【R15】気まぐれデュランタ

あおみなみ

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第18章 勘違いは誰のせい

勘助(※)

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※勘違い男のこと。厳密には00年代に入ってからのネットスラングのため、この作品の時代にはなかった言葉ですが、しっくりくるネーミングのためタイトルにしました。

◇◇◇

 秋本和美からさよりのもとに連絡が来た。

 松崎とややこしくなった発端をつくった人物ではあるが、高校時代仲が最もよかったことは間違いないし、久々のコンタクトは素直にうれしいとさよりは思った。
 和美は夏の間、親戚の家の近くの教習所に通っていたが、わずかに盆の時期に、同窓会のために帰省しただけらしい。

「同窓会って中学校の?」
『そうそう。高校卒業して最初のお盆休みだからね』

 元同級生たちの状況が一番変わった年の夏ということで、理由をつけて集まりたいタイプの人が幹事を買って出てセッティングしたという。

『家業の仕出し屋さんの手伝いしてる子なんだけど、公民館押さえて、料理とかは自分のトコをうまいことねじ込んで。あと酒屋さんの子もいるし、記念写真とかも、親戚に写真屋さんのいる子がいるし』
「そっか。そういうツテで全部そろっちゃうんだね」
『結構おいしかったし、会費も安くて助かっちゃった』

 もともとが話しやすい和美相手ということもあり、寮の電話だということも忘れ、つい長くなってしまう。 

『地元に残った子も結構いるんだけど、やっぱり東京とかSとかに出た人が多いね』
 Sというのは、隣県の県庁所在地で、さよりたちの出身エリアでは最も大きな街だ。
「そうなるよね。うちの中学校も、全部把握してるわけじゃないけど、そんな感じだと思う」
『でさ…東京組の1人で――』

 さよりは和美が言葉を濁すように切り出したので、言いたいことをすぐくみ取った。

「…松崎君?」
『あ、やっぱりさよりは勘がいいね。そう、松崎。気になること言ってたから』
「気になること?」
 当然、さよりは嫌な予感しかしない(というよりも、大方の予想はつく)
『それがさ…』

「あ、和美。近いうち時間取れる?長くなるとアレだから、久しぶりに会って話したいな」
『いいね。私は明日でも大丈夫だよ』
「そう?じゃ、待ち合わせはどこがいいかな?」
『私から行くよ。H台駅でいいんだよね?』
「え?悪いよ」
『あのあたり、雑誌に載っているようなオシャレな店とか多いから、行ってみたかったし、ついでだよ』
「そう?じゃ、お言葉に甘えて」

 さよりが不慣れでも迷わなそうな場所を和美に指定し、通話終了。
 やはり久々に和美と会えるのは、純粋にうれしい。
 それに、和美が松崎の「カノジョ」云々という話を持ち出したら、こちらは俊也のことを話せばいい。

◇◇◇

 和美とは高校を卒業以来、半年近く会っていなかったが、いまだ「高校時代の延長」のようなスタイルのさよりと違い、髪を伸ばし、かなり大人びた印象になっていた。ヘアスタイルも、その頃はやっていた「ワンレングス」というタイプで、独特の分け目になっていた。長さも肩より下のようだ。

「ひゃー。さよりは変わんないね」
「和美は大人っぽくなったね。ワンレンにしてるんだ」
「そー。この間帰省したとき、髪の毛前に垂らして、親戚の子『お化けだぞー』って脅かしたら、本気で泣かれた。失礼しちゃうよね」
「そりゃびっくりするでしょ」

 2人はアイスティーとスフレチーズケーキを注文した。
 少し前に俊也の家に持ち帰ったケーキを買った店で、イートインに空きがあったのだ。

「ん。このケーキおいしー」
「ガトーショコラもいけるよ。ここはチョコレート系は全般的におすすめだって」
「よく来るの?」
「あ――カレが甘党だから…」
「カレって松崎?」
「違うよ!というか、やっぱりそういう話になっていたんだね」
「違うの?まあ確かに違和感はあったんだけど」

 和美に「松崎が言っていたこと」を尋ねてみると、「確かにそのとおりだが、それは違う」と思う点が多々あった。
 殊に、「ここに連れていったとき、彼女さよりはどんな様子だった」「こういう反応だった」という点が、さより自身の認識からはかけ離れたものだったのだ。

 例えば野球を見たとき、居眠りしてしまったことに対しては、「すごく楽しみにしていたから、興奮して前日眠れなかったのかもしれない。途中で居眠りしちゃった姿がかわいかった」と変換されていた。
 誕生日のプレゼントにしても、「遠慮深いから最初は断られたけど、寮の先輩が協力してくれたので渡せた。「すてきな曲ね」とうっとりしていたので、アレにしてよかった」ということになっている。

「え、違う違う。野球に行ったのもプレゼントを受け取ったのも本当だけど」
「だよね。何かさよりのキャラクター的におかしいなと思ったんだけど、松崎といるときはなのかもと思って聞いてた」
「というか、松崎君、私と付き合ってるって言ったの?」
「うん、そう言ってた」
「ちなみにそれって何日のこと?」
「先月の中ごろで――何日だったかな」
 和美はそう言いながら手帳を確認し、日付を特定した。
 さよりが俊也と片山で会っていた前日だった。
「なるほど…」
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