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売れ残りと私とウィンターウォーズ・後編
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そんな私の知らない何処かで、女性型のサイボーグ同士が戦っていた。きっと私の世界より、はるかに未来の話なのだろう。あるいは別の世界線か。これも後から知ったことである。
「ミサイル発射。更に次弾を空中で生成」
全体的に白いボディの女性型サイボーグが、数メートル上の空中で小型ミサイルを無から作り出して発射した。小型というけれど、具体的にどれくらいの大きさなのか私は知らないし、知りたくもない。続いてミサイルが発射されて、廃墟のビル群が倒壊した。核戦争によってか、昼だというのに雲に覆われて周囲は暗い。
「ええぃ、うっとうしい!」
ビルの瓦礫の下から、こちらは全体的に黒いボディの女性型がサブマシンガンを発砲する。ちなみにサブマシンガンというのは、マシンガンの小型版らしい。機関銃と言った方が通じやすいだろうか。その銃弾は白い女性型の眼前で、バリアに防がれていた。
「まだ死なないとは。いい加減に諦めるべき。貴様の戦力では私にダメージを与えられない」
白いボディの彼女が冷たい目を向ける。髪と瞳は同じ銀色だ。肌は白くて、美人と言って通る顔立ちである。
「うるせぇ! てめぇのミサイルは破壊力だけなんだよ。でたらめにダメージを与え続けて、その結果が人類滅亡だろうが! 人類なんかどうでもいいが、てめぇが暴れすぎると俺がねぐらにしてる建物まで無くなっちまう。雨宿りもできなくなっちまうだろうが!」
黒いボディの彼女は金髪に青い目だ。瓦礫の中から這い出してきて、立ち上がった。
「問題ない。私のバリアは雨も防げる」
「俺が濡れるって話をしてるんだ! お前が俺と一緒に過ごすってのか!」
どうにも話が噛み合わない。もっと仲良くできないものだろうか。
「私が与えられた命令は破壊のみだ。他の価値観など知らない。貴様を破壊すれば、当面の敵はいなくなる。我がコードネーム、i─ponの名に懸けて今日、貴様との決着をつける」
「戦闘用の機械に付ける名前なのかよ、それ。上等だよ、こちとら戦闘用の人造人間だ。てめぇをぶっ殺して、ゆっくり眠れる場所を手に入れるさ」
「無駄な足掻きだ。今度こそミサイルは外さない」
白いボディのアイポンちゃんが、再び小型ミサイルを複数、数メートル上の空中で生成する。黒いボディのアンドロイドが、にやりと笑った。
「確かに俺の攻撃は、てめぇには当たらねぇよ。だけどミサイルにバリアはないよな?」
瓦礫の下から、アンドロイドの彼女がロケットランチャーを取り出して肩に担ぐ。
「そんなに複数、ミサイルを近距離に置いてたら、『狙ってくれ』って言ってるようなもんさ。とっておきの特殊弾だ。これで撃って誘爆したら、どうなるかね」
狂気の判断である。自分も爆発に巻き込まれると知りながら、アンドロイドの彼女が特殊弾を撃ち込む。大爆発が起こって────廃墟の世界から二体の戦闘者は姿を消した。
どーん、と大きな音がした気がして、私は目が覚めた。うっかりリビングのソファーで寝てしまったらしい。壁に掛かった時計を見ると、午前三時である。半端な時間に起きたせいで、まだ酔いが抜けきっていなかった。
室内の明かりを点けたままだったので、理由はわからないけどリビングに、私以外の女性が四人いることが確認できる。その内の二人は羽衣?、を着ていて、ふわふわと室内で宙に浮いていた。残りの二人は白と黒のボディで、衣服を模した装甲に身を包んでいる。私が住んでいるマンションは床がカーペットで、これがフローリングだったらロボットちゃん二人の足で床に傷が付いていただろうか。金属製の足だったら厄介かなぁ、などと思った。
「ちょっと、仙女! 何処なのよ、ここは! あんたが大人しく、やられてれば良かったのに!」
