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カフェオレボウル【千弦と聡二】
コーヒーの味【千弦】
しおりを挟む2度目に行ったとき、マスターは「今日は一人なんですね?」と言った。
わ、私のこと、覚えててくれたんだ!カンゲキ。
またカフェオレを注文した。
優しいミルクの味が好きだから、お砂糖は入れない。
それと、このお店はカフェオレはボウルで出してくれる。
両手で包むように持って飲むから、とってもゆったりした気分になれるんだ。
家だったらコーヒー片手に本を読むけど、ここでは本は本、飲み物は飲み物。杉村先生の文庫(私物)を読みながらカフェオレを待って、飲むときは本を閉じて飲み物に集中する。
このお店での、自分なりのルーティンみたいなつもりでやってる。
お小遣いにも限りがあるし、友達との付き合いもあるから、そうしょっちゅうは来られないけれど、それでも月に2回くらいはマスターの顔を見に来るようにしたら、常連っぽい人をちらほら見かけるようになった。
というか、マスターと親しそうに話しているから常連なのかなって思う。
◇◇◇
カウンター席に腰かけたきれいな女性が、「今日のコーヒー甘いわね?」と言った。
実はその人、前にも見かけたことがあって、ついつい気になって目で追ってたんだけど、冗談言っているのかと思った。
だってお砂糖はスティック2本も入れて、ミルクまで入れてるんだよ?甘くて当たり前じゃん。
そしたらマスターが少し驚いて、「あ、分かった?実はちょっとブレンド比率を変えてみたんだよね」なんて言ってる。
ということはあの人、お砂糖あんなに入れてもコーヒーの味がちゃんとわかっているの?違いのわかる大人のオンナってこと?
私はコーヒーの味は分からない。マスターが淹れてくれるから、このカフェオレが好きなだけだ。
優しいパステルブルーのボウルが、今日はちょっとだけ悲しい色に見える。
コーヒーの味が分かんないと、マスターとあんな話もできないんだもの。
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