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第6話 【桐本目線 】private eye[私立探偵]

モーニングが評判の店

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 郷里の姉から電話が来た。
 もともとそこそこの頻度で電話をくれる方だったが、今回はしっかと特定の用件があった。

 姉の子供、つまり俺の姪が、この近隣の大学を受験するという。
 試験日の翌日が土曜日なので、近くで軽く観光してから帰りたいと言うから、付き合ってやってくれないかとのことだった。
 姉は俺よりも14歳年上だった上に結婚も早かったので、俺と7つしか違わない姪がいるのだ。

 しかし、最近の若い子は情報つう|だな。
 安請け合いしたら、ホテルの目の前にあるという「モーニングが評判の店」に、朝の8時から付き合うはめになってしまった。

 姪はよく言えば大人びたタイプで、悪く言えば老け顔だ。
 俺と一緒にいても、ほとんど年齢差がないように見えるかもしれない。
 同じ高校3年生でも、河野なんか中学生みたいなのになあ…などと考えていたら、モーニングを食いに入ったその店で、河野が水を運んできた。
 たまたま思い描いていたものが具現化して、俺は変な声を出してしまったのではなかろうか。

「ここでバイトしてたのか?」
「先生…?」

 その後河野は、無駄口もたたかず折り目正しく接客し、オーダーも料理のサーブも別の従業員だったため、全く話せずに店を出たが――ユニフォームがよく似合って実にかわいかった。

「さっきの人、そうちゃんのクラスってことは私と同い年?
 チョー美少女だったね。
 あんないかにもなメイド服っぽいユニもすごく似合ってたし」
「ああ――河野は中身もかわいいんだ」
「うわっ、宗ちゃんむっつりエロ教師だー」
「何でそうなる!」

 俺自身は本当は呼ばれ方など何でも構わないのだが、姪が俺に気を使って「叔父オジさん」ではなく「宗ちゃん」と名前で呼ぶ。
 昔からの習慣のため流してしまっているが、18の高校生が25の男に宗ちゃんはないだろう。

 河野は今月の17日で18歳になる、んだったな。
 恵愛女学院なら自宅からでも通えるだろうが、家を出るのだろうか。
 これからどんどん大人に、どんどんきれいになっていくだろうし、カレシの1人や2人すぐできるだろう。元担任などお呼びではない。
 それでも俺は、「先生!」と呼ぶ澄んだ声や、大きな目を生き生きさせてマニアックな話題を熱っぽく語る彼女を表情をしばらく引きずるだろう。後遺症のようなものだ。
 本来は彼女に「そんな」感情を抱いてはいけない。
 これではむっつりエロ教師呼ばわりされても、文句は言えないな。
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