農民の少年は混沌竜と契約しました

アルセクト

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第四章 分岐点

プルネリア王国の成り立ち

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 上級貴族の人がいた食堂での食事を終えて、僕とソフィは部屋でのんびりと寛ぐ。
 まだ昼過ぎだけど、昨日は宿で一泊したとはいえ慣れない旅で疲れが少し溜まっているから王都を巡るのは夕方に少しだけ見て、本格的に巡るのは明日にすることにした。

「ロイよ、少し良いか?」
「ん、なに」
 ベッドに横になってただボーッとしていたら、抱きかかえていたコンが言う。
「先程この国の道が真っ直ぐである事に理由があると言ったであろう、今聞いても構わぬか?」
「いいよ」
 僕は起き上がってどこから話そうか考えて、ゆっくりコンの背を撫でながら話す。

「えっとね、まずプルネリア王国になる前のことだけど、最初は今いるこの王都が人が住んでいる一番南端の土地だったんだって」
 今の南端は僕の生まれ育ったクルク村だけど、これ以上南には最南の大森林があって奥地に居るらしい英雄ですら軽く屠る『主』が居るからこれ以上南には住めないと思う。
「でも人が住んで居てもどこの国の人って訳じゃなくて、何だったかな……集落だったかな、今の開拓者の村と同じ感じでね、違うのは今は国の指示の元で広がってるけど昔は元居た国から払えないくらい重い税を課せられたり、何かの理由で迫害されたり家族を貴族様へ捧げるよう命じられたりした時に命懸けで逃げて来た人達の集落でね、それが幾つも助け合いながら生きているって感じだったらしいよ」
 思い出しながらだから微妙にわかりにくかったとは思うけど、コンが促すように頷いたので続けて話す。
「それが確か大体5、6百年くらい前の話でね、プルネリア王国が出来たのが約200年前で、理由は欲望の迷宮がルルトの村に出来たから何だけどこれは話したっけ」
「いや、この国に迷宮が出来たとしか聞いておらぬが」
「そうだっけ?まあそれまでは近くにある国もここに集落が出来てる事には気付いてたんだけど、攻めて来る度に近くの集落も総出で追い出すために徹底的に戦ったから被害と利益が釣り合わないからって放置されてたらしいんだけど、迷宮はたくさんのお金になるから大軍を連れて攻めて来るのは時間の問題になったんだよね」
 そう、それこそ今ルルトの村はこの王都よりも発展した都市になっているくらいで、村ではなくルルトの街と呼ばれるくらいなんだけど、大人達が村と呼ぶのでつられて村と言ってしまうけど。
「だから集落達の代表が集まってどうしようかーって話し合って、その結果ここに自分達の国を建国して攻められないようにすればいいんじゃないかってなったらしいよ」
「ふむ?いやそれはおかしいだろう、力もない集落の集まりがどうして国を名乗れば攻められなくなるのだ?」
 ああ、それコールも学校で聞いた時は「力が無いんだから無視して攻めればいいじゃん」って言ってたっけ。
「確かにそうなんだけど、えっと、今世界中に支部のあるどの国にも所属しない2大組織の事は知ってるかな?」
「それくらいは知っておる、冒険者ギルドと魔法研究協会であろう」
 まあコンが知らないのは二百年前以降のことらしいから知らないはずもないよね。
「一応獣国に本部のある『商業協会』も中立の大きな組織だけど、戦闘を生業としない商人達の集団だから、広がりが協会とギルドには一歩劣るから2大組織と言えばその2つになるね」
 中立組織の有名所はその3つで、他にも『世界医療機関』とかもあるけどその辺は今回関係無いから無視する。
「で、ちょっとうろ覚えだけど、確かルルトの村のダンジョンはこの国が管理して、その利益を周辺国と中立2大組織に管理費用分だけ除いた分は全部差し上げますから攻めて来ないで下さいって言ったらしいよ」
「ロイよ、それだけではあまり意味が無いように思えるのだが」
 コンの言う通りで無視して攻めて独占した方が利益が大きいのは確か何だけどね。
「確かそうなんだけど、利益配分の比率が協会とギルドが大きくてね、もしも攻めてきたら私達の国を守るための戦力を貸してくださいってお願いして、それで隣国も得る利益より損の方が大きくなりそうだからそれを呑むしか無くなって、無事に集落は国として成り立って今も続いているんだよ」
「ふむ……」
 まだ納得出来ていないようなコンに、もう一つのベッドに腰掛けていたソフィが言う。

「今ロイ君が言ったのは間違って無いんだけど、でもあんまり大きな声では言えないような噂話もあるよ」

「そうなのか?」
「うん。例えば美人な女の人を送ったとか、隣国の有力貴族を煽って反乱を起こそうとしてたとかね」
 それを聞いて僕もいくつか思い出した。
「確か軍隊の居る所に魔物をたくさんけしかけたとか、毒を撒いて作物をダメにしたとかいうような嘘っぽい話も多いけどね」
 先生は確か噂話にも真実が隠れてるとか言ってた気がするけど、でも建国の裏話にはまさかと思うようなものの方が多い。
 そこまで話して、そういえば始めに聞かれていたことにまだ答えてなかったことを思い出す。
「あ、それで道が真っ直ぐな理由なんだけど、あれはもしも利益を全部差し出すっていう約束を破ったらこの国を攻め落としてくれて構わないっていう意思表示のためだって話だよ」

「ふむ、大まかには把握した」
「それならよかった」
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感想 84

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みんなの感想(84件)

ラティオス
2018.08.14 ラティオス

更新嬉しいです!
楽しみに待ってました!

2018.11.25 アルセクト

ご感想ありがとうございます!
出来る限り頑張ります!

解除
らる鳥
2017.10.30 らる鳥

凄く優しいお話ですね。
ストレスが全く無くするすると読めました。
旅に出てどんな人に出会うのか、楽しみにしてます。

あとユン可愛いです。

2017.10.31 アルセクト

ご感想ありがとうございます!
基本ノンビリほのぼの、時に少し酷な事があっても最後は笑顔で終わる物語が目標です!
人との出会いは一期一会、考えても執筆直前で180度性格が変わる事もありますので私も楽しみです
ユンは狼とより人懐っこい犬ですね、書いてて楽しいです

解除
うぉーたーめろん

「子供に必要な財と力が有れば外へ行く機会を与えよう」とは開明的な考えが広まっているんですね、今の日本でさえ地方では長男は跡取りといった思考が根強いものですが。
どちらを選ぶにしても本人の意思が尊重されるのは素晴らしい事だと思います。

2017.09.11 アルセクト

ご感想ありがとうございます!
実は跡取りを旅に出す、というのはあまり推奨されている世界ではありません
もう少し先で理由を書く予定ですが、クルク村でこのような仕組みがある理由は一章にうっすらとヒントらしきものがありますのでもしよければ探してみて下さい

解除

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