【R15】気まぐれデュランタ

あおみなみ

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第13章 すれ違い

会いたくない男

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 さよりは、学校はまだ始まっていなかったし、アルバイトもしていなかったので、時間はたっぷりとある。
 こういうときこそ俊也さんに会いたいのにと、少し恨めしい気持ちにはなるが、どうしようもなかった。

 授業や生活のペースもつかめてきたし、免許も取れたし、そろそろアルバイトも悪くないかもしれないと思い、求人情報誌を買うためにコンビニに向かった。少し気分転換もしたかった。

◇◇◇

 求人誌のほかに、若い女性向けの雑誌もチェックした。
 おしゃれで華やかなファッション誌の表紙に「セックスについてのマジメな考察」的な見出しがあって、胸がチクッとした。

 さよりにはそういう経験は全くない。

 先日の松崎の「妨害」の後、俊也と電話で話すことはあっても、さすがに自宅の電話でそんな話題は出せないし、公衆電話だと時間に限界がある。長距離でテレホンカードの度数が見る見る減ってしまうし、長電話もできない。

 俊也も本当は、市外局番「03」のエリアに自分だけの部屋と電話を持っていて、気が向いたらいつでも肌に触れられるような、「面倒くさくない」女の方がいいのかもしれない――と、簡単にネガティブな発想につながってしまう。
 そんな心の小さな切り傷を広げるかのように、「さよりさん、アルバイト探しているんですか?」と 背後から声をかけられた。
 ぎょっとして振り向くと、そこには松崎が立っていた。

「松崎君――どうしてここに?」
「日曜は夕刊の配達がないんですよ。
 さよりさんはそんなこと、興味ないかもしれないけど」
「そんなこと…お仕事、頑張ってるんだね」
 さよりはそんな空々しい、無意味な返事しかできない。

「ねえ、さよりさん」
「なあに?」
「この間の男とヤッたんですか?」
「なっ…」
「ねえねえ、ヤッたんですか?」

 そんなに大きな声ではないが、周囲には丸聞こえだろう。
 何を考えているのか分からないが、あまりの非常識さにさよりは腹が立ち、求人誌をラックに戻して速足で店を出た。
 松崎はニヤニヤしながらその後を追い、執拗に繰り返した。

「ねえ、無視しないでよ。ヤッたの?」
「しつこいわね!あなたに何か関係ある?」
「関係ある…だって?」

 そこで松崎は、何かがはじけたように大声で叫んだ。

「お前、俺のカノジョだろ?
 何でほかの男とホテルなんか行くんだよ!」

 これには通りすがりの若い女性がぎょっとして足を止め、もめている男女を興味津々でじろじろ見た。

「ちょっと。誰がカノジョ?そういうのやめてよ!」

「野球も一緒に見にいったし、プレゼントも買ってやったろう?
 メシだっておごった!
 もっともっと、いろいろしてやるつもりだったのに!」

「そういうの、本当に迷惑だからもうやめて。
 あなたに付き合ったのはね、断るのが面倒だったからよ!
 友達でいいって言ってたけど、正直友達もごめんだわ!」

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