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ファースト・ラブ
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それからの僕は幸せな気分で仕事に取り掛かった。あの時の唇の感触、甘い声、囁かれた言葉、優しい手つき、そのどれもがとても鮮明に思い出されて思い返すたびに胸が締め付けられる。
「宮野ー! 休憩、だぞー!」
「うわああ! はは、はい!」
またもや大声で名前を呼ばれて飛び上がるほど驚いてしまう。店長は大きな溜息をつきながら肩に手を回す。
「最近お前はボーッとしすぎだから、何、悩みでもあんの?」
「もしかして、恋してる?」
「しし、してませんって!」
慌てて否定して僕はお昼に向かう。その時マスクをしている桜井さんと篠原さんが歩いているのを見つけ思わず身を隠す。
「香ちゃん、風邪本当に大丈夫?」
「大丈夫です。心配してくれるなんて篠原さん優しいですね」
「当然でしょう? 早く治るといいね」
そんな些細な会話だったけど、僕にはまるで恋人同士が仲睦まじく話しているように聞こえてそれが堪らなくなってその場から逃げてしまった。胸が痛い、もう篠原さんは僕のものじゃないんだと思ってしまう。
─篠原─
風邪を引いてもなお仕事を選ぶ彼女はすごいと思う。だけど心配だし何よりほかの社員さんに移させたくなくて、なるべく俺と行動するよう言っていた。もし宮野くんに風邪でも移って休まれたら、それこそ大変だし彼が可哀想だと思った。
「あ、そうだ篠原さん……あの、今日家に行ってもいいですか?」
「うん構わないけど、どうしたの?」
「ちょっと仕事で悩み事があって、それを聞いて欲しくて」
正直女の子を家に上げるのは宮野くんから誤解を招きそうで、でも数時間ぐらいならと彼女が家に来るのを許した。仕事が終わってすぐ香ちゃんは直行で俺の家に遊びに来た。
「わあ、やっぱりいい匂い……」
「そんなことないでしょう? それより悩みって?」
彼女は少し頬を染めながらも俺に抱きついてきた。焦って動けずにいると彼女は口を開く。
「あの、仕事ですごく気になる人がいるんです。その人は仕事も出来るし背も高くて、周りに気配りが出来て、何より信頼されている人なんです。その人といるとすごく楽しくて、でもそれだけじゃ足りなくて……」
その人、というのが俺だという事はすぐに理解出来た。だけど俺は彼女を引き離してあえてアドバイスをする。
「そう思うなら気持ちを伝えた方がいいと俺は思うけど─」
「好きです、篠原さんのことが大好きです」
最後まで言葉を聞かずに彼女は俺に強く抱きついて来る。気持ちは嬉しい。でも答えることは出来ない。
「ありがとう、でもごめんね。俺は香ちゃんの気持ちには答えられないよ。守りたい人がいるんだ」
そう言うと香ちゃんは俺を見て言った。
「そんな気がしてました……私はいつも篠原さんを見ているのに篠原さんは私を見てくれていないから……」
「ごめん……」
沈黙が流れた後、彼女は帰りますと言って帰っていった。明日にでも気持ちを伝えてあげたい、だけどまだ時期が早いんじゃないかってそう思った。
「おはようございます……」
余計な妄想を重ねたせいで一晩眠れずに過ごしてしまった。眠い目を擦って店に入る。
「うっわ、ひどい顔……目の下クマ出来てる」
店長に目の下をなぞられ苦笑いする。
「そういや今日篠原さんは?」
「ああ、風邪引いたって。香ちゃんも休んでるよね」
「もしかして……二人でー…」
そんなことを言いながら笑い合う店長達の会話を聞きたくなくて僕は厨房に篭った。今頃二人で、そんな妄想をしたくないのに頭の中に浮かんできて僕を苛めてくる。
あの日キスさせたこと、篠原さんは後悔していないのかな。僕はキスさせてしまったことに後悔している。
「はあぁぁ……」
深く思いため息をついて上の空のまま仕事をする。途中何度かお皿を割ってしまい怒られながら勤務時間を終える。
「お疲れ様でした」
僕は店を出てコンビニに寄るとプリンやらゼリー、スポーツドリンクを買い込んで家に向かった。もちろん、篠原さんの家だ。アパート前につくと妙な緊張感が襲ってくる。もし桜井さんと二人で居たらどうしよう、邪魔になるだけかな……そう思うとインターホンを鳴らせなくて、僕は背を向け帰ろうとしたその時だった。
