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第27章 無自覚相談女
突撃!
しおりを挟むある日、休講のため、さよりは早い時間からぽかんと空いてしまった。
その日はバイトもほかの用事もないので、もっと大きな街に出て映画を見たり、ショッピングをしたりしてもいいし、図書館に寄ってもいいが、どれもピンとこなかった。
図書館といえば、佐竹の部屋は、「区立図書館の分館が近い」のと「異常に古くてポロい」のが目印だと笑っていたことがあった。
住所も最寄り駅も知っているし、急に訪ねていったらどんな顔をするだろう?
不在かもしれないが、それならそれで適当にメモでも置いていけばいい。
ほんの、そんな気軽な気持ちで、さよりは佐竹の住居をアポなしで訪ねることにした。
ブザーのような音の、接触の悪そうな呼び鈴を鳴らすと、佐竹はすぐに出てきた。
「水野さん!?」
「へへ、来ちゃった」
と言った後、さよりは「何この恥ずかしいセリフ」とすぐさま自嘲した。
「うわ、驚いたけど…。入って入って。お茶くらい出すよ」
佐竹があまりにもすんなりと受け入れてくれたので、さよりはのんきに「手土産くらい持ってくるんだった」と後悔したほどだった。
◇◇◇
最低限の家具と本だけの質素な部屋に、さよりの知らない映画のポスター。
ロゴはフランス語だが、フランス映画なのか、英語など別言語の国のフランス製ポスターなのかすら分からない。ただ、SFらしいことは雰囲気から分かった。
「俺は大歓迎だけど、急にどうしたの?」
「急に休講になって…今日はバイトもないし…」
しまった。暇つぶしぐらいに思われたのではないか?と、言ってから心配になったが、佐竹の捉え方は違っていた。
「そう。それで真っ先に俺のところに来るなんて、うぬぼれちゃうよ?彼氏っぽい人がいるのに、いいの?」
「あ…」
そう言われてさよりは、自然に涙ぐんでしまった。飄々とした佐竹も、それにはさすがに少し慌てる。
「ごめん、何か踏み込んだこと言っちゃったみたいで…」
「あ、ちが…佐竹君が悪いんじゃない…」
さよりは平静を取り戻そうとして、かえって歯止めが利かない状態になり、気付けば嗚咽、どころか大号泣の状態になっていた。
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