【R15】気まぐれデュランタ

あおみなみ

文字の大きさ
25 / 88
第9章 さよりの帰省

実家への電話

しおりを挟む


※一部、犯罪行為の記述がありますが、もちろんこれを奨励するものではありません。ご了承ください。

◇◇◇

 さよりは夏休みの間、片山の実家に帰っていた。
 
 短大が年内に決まる推薦入学なら、高校在学中に運転免許を取ることもできたが、2月の一般入試だったので、その後に手続してとなると、結構混み合ってしまう。だから夏休みに地元に戻って免許スクールに通うということで、東京に行く前から話はまとまっていた。
 父親の知人がとあるスクールに勤めており、「お宅のさよりちゃん、今年高3でしょ?」と、進級したぐらいのタイミングで早々と打診があったので、そこに通うことも決まっていた。

 夏休みに実家でのんびりするのも悪くないし、などと思っていたのだが、東京を離れるということは、せっかくいい感じになりつつある俊也と会えないことを意味する。

 こちらの都合のいいときに公衆電話から電話をかけ、アポを取って会って話すだけという、まだ「カレカノ」には程遠い付き合いではあるから、さよりはそこまで調子に乗っているわけではないが、少なくとも俊也が自分からの電話を嫌がっていないという空気くらいは分かる。
 しかしそれだけに、「俊也さんのお部屋に行ってみたい」とか、「届けを出せば、外泊できますよ」的な意味ありげで慎みのないことを、自分から言い出すこともできず、実際、「進展」はあまりしていないのだ。

◇◇◇

 スクールの方は、時々ヘマをやりながらも、結構勘がつかめてきたので、何とか夏休み中に免許は取れそうだ。
 俊也には一応電話をしたが、「今、片山に帰っていて、8月いっぱいはコッチだと思います」「東京に戻ったら、またお話ししたいです」程度のことしか言えなかった。ただ、そんな会話の中で、「もしよかったら…」と、自宅の電話番号を教えることはできた。

◇◇◇

 8月盆が近づいてきた頃、俊也から電話がかかってきた。

 最初に取ったのは母で、全く知らない男性からの娘あてということで警戒したが、晴海の大学の「友達」という説明と、礼儀正しい対応により、「あら、そうなの?お付き合いしているの?」とからかわれる程度で済んだ(父親だったらこうはいかなかったかもしれない)。

『15日頃にそっちいきたいんだけど、会える…かな?』
「え、片山にですか?」
『無理ならやめておくけど…』
「そんな!会いたいです!」

 さよりのほかに知人がいるわけでもない、特に何の変哲もないこの街に、わざわざ俊也が来てくれる。もうそれだけで、踊り出したい気分だった。

「何時頃になりますか?」
『えーとね…11時ぐらいかな?』
「新幹線ですよね。ホームまで迎えにいきます」
『いや…片山ってそんなに大きな駅じゃないよね?』
「まあ、そんなには」
『じゃ、場所を指定してくれれば多分行けるよ。そこで11時半頃で』
「そうですか?では、西口の…」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...