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英明編【メグと大輔】
優秀な桜井
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本格的なミーティングは、その2週間後だった。
「えいめいジャーナル」は3カ月おき発行だから、即時性が必要な運動部の試合結果などより、じっくり読むインタビューや特集記事などに力を入れている。
「だから次の発行は7月ぐらいだ。お前、何か案は持ってきたか?」
「はい――本当に思い付きですけど」
「言ってみろ」
報道委員会室に現れたのは、桜井1人だった。
図書室の通常の仕事もあるから、うちの委員会とは事情が違うのだろう。
こっちも俺1人なのは、檜先輩が「俺も部活の方でちょっとな」と全部俺に丸投げしていった結果だ。
「今年の夏に、早坂みつる監督のアニメ映画が公開になりますよね?」
早坂といえば、外国でもひじょうに人気のある、日本を代表するアニメーション監督だ。
「ああ、去年ぐらいから話題になっているやつだな」
「あの原作がドイツのファンタジー小説ですけど、同じ作者の本、図書室に結構あるんですよ。だからその辺で何か特集できないかなって思うんですけど…」
「うん…ありきたりだけど悪くないかもな」
一応褒めたつもりだが、「ありきたり」なんて余計なことを言っちまった。
ラノベを含め、最近は本を読む人間がそもそも少数派だ。かく言う俺も、そう読んでいる方ではない。
アニメを絡め、ビジュアルから興味を持ってもらうのは確かに悪くないと思う。
思い付きという割に、桜井はその作家の本について、翻訳者と出版元が違う複数の装丁の本があることや、英語圏の子供のために英語で簡単に書かれたダイジェスト絵本もあること、モチーフになっているらしい中世ヨーロッパの魔女狩りなどについても調べ、几帳面そうな字でレポート用紙に書きつけてきた。
「これ…お前が全部やったのか?すごいな」
「あ、はは――ヒマだったんで」
「部活、入っていないのか?」
「一応手芸部ですが、週に1回か2回しか活動がないので」
「なるほどな…」
おとなしそうだが、こいつは掘り出し物かもしれない。
それこそ今からでも報道委員になってほしいくらいだ。
「お前はファンタジーが好きなのか?」
「実はよくわからなくて――だから必死で調べたというのもあります」
「なるほど。その意見は分かる気がするな。
俺はオカルト系が好きだから、情報収集しまくってるが、
結局「よく分からないことが多いから」っていうのはあるな」
「オカルト系ですか。あ、4月の新聞でUMAについて書いた “00”さんってひょっとして…」
「読んでくれたのか?あれは俺のだ。大倉大輔だから本当はD.O.だが、
“大”の字が2つって意味であのペンネームだ」
「かっこいいなって思ったんで、覚えていました。ふふっ」
自分の記事を読んでくれていた人間が目の前にいるだけでも感動モノなのだが、ペンネームまで覚えてくれていたとは。
「で、記事はどうだった?」
「小学生の頃大好きだった漫画に“チュパチュパカブラ”って生き物が出てきたんですけど、“チュパカブラ”って名前を見て、それの元ネタはこれか!ってうれしくなっちゃったり…」
と、桜井は記事の中で俺が名前を挙げたUMAについて、思い出すまま、思いつくままにいろいろ話してくれた。
俺の記事に桜井がどうこうというよりも、俺が桜井の話を聞いて、「そんなのがあるのか?」「ああ、そうとも言えるな」などと、いちいち発見があって、純粋に楽しかった。
◇◇◇
「ところで先輩――今日は1時間だけと聞いていますが、時間大丈夫ですか?」
時計を見上げると、想定した時間の10分前だった。
「そ、そうだな。このまとめを檜先輩に見せたいんだが、
いったん預かってもいいか?」
「はい、それでよければどうぞ」
「返すのは1-Dの教室でもいいか?」
「わざわざ来ていただくのも。次のミーティングのときでいいですよ」
「…そうか?」
最初はもじもじしていた桜井だったが、打ち解けると、けっこう茶目っ気もある。
次のミーティングも楽しみだが、とりあえず試しに言ってみようか…。
「お前は今日は部活は?」
「ありませんが…」
「じゃ、テニス部の見学に来ないか?結構面白いと思うぞ」
桜井はちょっとだけ、きょとんという顔をした。
見るやつが見たら、あざとく見える表情だろう(つまり、非常にカワイイ)。
「ええと、お邪魔じゃないんですか?」
「生徒のギャラリーは毎日来ているし、
応援された方がパフォーマンスの上がるやつもいる」
俺は、俺よりわずかに強い2年生エース、片桐玉青のヘラヘラした顔を思い出しながら言った。
「大倉先輩もですか?」
「俺は――騒がれるのは苦手だ。だからお前だけが見ていてくれれば…」
