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内職屋のひとりごと
しおりを挟む【時計】
ロレックス、カルティエ、タグ・ホイヤー、グランドセイコー、オメガ…。
錚々たる高級時計ブランドの名前が並んだ原稿をチェックする。
時計にも高級ブランドにもあまり興味がないし、知識もない。
正直「ちょっと何言っているか分からない」状態で、分かったような顔をして読む。
そして、誤字脱字衍字やら不自然な言い回しの修正をするのが私の仕事である。
こんな作業をしつつ、お気に入りのチープカシオの電池交換をどこに出そうかと悩んでいたりする。
***
【神社】
最近、市内の小さな神社を見つけては飛んでいき、お参りして写真を撮っている。
自動車では絶対に行けないようなところに、自転車や公共交通機関で行くのが楽しい。
娘が高校生のとき誕生日にもらった小さながま口に、100円と50円をある程度キープして、それを賽銭と飲み物代に使うのだ。
観光地の有名な神社に行って、手水鉢を花で美しく飾り付けているようなところを見るのも楽しいけれど、地元の人にも忘れ去られていそうな、言葉は悪いけれど朽ちかかった感じのところが好きだ。
正直言うと、祭神やご利益といったものにはあまり興味がないから、どこに行っても深く考えず、粛々とお参りするだけ。正統派神社マニアから見たらあまり感心しないのだろうが、これが自分には合っていると思う。
鳥居、本殿、拝殿、狛犬、灯篭と、見るべきものはいろいろとあるけれど、私が最も注目しているのは「賽銭箱」だ。
それもイメージしやすい「箱」ではなく、賽銭を投入するためだけの小さな「口」を見ると、なぜかテンションが上がる。
私の夫は御朱印マニアだが、私はあまり興味がない。
思えば、私よりもさらにコミュニケーション能力に難ありの彼が、社務所に申し出て貰ってくるんだなあ……と思うと、少しだけ胸が熱くなる(もはや母目線)。
写真が趣味で、建物に施された凝った彫刻をパシャパシャ撮っては私に分けてくれる。これはうれしい。
そんな彼を見ていて、ある決意が芽生えた。
私も神社内のものを一通りスマホ撮影してくるけれど、もう「鳥居」「扁額(看板)」そして「賽銭箱・賽銭口」だけでいいかもなあ、と。
***
【趣味】
ごくごくたまにだけれど、自分が全く興味のないジャンルの小説を書いている方が私のものを読んで、感想を残したり、評価(星取り)をしてくれたりすることがある。
皆さん私よりはるかに人気作家さんなので、感想や評価の言葉づかいも巧みで気配り上手。そういう姿勢は大いに見習いたいが……残念ながら、興味のないジャンルのお話は、それがどんなに多くの人を魅了するものであったとしても、最初の数行で目が滑って読めなくなってしまう。
時々、「つまんね」「こんなの書くな」という辛辣なお言葉を賜ることもある。
(作家の皆さんの名誉のために言うと、そういう場合、何も書いておらず、「私のを読んじゃったのはジャンルエラーの不幸な事故」って感じの人が多い)
ど厚かましいお年頃の私も、さすがにこれには傷付き、「あなたのために書いてないからっ!ぷんっ!」と強がってみるが、ここでまた少し考えてみた。
食わず嫌いせずに「読んだ」ことは評価されるべきで、私よりずっと偉いのではないか、と。
そんなふうに無理やり考えると、少しだけ許せないこともなくもない。
老い先短い弱小趣味作家、褒められたいわけではないけれど(建前)、傷付きたくないのだ。
なのに何かしら書くと、こんなふうに公表してしまうのだから、もうドMか露出狂の域かもしれない。
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