「天女ちゃん、ひっどーい。私は身を守っただけだよー。怒ってたら美容に良くないってばー」
「どうやらエネルギーの爆発で、違う次元に飛ばされたみたいだな。どうする、アイポンちゃんよ。この狭い室内じゃミサイル生成もできないだろ」
「問題ない。接近戦用の武器も私は生成できる。勝つのは私だ」
こんな感じの会話が行われていたようだけど、このときの私は内容を理解できなかった。何しろ四人ともが異世界の住人で、彼女たちは日本語なんか話していなかったので。ふわふわ浮いてる二人と、白と黒のロボットちゃんはそれぞれ口論していて、互いの相手しか見ていない。私のことなんか視界にすら入っていないようで、『ああ、これなら私に危険はないな』と、そう思った。
今の時代、私のような一人暮らしにとって、もっとも恐ろしいのは闇バイトの強盗である。男性四人組が襲撃してきたのならともかく、部屋の中にいるのは見目も麗しい女性たちなのだ。口論している姿さえも美しくて、こんな至近距離で三次元世界の、女神さまたちのお顔を拝めるとは。ただただ私は、幸せな気持ちになった。
「くっ……、力が抜ける……。仙女、貴女の方はどう?」
「あー、この世界への移動で、エネルギーを使いすぎちゃったねー。動けないー……」
「あの爆発で、ダメージを負わなかっただけでも奇跡だよな。その後の次元移動で、てめぇと俺はどっちも、燃料切れみたいな状態だ。今はバリアも張れねぇし、武器も生成できないんだろ? 殴り倒してやるから、そのまま寝てな……」
「笑わせるな……。起き上がることもできない貴様を倒すことなど容易い。すぐに立ってみせるから貴様こそ、そのまま寝ていろ……」
私の前で、浮遊していた女性二人が緩やかに落ちていって、カーペットの床に寝転がる。ちなみに羽衣を着た二人は裸足で、室内を土足で荒らされないのは良かったけれど、そんなことはどうでもいい。黒と白のボディを持つロボットちゃん二人(というのか、二体というのか)も、床に倒れてしまっていて。会話の内容も、何が起きているのかもわからないけど、彼女たちが疲れているのは私にも感じ取れて。
「あの……。チョコがあるんですけど、食べませんか?」
だから私は、買い過ぎたチョコレートを、彼女たちに食べてもらうことにしたのだった。
「ミサイル発射。更に次弾を空中で生成」
全体的に白いボディの女性型サイボーグが、数メートル上の空中で小型ミサイルを無から作り出して発射した。小型というけれど、具体的にどれくらいの大きさなのか私は知らないし、知りたくもない。続いてミサイルが発射されて、廃墟のビル群が倒壊した。核戦争によってか、昼だというのに雲に覆われて周囲は暗い。
「ええぃ、うっとうしい!」
ビルの瓦礫の下から、こちらは全体的に黒いボディの女性型がサブマシンガンを発砲する。ちなみにサブマシンガンというのは、マシンガンの小型版らしい。機関銃と言った方が通じやすいだろうか。その銃弾は白い女性型の眼前で、バリアに防がれていた。
「まだ死なないとは。いい加減に諦めるべき。貴様の戦力では私にダメージを与えられない」
白いボディの彼女が冷たい目を向ける。髪と瞳は同じ銀色だ。肌は白くて、美人と言って通る顔立ちである。
「うるせぇ! てめぇのミサイルは破壊力だけなんだよ。でたらめにダメージを与え続けて、その結果が人類滅亡だろうが! 人類なんかどうでもいいが、てめぇが暴れすぎると俺がねぐらにしてる建物まで無くなっちまう。雨宿りもできなくなっちまうだろうが!」
黒いボディの彼女は金髪に青い目だ。瓦礫の中から這い出してきて、立ち上がった。
「問題ない。私のバリアは雨も防げる」
「俺が濡れるって話をしてるんだ! お前が俺と一緒に過ごすってのか!」
どうにも話が噛み合わない。もっと仲良くできないものだろうか。
「私が与えられた命令は破壊のみだ。他の価値観など知らない。貴様を破壊すれば、当面の敵はいなくなる。我がコードネーム、i─ponの名に懸けて今日、貴様との決着をつける」
