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第27章 無自覚相談女
揺れ揺れ
しおりを挟む※性的なシーンだと認識できる表現があります。ご注意ください。
◇◇◇
俊也から「距離を置こう」と言われ、それを「連絡しない」という形で実践するさよりだったが、一応「俊也は今頃どうしているか」と全く考えないわけではなかった。
今の自分は注射が痛いといって逃げ回る子供と大差ないという自覚もある。
さらに、日が経てば経つほど、俊也の生活圏に戻りづらくなるという悪循環も感じていた。
「俺はほかのヤツより大きいらしくて」と、少し誇らしげに言ったのは、苦痛を訴えたさよりに詫びるときだったが、心身の不安を抱えているときに冗談めかして言われても、「そんなこと誰に言われたの?」「ほかに何人の女性を知っているの?」という不安をあおるだけのせりふだった。
「今日こそは」といつも決心だけはした。しかし不発だったり、あまりいい結果でなかったりを繰り返した結果が今なのだ。
ふと強気になる瞬間があったとしても、今日も駄目だったらとか、何とかなったとしても、俊也が納得する反応ができなかったら…とか、余計なことを考え、すぐに気持ちがしぼんでしまう。
そして何より、2人とも(特に俊也が)大いなる勘違いをしていることがあった。
距離を置いて冷静になることで、お互いがお互いをどういう存在だったのかを見つめ直すことには確かに意義がある。
が、見つめ直した結果、「やっぱりあの人がいい」と思うとは限らない。
現にさよりは、身体的なトラブル以外にも、いろいろよろしくないことを思い起こしていた。
全く悪びれないキセル行為の告白。
「田舎者のくせにラムネの飲み方を知らないのか」というからかい。
もっといえば、名前を「さゆり」と間違えたこと、「駅で君を見かける」という口から出まかせ(ではなく、単なる見間違いだろうとさよりは解釈したが)。
名前に関しては、覚えていてくれただけでもうれしいというのはうそではなかったが、冷静に考えるとひっかかりを覚える。
最後に会ったとき言われた「下手くそ!煩わしいだけだ、もうやめろ!」という叫びが脳内再生され、嫌な気持ちになることも最近多い。
本当に俊也は自分のことが好きなのだろうか?
それよりも、自分は俊也のことが本当に好きなのか?
陰で「単なる性欲処理」と称する浮気をしていたことは別に考えるとして、距離を置いて冷静に考える前に、しっかりした関係が構築できていたかどうかが怪しいのだ。
出た結論は、「俊也は自分の体だけが目当てだった」となる。
しかしそれを認めたくはない。
それさえ、俊也のことが好きだから認めたくないのか、自分を「そういう女」だと思いたくないだけなのか、判然としないでいる。
だいたい、今の段階でこれを俊也にぶつけても、「そんなに俺が信じられないのか?」と言われて終わる気がする。
その一方で、佐竹とコンタクトを取ることは増えた。
バイト先が目と鼻の先といっても、実際には「夕方まで仕事の佐竹」と「夕方から仕事のさより」では、そこが接点になることはない。
やはり寮なので、気を使って電話してくることはないが、手紙をいいペースでくれたので、さよりがそれに返事を書いたり、佐竹の留守電に声で返事を吹き込んだりした。
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