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ツイッターデビュー…?
しおりを挟む菜々美がツイッターで複数のアカウントを持っていることは知っていた(本人がそう言っていたし)。正確な数までは知らないけれど。
学校でも、5つも6つも作っている人がいるというが、管理が大変なのではないかと思ったら、設定さえちゃんとすれば、切り替え自体は楽だという。
なんでそんなに必要なのかと聞くと、「本垢」とか「愚痴垢」とか「趣味垢」とかの使い分けが要るし、同じ趣味でも特定の話題を「話せる人」と「話せない人」までいるらしく、なかなか奥が深いものだと感心した。
さて、自分はどうしようか。アカウントを作ったら、菜々美と相互フォローとか…断られるかな?などと思っていたら、入浴中の菜々美がリビングのソファにタブレットを置きっぱなしにしているのを見つけた。
間違ってこの上に腰掛けちゃったらどうするんだか…と呆れて持ち上げ、スイッチに触れてしまったら、画面にツイッターのタイムライン?が現れた。
風呂場からは、派手な笑い声がする。お気に入りの動画でも見ているのだろう。
私はタブレットに目を落とした。
何垢かはわからないが、「ツイート数1,200」と表示されているので、結構な数つぶやいているようだ。
「え…」
自己紹介(バイオとか呼ぶらしい)欄に「愚痴垢ですが、共感し合いたいのでどんどん絡んでください」と書いてある。
ぱっと見たところ、教師への不満、バイト先でのうっぷんなど、内容はいろいろだが、「親父さっさとくたばれ」系も結構多い。最近のワクチン予約についても触れていた。
そして当然、父親より接触の多い私についてもあれこれと書かれている。
「オカンの自慢のボロネーズソース、マズッ(嘔吐の絵文字)こんなん手間かけてつくるくらいなら、レトルトあっためた方がいいよ」
「最近親父がらみの愚痴多い。前はあんま言わなかったのに。でも直接言った方がいいことを、何でアタシにグチるかな。わしゃサンドバッグか」
「若作りイタいんですけど。ああいう服似合うと思ってんだろうな(困った顔の絵文字?)よけい老けて見えてるし」
「自分は理解あるいい母親とか思ってそうなのがサイコーにイラつく」
「親父は金稼いでくるからいなくなると困る。おかんは家事やってくれるから必要。でもどっちの問題も解決したら、マジ要らん。早く大人になりたい」
どれも短文なので、さっと読めてしまう。
リアルに震えが来た。
菜々美が風呂から上がる様子が分かったので、私はあわててディスプレーを消し、元の場所に戻した。
▼▼
私がたまたま見たのは「愚痴垢」だから、ある程度ひどいことが書いてあっても納得できる。
大きな声では言えないが、私も若い頃は口うるさい両親に辟易し、そのセンスのなさを忌み嫌い、「いなくなってほしい」くらいのことは思ったことはあるので、責められた義理ではない。
でも実際、もっとひどい暴言を吐いているアカウントもあるということだろうか。
悪くしたことに、ユーザー名もアカウント名も、非常に覚えやすいものだったので、記憶に残ってしまった。これでは簡単に検索できてしまう。
菜々美の身勝手な言い分に腹を立てながらのぞき見する自分の姿は容易に想像がつく。
あの子の本音と遭遇するかもしれない「空間」で発言するのが怖い。
私はツイッターのアカウントを取ることを断念し、新たにブログを開設することにした。
次は――「40代で高校生の娘がいる母親」として書きたいと思う。
できるだけ身バレにならない発言ばかりなら、多分バレないし、そもそも読まれないかもしれない。
誰かに向けて、この苦しい胸の内を発信したい。
しかし、無理なキャラクターを作り続けることには限界がを感じた。
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