「戦闘用の機械に付ける名前なのかよ、それ。上等だよ、こちとら戦闘用の人造人間だ。てめぇをぶっ殺して、ゆっくり眠れる場所を手に入れるさ」
「無駄な足掻きだ。今度こそミサイルは外さない」
白いボディのアイポンちゃんが、再び小型ミサイルを複数、数メートル上の空中で生成する。黒いボディのアンドロイドが、にやりと笑った。
「確かに俺の攻撃は、てめぇには当たらねぇよ。だけどミサイルにバリアはないよな?」
瓦礫の下から、アンドロイドの彼女がロケットランチャーを取り出して肩に担ぐ。
「そんなに複数、ミサイルを近距離に置いてたら、『狙ってくれ』って言ってるようなもんさ。とっておきの特殊弾だ。これで撃って誘爆したら、どうなるかね」
狂気の判断である。自分も爆発に巻き込まれると知りながら、アンドロイドの彼女が特殊弾を撃ち込む。大爆発が起こって────廃墟の世界から二体の戦闘者は姿を消した。
どーん、と大きな音がした気がして、私は目が覚めた。うっかりリビングのソファーで寝てしまったらしい。壁に掛かった時計を見ると、午前三時である。半端な時間に起きたせいで、まだ酔いが抜けきっていなかった。
室内の明かりを点けたままだったので、理由はわからないけどリビングに、私以外の女性が四人いることが確認できる。その内の二人は羽衣?、を着ていて、ふわふわと室内で宙に浮いていた。残りの二人は白と黒のボディで、衣服を模した装甲に身を包んでいる。私が住んでいるマンションは床がカーペットで、これがフローリングだったらロボットちゃん二人の足で床に傷が付いていただろうか。金属製の足だったら厄介かなぁ、などと思った。
「ちょっと、仙女! 何処なのよ、ここは! あんたが大人しく、やられてれば良かったのに!」
「天女ちゃん、ひっどーい。私は身を守っただけだよー。怒ってたら美容に良くないってばー」
「どうやらエネルギーの爆発で、違う次元に飛ばされたみたいだな。どうする、アイポンちゃんよ。この狭い室内じゃミサイル生成もできないだろ」
「問題ない。接近戦用の武器も私は生成できる。勝つのは私だ」
こんな感じの会話が行われていたようだけど、このときの私は内容を理解できなかった。何しろ四人ともが異世界の住人で、彼女たちは日本語なんか話していなかったので。ふわふわ浮いてる二人と、白と黒のロボットちゃんはそれぞれ口論していて、互いの相手しか見ていない。私のことなんか視界にすら入っていないようで、『ああ、これなら私に危険はないな』と、そう思った。
今の時代、私のような一人暮らしにとって、もっとも恐ろしいのは闇バイトの強盗である。男性四人組が襲撃してきたのならともかく、部屋の中にいるのは見目も麗しい女性たちなのだ。口論している姿さえも美しくて、こんな至近距離で三次元世界の、女神さまたちのお顔を拝めるとは。ただただ私は、幸せな気持ちになった。
「くっ……、力が抜ける……。仙女、貴女の方はどう?」
「あー、この世界への移動で、エネルギーを使いすぎちゃったねー。動けないー……」
「あの爆発で、ダメージを負わなかっただけでも奇跡だよな。その後の次元移動で、てめぇと俺はどっちも、燃料切れみたいな状態だ。今はバリアも張れねぇし、武器も生成できないんだろ? 殴り倒してやるから、そのまま寝てな……」
「笑わせるな……。起き上がることもできない貴様を倒すことなど容易い。すぐに立ってみせるから貴様こそ、そのまま寝ていろ……」
私の前で、浮遊していた女性二人が緩やかに落ちていって、カーペットの床に寝転がる。ちなみに羽衣を着た二人は裸足で、室内を土足で荒らされないのは良かったけれど、そんなことはどうでもいい。黒と白のボディを持つロボットちゃん二人(というのか、二体というのか)も、床に倒れてしまっていて。会話の内容も、何が起きているのかもわからないけど、彼女たちが疲れているのは私にも感じ取れて。
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