短編集『サイテー彼氏』

あおみなみ

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夢見るマリーゴールド 

ああ言えば、こう言う

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「今度こそハッピーエンドでありますように!」

ただ、話がはずむ人とお付き合いしたいと願っているだけなのに、
なかなかうまくいかない…
そんな女の子の恋愛遍歴的なお話です。

***

 高校時代付き合っていた彼は、ひどい浮気性だった。
 というよりも、私のことを好きでいてくれたかどうかも、実際のところ怪しい。

 一番辛かったのは、私がした話を全く覚えていないことだった。

「私の話って、そんなに退屈かな?」

 特に深い意味はなく、やんわり言ったつもりの言葉だったけれど、彼は癇に障ったようで、「なんだよ、そうやって含みのある言い方しやがって」と言った。

 以来、その言葉は自分の中でNGワード設定した。

 「前にも言ったじゃん」「覚えてないの?」「聞いてなかったんだね?」なんてもってのほか。
 かといって、遠回しにやんわり言ったつもりでも、彼が私の言い方に非難がましさをキレる。
 「ごめんね、面白い話できなくて」なんて下手したでに出たつもりでも、多分「あン?そりゃイヤミか?」と返されると思う。

 結論。私は「何も話すべきではない」ということになる。

◇◇◇

 イケメンにも、お金持ちにも、スポーツマンにも特に興味はない。
 というよりも、そういう基準で誰かを好きになったり、付き合いたいと思ったりすることはない…と思う。
 
 私はただ、話して楽しい人、私と話して楽しいと感じてくれる人と付き合いたかったので、会話が成り立たない彼と付き合っているのは時間の浪費でしかない。
 勇気を出して「お別れした方がいいかも…」と切り出したら、笑いながら思い切り頭を叩かれた。

「なんだそれ?それがお前の言うか?つまんねーんだよ(笑)」
 だそうだ。

 面白い話が滑ったんでも、つまんない冗談でも何でもいい。
 私はただ別れたかったので、「違う。別れたいの」と繰り返し言ったら、今度は胸倉をつかまれ、キスするわけでもないのに顔を近づけられた。
 体育館裏みたいな目立たない場所に呼び出したせいか、彼はやりたい放題だった。

「テメェ、調子乗んなよゴラァ。お前ごときが俺を振ろうってのか?」

 ああ、問題はそっちだったか
 首が締まって苦しかったけれど、何とか絞り出すように言った。

「ちがっ…(ゴホッ)あの…つまんない女だから振った(ゲホっ)…って言って…私…は(ぐっ)あなたにふさわしくない…から」

 そこで手を離してくれた。
 その上「ならまあ、いいか」と、別れること自体は快諾してくれた。物分かりがよくて助かる。

「お前見た目いいし、けっこー金もってっから付き合ってたけど、すげえ退屈なんだよな。ま、お前みたいなのを振ったって言えば、ちっとはハクがつくな」

 それが彼の最後の言葉だった。
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