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第二章 混沌竜の契約者
あの日の裏話
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「まあそんなこんなでユンも納得してくれて、南から帰るとまずいから西から村に帰ったんだ」
ひとしきり動物たちとのスキンシップを終えた僕は再びユンを撫でていた。
「ふむ……色々と突っ込みたいことはあるが、ロイは今の話の中で死んでもおかしくない場面が幾つかあったぞ」
「え、何個かあった?」
確かに噛まれた時はやばかったけど……
「はぁ……これは人の世ではあまり広まってないようだが、ロイは『魔力過剰生成』と言う危険な行為を行っていたようなのでな」
「オーバー……何?」
初めて聞く言葉に僕は首を傾げる。
そうするといつものようにコンは教えてくれる。
「魔力過剰生成とは魔力を自らの限界以上に生成することでな、いわゆる火事場の馬鹿力の魔力版だな」
「それのどこが危険なの?」
「それは火事場の馬鹿力は体に負担がかからないように普段は力を制限しているのを解除することで起きているのだ。その場合体がどうなるかわかるか?」
「すっごく負担がかかる?」
「そうだ。これの魔力版が魔力過剰生成なのだが、こちらの方がより危険度が高い。そもそも魔力は世界の理を超越する力の源なのだ、これを無理に生成するのだから自らの何かを犠牲にしてしまうのだ」
「世界、理、超越……?」
「そこは今重要ではない。犠牲となるのはその時によって違うが、例えば四肢を失う者、五感が概念から消え去ってしまうもの、記憶が消え去ってしまう者などかなりのリスクが伴う」
「えっと……下手したら命も落としてたってこと?」
「直接死ぬことはまず滅多な事ではないが、足を失えば歩けなくなって野たれ死んでしまう可能性はあるだろう」
「えっと、何でそうなってたってわかるの?」
「ロイの今の魔力量とその時の魔力量が同じだと仮定すると、薬草でヒール出来る回数は最大で3回。今の話だと10回は余裕で超えてそうな上、また走る時に早かったのは無意識に身体強化魔法を使っていたからだろう。その距離をそのスピードなら治癒出来る回数は一回が限度になる」
「ええと……つまり、僕の魔力量が少ないからってことでいいの?」
「うむ、その通りだ」
つまり、僕はユンを助ける為に死ぬ可能性があったと……
「まあそれは結果的に無事だったからよいと思うのだが……それにしてもロイよ、我が言えた事でも無いだろうが、本当に不思議な縁を持っているのだな」
「そうかな?」
確かに混沌竜のコンとの縁は不思議だと思うけど。
「まさか『狼王』と仲良しとは」
「……え?」
ろうおうって何?
「む、気付いておらんかったのか?我はてっきりロイが狼王、文字通り狼の王と知り合いだからビックリすると言ったのだと思ったのだが?」
その信じられない言葉にユンの背を撫でていた手が止まる。
「え、ユンってその……狼王っていう凄いのだったの……?」
「ワフ?」
恐る恐る聞いてみたのだが、ユンは首を傾げる。
もしかして、ユンも知らないのかな?
「ふむ……そもそもユンは王の証である『王令』を使ったのではないか?」
「おうれい?」
「ワフ?」
僕もユンも何のことか全くわからない。
「なぜユンもわからぬのだ……王令とは王の命令のこと。王の命令は絶対、例えどんな内容だろうと強制的に従わせることが出来る特殊魔法のことだ。ロイに噛み付いた狼が骨まで行かなかったのは王令で止められたからだろう」
「そうなの、ユン?」
「ワン!」
と、今度はそうだと言わんばかりに胸を張る。
「そうだったんだ。助けてくれてありがとう、ユン」
「ワフン!」
それにしても、ユンが狼王?
「王みたいな威厳は感じられないけど……」
「ワフ?」
ひとしきり動物たちとのスキンシップを終えた僕は再びユンを撫でていた。
「ふむ……色々と突っ込みたいことはあるが、ロイは今の話の中で死んでもおかしくない場面が幾つかあったぞ」
「え、何個かあった?」
確かに噛まれた時はやばかったけど……
「はぁ……これは人の世ではあまり広まってないようだが、ロイは『魔力過剰生成』と言う危険な行為を行っていたようなのでな」
「オーバー……何?」
初めて聞く言葉に僕は首を傾げる。
そうするといつものようにコンは教えてくれる。
「魔力過剰生成とは魔力を自らの限界以上に生成することでな、いわゆる火事場の馬鹿力の魔力版だな」
「それのどこが危険なの?」
「それは火事場の馬鹿力は体に負担がかからないように普段は力を制限しているのを解除することで起きているのだ。その場合体がどうなるかわかるか?」
「すっごく負担がかかる?」
「そうだ。これの魔力版が魔力過剰生成なのだが、こちらの方がより危険度が高い。そもそも魔力は世界の理を超越する力の源なのだ、これを無理に生成するのだから自らの何かを犠牲にしてしまうのだ」
「世界、理、超越……?」
「そこは今重要ではない。犠牲となるのはその時によって違うが、例えば四肢を失う者、五感が概念から消え去ってしまうもの、記憶が消え去ってしまう者などかなりのリスクが伴う」
「えっと……下手したら命も落としてたってこと?」
「直接死ぬことはまず滅多な事ではないが、足を失えば歩けなくなって野たれ死んでしまう可能性はあるだろう」
「えっと、何でそうなってたってわかるの?」
「ロイの今の魔力量とその時の魔力量が同じだと仮定すると、薬草でヒール出来る回数は最大で3回。今の話だと10回は余裕で超えてそうな上、また走る時に早かったのは無意識に身体強化魔法を使っていたからだろう。その距離をそのスピードなら治癒出来る回数は一回が限度になる」
「ええと……つまり、僕の魔力量が少ないからってことでいいの?」
「うむ、その通りだ」
つまり、僕はユンを助ける為に死ぬ可能性があったと……
「まあそれは結果的に無事だったからよいと思うのだが……それにしてもロイよ、我が言えた事でも無いだろうが、本当に不思議な縁を持っているのだな」
「そうかな?」
確かに混沌竜のコンとの縁は不思議だと思うけど。
「まさか『狼王』と仲良しとは」
「……え?」
ろうおうって何?
「む、気付いておらんかったのか?我はてっきりロイが狼王、文字通り狼の王と知り合いだからビックリすると言ったのだと思ったのだが?」
その信じられない言葉にユンの背を撫でていた手が止まる。
「え、ユンってその……狼王っていう凄いのだったの……?」
「ワフ?」
恐る恐る聞いてみたのだが、ユンは首を傾げる。
もしかして、ユンも知らないのかな?
「ふむ……そもそもユンは王の証である『王令』を使ったのではないか?」
「おうれい?」
「ワフ?」
僕もユンも何のことか全くわからない。
「なぜユンもわからぬのだ……王令とは王の命令のこと。王の命令は絶対、例えどんな内容だろうと強制的に従わせることが出来る特殊魔法のことだ。ロイに噛み付いた狼が骨まで行かなかったのは王令で止められたからだろう」
「そうなの、ユン?」
「ワン!」
と、今度はそうだと言わんばかりに胸を張る。
「そうだったんだ。助けてくれてありがとう、ユン」
「ワフン!」
それにしても、ユンが狼王?
「王みたいな威厳は感じられないけど……」
「ワフ?」
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