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第17章 土曜の夜と日曜の朝
一夜明けて
しおりを挟むさよりは6時前に自然に目が覚めた。
そこは歓楽街から適度に離れた場所にあったラブホテルの一室の、キングサイズのベッドの上だった。
まだ――痛い。
隣には、初めて見る俊也の寝顔があった。
(無防備な顔だけど…何だかかわいい)
そんなことを考えながら頬を指でつつくと、突然俊也にその手をつかまれ、唐突に見開いた大きな目をじっと向けられた。
「おはよ、さより」
「…おはようございます」
俊也はさよりよりも少し早く目を覚まし、いったんさよりの寝顔を確認した後、浅い二度寝をしていたのだ。
「君の寝顔、写真撮りたかったな」
「えー…」
「本当にかわいい。あまり化粧していないから、ギャップが少ないというのもあるんだろうね」
「…」
◇◇◇
さよりは昨夜のことを思い出し、少し苦い気持ちになった。
俊也は優しく愛撫してくれたし、「耳に気持ちのいい」言葉をたくさんさよりに浴びせた。
その一方で、さよりが苦痛を示しても、「俺は人より少し大きいけど――我慢して」と押し切られたし、「すごく…いい」と端的に感想を述べられたりしたことが、さよりの心をうっすら削った。
他の女性と比較されているんだなと思わざるを得ない。
それはたとえ、「今までの女よりもいい」と思われていたとしても、あまり愉快なことではない。
また、初めてだから仕方ないが、この行為のよさが、さよりにはよく分からなかった。
しかし、一度こういう関係になってしまったら、多分俊也との交際の中で、これがルーティンのようになるのだろう。
どうしても「したくない」日というのがあったら、どう断ったらいいのか。
あなたのことは好きだが、セックスが好きになれるかどうか分からない――と、どう伝えたら誤解されずに受け取ってもらえるだろう。
気に染まない松崎の誘いさえ断れなかったさよりに、そんな要領のいいことはできそうもない。
俊也はこの上なく優しい表情と声で「これからも大事にする。好きだ。愛してる」と繰り返すが、さよりの複雑な表情を見ても、「ちょっと無理させちゃったかな?疲れが出ているみたいだ」程度のことしか考えられなかった。
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