「あれ、宮野くん?」
「ここ、こんにちは……篠原さん……」
思わぬ偶然に胸が高鳴る。篠原さんは隣に立ち僕の頭を優しく撫でる。
「もしかしてお見舞い?」
「はは、はい。で、でも、迷惑、ですよね」
「そんなことないよ。嬉しいな、さあ、上がって」
僕は彼に連れられて家に入る。初めて来た時から数日が経っているけど、また入れるなんて思わなかった。それに今は余計な人もいないし、篠原さんと二人きりだ。そう思うと胸がまたドキドキして心臓の音が聞こえないか不安で胸を押さえる。
「お茶入れるね、あ、ジュースがいい?」
「だだ、大丈夫です! その、すぐ帰りますから」
「……それは寂しいな。遠慮しないでよ、座って座って」
彼は僕のそばに来ると肩を持ちソファーまで連れてくる。そして目の前に小さな缶ジュースを置いてくれた。緊張で縮こまる僕の目に、二つのカップが映る。思わず見つめてしまう。もしかして……桜井さん? 来ていたのかな。
「ああ、ごめん。カップ片付けるよ」
椅子を立つ篠原さんの服の裾を掴んで無意識に引き止めてしまう。見上げながら見つめていたが僕は彼の手からカップを奪うようにして取り流し台へ向かった。
「し、篠原さんは休んでいてください……僕が洗います」
「えっ、いいよ、そんなことさせたくない」
「大丈夫ですから! 僕洗いますから」
半ば強引に彼をソファーへ押しやり僕はカップを洗う。二人でどんな話をしていたのか……。
「そういえば風邪、桜井さんに移されたみたいでさ」
僕の手からマグカップが落ちる。流し台の中で力なく横たわってしまうカップを見つめた。
「だから、宮野くんも……」
頭の中をもの凄いスピードで妄想が駆け巡る。この家に桜井さんが来た、二人で過ごした、風邪を移された……。
「……! 宮野くん大丈夫? 怪我してない?」
やっぱり、店長達が話していた事は本当だったんだ。僕は涙が零れそうになるのを堪える。
「宮野くんってば!」
「あ……ぼ、僕、帰ります……」
「待って!」
背中を向けた僕の後ろから大きな体が僕を包み込んでくれる。片手はお腹にもう片手は優しく頭を撫でてくれる。
「ねえ、宮野くん……どうしてそんな悲しそうな顔をするの?」
「えっ……それは……」
「話してよ、聞きたいことがあるんじゃない?」
篠原さんは僕が思っていることを分かってて聞いているみたいだった。抱き締めてくれる手に少し力が入る。
「……さ、桜井さんと……付き合ってるんですか」
「誰が言ってたの?」
「店長達、です……」
「宮野くんはさ、俺と香ちゃんが付き合ってると思う?」
僕は咄嗟に頭を振っていた。付き合っていない、付き合っていて欲しくないという願望だった。
「……そっか、宮野くんは、そう思うんだ」
その言葉が意味する事はなんだろうか、僕は篠原さんの腕から逃れて相手を向き直って言い放った。
「僕は! あの日、篠原さんがキスしてくれたことすごく嬉しかったんです! だからもしかしたら篠原さんも僕の事──ッ」
途中まで言いかけて僕の口は彼の唇で塞がれていた。しっかりと抱き締められ、頭を優しく撫でられながらキスされていた。しばらくして離され見つめられ、僕は俯いてしまう。
「宮野くんは俺のこと、好き?」
そう聞かれてドキドキしながらも頷いた。するとまた強く優しく抱き締めてくれる。
「俺ね、出会った最初の頃から宮野くんしか見ていなかった。背が小さくて、頑張り屋でなのに控えめで……見てるとね、守ってあげたくて……こうやって優しくしてあげたいって何度も思っていたんだ。宮野くんのことが、好きだから」
胸の中で体が熱くなっていくのが分かる。顔に変な汗が出ていそうで、でも夢の中にいるみたいに足元がふわふわして幸せで溶けてしまいそうだった。
「俺達、ずっとずっと両想いだったんだね。どうして気付いてあげられなかったのかな、ごめんね」
そのあまりにも優しすぎる篠原さんの言葉は、まるで魔法のようでいつまでも僕の耳に残り続けた。両想い……嬉しすぎる。
「……宮野くん、大丈夫? 顔赤いけど」
「えへへ。篠原さん、僕、すごく幸せです……好きって言ってもらえて、抱きしめてくれて……僕、すご、く……ッ──」
「宮野くん!」
