【R15】気まぐれデュランタ

あおみなみ

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第9章 さよりの帰省

2人きりになれる場所イコール…

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 半分どころか、俊也は十中八九「本気」だった。
 片山と俊也の出身地は同じぐらいの規模感の都市で、駅前の繁華街の様子も何となく似ている。
 そういう街では、場末というか、賑やかな界隈から微妙に外れたところに、ラブホテルや連れ込み宿的なものが必ずある。
 東京のようにホテル街というほどでもないが、食事して、飲酒して、気分が盛り上がって的なコースのシメは、都会も田舎もさして変わらないものだ。

「最後に、俺の行きたいところに付き合ってほしいんだけど…」
「どこですか?」
「さよりと2人きりになれる場所――いいよね?」
「え、それは、その…」
「嫌なら指一本触れないよ。でも、2人きりになりたいんだ」
「はい…」
 さよりは不意に呼び捨てされ、優しく肩を抱かれ、操られるように素直に返事をした。

◇◇◇

 駅前に戻り、片山に来る前の軽い下調べと何となくの勘で、俊也はさよりを誘導した。

 複数の映画館が建ち並んだ先に、「ホテル シャノワール」がある。
 さよりも高校時代、同級生の口から聞いたことのある名前だった。
 まだ明るいし、入口は映画館のある通りに面していて、人目があると恥ずかしいが、思い切って入ってしまえばこっちのものだ。

 もう俊也は「いいかな?」とは聞かないし、さよりも腹をくくった。
 そのまま吸い込まれるように進み入ろうとしたとき、後ろから突然走り寄ってきた人物が、さよりの手を引っ張った。

「え?松崎君?」
 さよりの声と体の傾きに、俊也が驚いて振り返る。
「あんた――さよりさんに何をするつもりだ!」
 松崎は、振り返った俊也をにらみつけた。
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