「え?」
「何でもない。1年なんだから、何でも勉強だと思ってきてみろよ」
「そうですね」
「えいめいジャーナル」は3カ月おき発行だから、即時性が必要な運動部の試合結果などより、じっくり読むインタビューや特集記事などに力を入れている。
「だから次の発行は7月ぐらいだ。お前、何か案は持ってきたか?」
「はい――本当に思い付きですけど」
「言ってみろ」
報道委員会室に現れたのは、桜井1人だった。
図書室の通常の仕事もあるから、うちの委員会とは事情が違うのだろう。
こっちも俺1人なのは、檜先輩が「俺も部活の方でちょっとな」と全部俺に丸投げしていった結果だ。
「今年の夏に、早坂みつる監督のアニメ映画が公開になりますよね?」
早坂といえば、外国でもひじょうに人気のある、日本を代表するアニメーション監督だ。
「ああ、去年ぐらいから話題になっているやつだな」
「あの原作がドイツのファンタジー小説ですけど、同じ作者の本、図書室に結構あるんですよ。だからその辺で何か特集できないかなって思うんですけど…」
「うん…ありきたりだけど悪くないかもな」
一応褒めたつもりだが、「ありきたり」なんて余計なことを言っちまった。
ラノベを含め、最近は本を読む人間がそもそも少数派だ。かく言う俺も、そう読んでいる方ではない。
アニメを絡め、ビジュアルから興味を持ってもらうのは確かに悪くないと思う。
思い付きという割に、桜井はその作家の本について、翻訳者と出版元が違う複数の装丁の本があることや、英語圏の子供のために英語で簡単に書かれたダイジェスト絵本もあること、モチーフになっているらしい中世ヨーロッパの魔女狩りなどについても調べ、几帳面そうな字でレポート用紙に書きつけてきた。
「これ…お前が全部やったのか?すごいな」
「あ、はは――ヒマだったんで」
「部活、入っていないのか?」
「一応手芸部ですが、週に1回か2回しか活動がないので」
「なるほどな…」
おとなしそうだが、こいつは掘り出し物かもしれない。
それこそ今からでも報道委員になってほしいくらいだ。
「お前はファンタジーが好きなのか?」
「実はよくわからなくて――だから必死で調べたというのもあります」
「なるほど。その意見は分かる気がするな。
俺はオカルト系が好きだから、情報収集しまくってるが、
結局「よく分からないことが多いから」っていうのはあるな」
「オカルト系ですか。あ、4月の新聞でUMAについて書いた “00”さんってひょっとして…」
「読んでくれたのか?あれは俺のだ。大倉大輔だから本当はD.O.だが、
“大”の字が2つって意味であのペンネームだ」
「かっこいいなって思ったんで、覚えていました。ふふっ」
自分の記事を読んでくれていた人間が目の前にいるだけでも感動モノなのだが、ペンネームまで覚えてくれていたとは。
「で、記事はどうだった?」
「小学生の頃大好きだった漫画に“チュパチュパカブラ”って生き物が出てきたんですけど、“チュパカブラ”って名前を見て、それの元ネタはこれか!ってうれしくなっちゃったり…」
と、桜井は記事の中で俺が名前を挙げたUMAについて、思い出すまま、思いつくままにいろいろ話してくれた。
俺の記事に桜井がどうこうというよりも、俺が桜井の話を聞いて、「そんなのがあるのか?」「ああ、そうとも言えるな」などと、いちいち発見があって、純粋に楽しかった。
◇◇◇
「ところで先輩――今日は1時間だけと聞いていますが、時間大丈夫ですか?」
時計を見上げると、想定した時間の10分前だった。
「そ、そうだな。このまとめを檜先輩に見せたいんだが、
いったん預かってもいいか?」
「はい、それでよければどうぞ」
「返すのは1-Dの教室でもいいか?」
「わざわざ来ていただくのも。次のミーティングのときでいいですよ」
「…そうか?」
最初はもじもじしていた桜井だったが、打ち解けると、けっこう茶目っ気もある。
次のミーティングも楽しみだが、とりあえず試しに言ってみようか…。
「お前は今日は部活は?」
「ありませんが…」
「じゃ、テニス部の見学に来ないか?結構面白いと思うぞ」
桜井はちょっとだけ、きょとんという顔をした。
見るやつが見たら、あざとく見える表情だろう(つまり、非常にカワイイ)。
「ええと、お邪魔じゃないんですか?」
「生徒のギャラリーは毎日来ているし、
応援された方がパフォーマンスの上がるやつもいる」
俺は、俺よりわずかに強い2年生エース、片桐玉青のヘラヘラした顔を思い出しながら言った。
「大倉先輩もですか?」
「俺は――騒がれるのは苦手だ。だからお前だけが見ていてくれれば…」
「え?」
「何でもない。1年なんだから、何でも勉強だと思ってきてみろよ」
「そうですね」
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