短編集『朝のお茶会』

あおみなみ

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第3話 怖いものは怖い

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 あざみは2009年に大学進学のために片山に来たのだが、もともと関東出身である。
 震災直後、両親はあざみを心配し、とりあえず大学を辞めて家に帰るか、よそに転学するかを勧めたが、あざみはすっかり片山を気に入っていたし、授業がいつ再開されるか“だけ”を考えていた時期なので、両親の申し出には応じなかった。
 軽いやり合いもあったものの、両親にも理解してもらい、何とか再開したばかりの大学に通い始めたところだ。

 そういうジョークとして受け取ってくれそうな人に対しては、
「うちの大学、結構外国人の先生もいるんですけど…
 どこの国とは言いませんが、さっさと帰国してしまった人と残った人、
 国籍でキレイに分かれた感じなんですよね」
 などと話して聞かせた。
「ロシア人の先生は、必ず窓から一定の距離を取って座るように促します。
 旧ソ連時代の生まれで、ウクライナ(チェルノブイリ)のことがあったせいか、
 妙に説得力あって(笑)」

 この手の話は相手を見誤ると、深刻な放射能汚染ホーシャノーオセンだ、児童集団疎開ジドーシューダンソカイだとかまびすしい感じになるので、あまり軽々に話せないなと考えたのだ。

 先が見えない、何なら現状だってよく分かっていない状態で、怖いと思う気持ちは否定しない。
 そんな中で、根が楽天家のあざみは、全国的に苦笑失笑を買ってしまった「ニコニコしている人には放射能は寄ってこない」という、ある医師の発言を大いに支持していた。
 用心しつつもストレスをためないで生活することが大切だという“真意”をくみ取らず、発言を切り取って嘲笑する人々の方を心から軽蔑していたのだ。
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