトに新しい衣服を着せる。足下がおぼつかないユイトをダイニングテーブルの椅子に座らせて、カイは台所に戻り冷めたフレンチトーストをレンジで温めた。
皿に盛った黄金色のフレンチトーストを、テーブルに置く。飲み物も用意すると、ユイトの頭がふらふらと揺れている様子に視線が惹かれる。
「眠い?」
自然と少し濡れた髪を撫でる。ドライヤーで髪を乾かさなければ。頻度が増した性行為は、ユイトの身体に負担がかかる。激しく抱いた翌日は体調を崩すことが多い。まだ肌寒い時期だ、風邪を引かせないよう、カイはもっと恋人の全てに気を配らないといけない。
「ふふ、くすぐったいよ」
肩を竦めるユイトは、耳を掠めるカイの指の感触に笑みを漏らす。
「大丈夫だよ・・・・・・でも大学へは昼過ぎからで良いかな、少し横になりたい」
「そうだね、ゆっくり休んで」
「有り難う、さあ、食べよう」
穏やかな空気を醸し出すユイトに、見蕩れていた。先を託す言葉に我に返ったカイは、急いでテーブルの向かいに座る。ナイフとフォークを持ち料理に視線を移すが、恋人の様子が気になる。
*
「すごく美味しいよ、ユイトの作る料理はどれも好きだ、俺にとってご馳走だよ」
「焦げてるのに? いいんだよ、そんな気を遣わなくて」
卵液が焦げた原因は、美味しいと頬を蕩かせて喜ぶカイ本人の所為であった。ナイフを入れて小さく切った欠片を、口に含むと微かに苦みが舌に伝わる。それでも不味くはない味に、ユイトはほっと胸をなで下ろす。正直、性行為の直ぐ後に胃の中へは極力物を入れたくないが。
テーブルを挟んで、「美味しい」満面の笑みで咀嚼するカイのその姿に、ユイトは笑みを深くした。無理矢理飲み込んだ胃の中に吸収された栄養のある物質が、軽く感じる。
「俺の妻になる人はユイトしかいない」
「えっ」
いきなり何てことを言い出すかと思えば。将来についてカイはいつも目を輝かせては、夢物語を語る。ユイトは鳩が豆鉄砲を食ったように驚く。彼の本心だと知っていてもだ。
「こうやってユイトと朝食を共にする時間を、ずっと夢見ていた」
放心するユイトを愛おしげに見つめるカイは、手の付けられていない皿を奪うと全て平らげてしまった。優しい人だ、幾ら仮面が暴かれても、ユイトにとってカイは昔のまま瞳に映る。
綺麗に皿が空になる様子を、どこかユイトは瞳を震わせて見ていた。ちゃんと最後まで食べようと考えていた、焦げたフレンチトースト。蜂蜜かメイプルシロップのどれかを掛けるか、悩んでいた自分はとても幸せなのだなと、「ごちそうさま」満足そうなカイに微笑み返した。
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