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第29章 【終】あなたのことが好きです
決意
しおりを挟む男女交際など、件数や経験の濃さを自慢しても仕方がないものだが、それにしても、「あまりにも経験がなさすぎるがゆえの筋の悪さ」というのは、やはり始末が悪い。
今までの俊也が、どちらかというと去るものは追わず、来る者は拒まずタイプだったのに、さよりには珍しく本気になってしまったという要素も大きかったが、「はいそうですか」で済む話ではなかった。
しかしさよりは、「ほかの男と寝るような女は、こちらからお断りだ」という呼び水期待込みで、まず佐竹との関係を告白した。
セックスという直接的な表現を使ったのも、彼女的には実はさほど深い意味はなかったのだが、明確な意思を持って佐竹と関係を持ったというのを強調したかったのかもしれない。流れでも勢いでも、俊也と会えない寂しさからでも、当てこすりでもない。あのときはただ、佐竹と「そう」なりたかっただけなのだ。
その唐突過ぎる感情は、自分でもきちんと説明する自信がなかったが、佐竹が自分に見とれたような表情をしたとき、内心「うぬぼれるな」と自分を戒めたり、アルバイトが決まったという電話を俊也にかける気になれなかったりと、イレギュラーなことが次々とあった。久々の再会の時点で、佐竹に何らかの感情を抱いてしまっていたのだろう。
さよりは佐竹と寝て、「この人が好きだ」と自覚したが、好きという気持ちがあったから寝たかったということにほかならず、どちらが先でも大した問題ではないように思えた。
しかし、佐竹はどうだろう。
「キスしたい」と言って抱いたが、「それだけ」だった可能性だってある。
またさよりの、何かの本で読んだ「男性心理」的なゴミ知識が邪魔をして、自信が持てない。
しかし、自信があろうがなかろうが、とにかく自分の思いを打ち明けなければ、きっと後悔する。
◇◇◇
高校時代に立ち読みした本に書いてあったフレーズを改めて思い出す。
「田舎モンはすぐ思いつめるから、同郷の男と女が偶然東京で会ったっていうだけで、すぐに運命感じて気持ちが盛り上がって、同棲とかし始めちゃうんだよな」
同棲はともかくとして、そんな気分の盛り上がりを、佐竹には感じてしまったのかもしれない。
それならそれで、自分は恥ずかしい田舎モンで構わない――とさよりは腹を括り、佐竹にきちんと告白することを決意した。
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