僕の足は地上から離れてふわふわと空を飛んでいるような感覚だった。甘くて幸せな言葉、篠原さんの言葉ひとつひとつが、僕の心にストンと落ちていく。篠原さん、大好き。
「宮野ー! 休憩、だぞー!」
「うわああ! はは、はい!」
またもや大声で名前を呼ばれて飛び上がるほど驚いてしまう。店長は大きな溜息をつきながら肩に手を回す。
「最近お前はボーッとしすぎだから、何、悩みでもあんの?」
「もしかして、恋してる?」
「しし、してませんって!」
慌てて否定して僕はお昼に向かう。その時マスクをしている桜井さんと篠原さんが歩いているのを見つけ思わず身を隠す。
「香ちゃん、風邪本当に大丈夫?」
「大丈夫です。心配してくれるなんて篠原さん優しいですね」
「当然でしょう? 早く治るといいね」
そんな些細な会話だったけど、僕にはまるで恋人同士が仲睦まじく話しているように聞こえてそれが堪らなくなってその場から逃げてしまった。胸が痛い、もう篠原さんは僕のものじゃないんだと思ってしまう。
─篠原─
風邪を引いてもなお仕事を選ぶ彼女はすごいと思う。だけど心配だし何よりほかの社員さんに移させたくなくて、なるべく俺と行動するよう言っていた。もし宮野くんに風邪でも移って休まれたら、それこそ大変だし彼が可哀想だと思った。
「あ、そうだ篠原さん……あの、今日家に行ってもいいですか?」
「うん構わないけど、どうしたの?」
「ちょっと仕事で悩み事があって、それを聞いて欲しくて」
正直女の子を家に上げるのは宮野くんから誤解を招きそうで、でも数時間ぐらいならと彼女が家に来るのを許した。仕事が終わってすぐ香ちゃんは直行で俺の家に遊びに来た。
「わあ、やっぱりいい匂い……」
「そんなことないでしょう? それより悩みって?」
彼女は少し頬を染めながらも俺に抱きついてきた。焦って動けずにいると彼女は口を開く。
「あの、仕事ですごく気になる人がいるんです。その人は仕事も出来るし背も高くて、周りに気配りが出来て、何より信頼されている人なんです。その人といるとすごく楽しくて、でもそれだけじゃ足りなくて……」
その人、というのが俺だという事はすぐに理解出来た。だけど俺は彼女を引き離してあえてアドバイスをする。
「そう思うなら気持ちを伝えた方がいいと俺は思うけど─」
「好きです、篠原さんのことが大好きです」
最後まで言葉を聞かずに彼女は俺に強く抱きついて来る。気持ちは嬉しい。でも答えることは出来ない。
「ありがとう、でもごめんね。俺は香ちゃんの気持ちには答えられないよ。守りたい人がいるんだ」
そう言うと香ちゃんは俺を見て言った。
「そんな気がしてました……私はいつも篠原さんを見ているのに篠原さんは私を見てくれていないから……」
「ごめん……」
沈黙が流れた後、彼女は帰りますと言って帰っていった。明日にでも気持ちを伝えてあげたい、だけどまだ時期が早いんじゃないかってそう思った。
「おはようございます……」
余計な妄想を重ねたせいで一晩眠れずに過ごしてしまった。眠い目を擦って店に入る。
「うっわ、ひどい顔……目の下クマ出来てる」
店長に目の下をなぞられ苦笑いする。
「そういや今日篠原さんは?」
「ああ、風邪引いたって。香ちゃんも休んでるよね」
「もしかして……二人でー…」
そんなことを言いながら笑い合う店長達の会話を聞きたくなくて僕は厨房に篭った。今頃二人で、そんな妄想をしたくないのに頭の中に浮かんできて僕を苛めてくる。
あの日キスさせたこと、篠原さんは後悔していないのかな。僕はキスさせてしまったことに後悔している。
「はあぁぁ……」
深く思いため息をついて上の空のまま仕事をする。途中何度かお皿を割ってしまい怒られながら勤務時間を終える。
「お疲れ様でした」
僕は店を出てコンビニに寄るとプリンやらゼリー、スポーツドリンクを買い込んで家に向かった。もちろん、篠原さんの家だ。アパート前につくと妙な緊張感が襲ってくる。もし桜井さんと二人で居たらどうしよう、邪魔になるだけかな……そう思うとインターホンを鳴らせなくて、僕は背を向け帰ろうとしたその時だった。
「あれ、宮野くん?」
「ここ、こんにちは……篠原さん……」
思わぬ偶然に胸が高鳴る。篠原さんは隣に立ち僕の頭を優しく撫でる。
「もしかしてお見舞い?」
