【R15】気まぐれデュランタ

あおみなみ

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第17章 土曜の夜と日曜の朝

一夜明けて

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 さよりは6時前に自然に目が覚めた。
 そこは歓楽街から適度に離れた場所にあったラブホテルの一室の、キングサイズのベッドの上だった。

 まだ――痛い。
 隣には、初めて見る俊也の寝顔があった。

(無防備な顔だけど…何だかかわいい)

 そんなことを考えながら頬を指でつつくと、突然俊也にその手をつかまれ、唐突に見開いた大きな目をじっと向けられた。

「おはよ、さより」
「…おはようございます」

 俊也はさよりよりも少し早く目を覚まし、いったんさよりの寝顔を確認した後、浅い二度寝をしていたのだ。

「君の寝顔、写真撮りたかったな」
「えー…」
「本当にかわいい。あまり化粧していないから、ギャップが少ないというのもあるんだろうね」
「…」

◇◇◇

 さよりは昨夜のことを思い出し、少し苦い気持ちになった。

 俊也は優しく愛撫してくれたし、「耳に気持ちのいい」言葉をたくさんさよりに浴びせた。
 その一方で、さよりが苦痛を示しても、「俺は人より少し大きいけど――我慢して」と押し切られたし、「すごく…いい」と端的に感想を述べられたりしたことが、さよりの心をうっすら削った。
 他の女性と比較されているんだなと思わざるを得ない。
 それはたとえ、「今までの女よりもいい」と思われていたとしても、あまり愉快なことではない。

 また、初めてだから仕方ないが、この行為のよさが、さよりにはよく分からなかった。
 しかし、一度こういう関係になってしまったら、多分俊也との交際の中で、これがルーティンのようになるのだろう。

 どうしても「したくない」日というのがあったら、どう断ったらいいのか。
 あなたのことは好きだが、セックスが好きになれるかどうか分からない――と、どう伝えたら誤解されずに受け取ってもらえるだろう。

 気に染まない松崎の誘いさえ断れなかったさよりに、そんな要領のいいことはできそうもない。

 俊也はこの上なく優しい表情と声で「これからも大事にする。好きだ。愛してる」と繰り返すが、さよりの複雑な表情を見ても、「ちょっと無理させちゃったかな?疲れが出ているみたいだ」程度のことしか考えられなかった。
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