「はは、はい。で、でも、迷惑、ですよね」
「そんなことないよ。嬉しいな、さあ、上がって」
僕は彼に連れられて家に入る。初めて来た時から数日が経っているけど、また入れるなんて思わなかった。それに今は余計な人もいないし、篠原さんと二人きりだ。そう思うと胸がまたドキドキして心臓の音が聞こえないか不安で胸を押さえる。
「お茶入れるね、あ、ジュースがいい?」
「だだ、大丈夫です! その、すぐ帰りますから」
「……それは寂しいな。遠慮しないでよ、座って座って」
彼は僕のそばに来ると肩を持ちソファーまで連れてくる。そして目の前に小さな缶ジュースを置いてくれた。緊張で縮こまる僕の目に、二つのカップが映る。思わず見つめてしまう。もしかして……桜井さん? 来ていたのかな。
「ああ、ごめん。カップ片付けるよ」
椅子を立つ篠原さんの服の裾を掴んで無意識に引き止めてしまう。見上げながら見つめていたが僕は彼の手からカップを奪うようにして取り流し台へ向かった。
「し、篠原さんは休んでいてください……僕が洗います」
「えっ、いいよ、そんなことさせたくない」
「大丈夫ですから! 僕洗いますから」
半ば強引に彼をソファーへ押しやり僕はカップを洗う。二人でどんな話をしていたのか……。
「そういえば風邪、桜井さんに移されたみたいでさ」
僕の手からマグカップが落ちる。流し台の中で力なく横たわってしまうカップを見つめた。
「だから、宮野くんも……」
頭の中をもの凄いスピードで妄想が駆け巡る。この家に桜井さんが来た、二人で過ごした、風邪を移された……。
「……! 宮野くん大丈夫? 怪我してない?」
やっぱり、店長達が話していた事は本当だったんだ。僕は涙が零れそうになるのを堪える。
「宮野くんってば!」
「あ……ぼ、僕、帰ります……」
「待って!」
背中を向けた僕の後ろから大きな体が僕を包み込んでくれる。片手はお腹にもう片手は優しく頭を撫でてくれる。
「ねえ、宮野くん……どうしてそんな悲しそうな顔をするの?」
「えっ……それは……」
「話してよ、聞きたいことがあるんじゃない?」
篠原さんは僕が思っていることを分かってて聞いているみたいだった。抱き締めてくれる手に少し力が入る。
「……さ、桜井さんと……付き合ってるんですか」
「誰が言ってたの?」
「店長達、です……」
「宮野くんはさ、俺と香ちゃんが付き合ってると思う?」
僕は咄嗟に頭を振っていた。付き合っていない、付き合っていて欲しくないという願望だった。
「……そっか、宮野くんは、そう思うんだ」
その言葉が意味する事はなんだろうか、僕は篠原さんの腕から逃れて相手を向き直って言い放った。
「僕は! あの日、篠原さんがキスしてくれたことすごく嬉しかったんです! だからもしかしたら篠原さんも僕の事──ッ」
途中まで言いかけて僕の口は彼の唇で塞がれていた。しっかりと抱き締められ、頭を優しく撫でられながらキスされていた。しばらくして離され見つめられ、僕は俯いてしまう。
「宮野くんは俺のこと、好き?」
そう聞かれてドキドキしながらも頷いた。するとまた強く優しく抱き締めてくれる。
「俺ね、出会った最初の頃から宮野くんしか見ていなかった。背が小さくて、頑張り屋でなのに控えめで……見てるとね、守ってあげたくて……こうやって優しくしてあげたいって何度も思っていたんだ。宮野くんのことが、好きだから」
胸の中で体が熱くなっていくのが分かる。顔に変な汗が出ていそうで、でも夢の中にいるみたいに足元がふわふわして幸せで溶けてしまいそうだった。
「俺達、ずっとずっと両想いだったんだね。どうして気付いてあげられなかったのかな、ごめんね」
そのあまりにも優しすぎる篠原さんの言葉は、まるで魔法のようでいつまでも僕の耳に残り続けた。両想い……嬉しすぎる。
「……宮野くん、大丈夫? 顔赤いけど」
「えへへ。篠原さん、僕、すごく幸せです……好きって言ってもらえて、抱きしめてくれて……僕、すご、く……ッ──」
「宮野くん!」
僕の足は地上から離れてふわふわと空を飛んでいるような感覚だった。甘くて幸せな言葉、篠原さんの言葉ひとつひとつが、僕の心にストンと落ちていく。篠原さん、大好き。
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