【番外編集】てんどん 天辺でもどん底でもない中学生日記

あおみなみ

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南原優香

親友・桐野まつりについて

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 合唱部では、ほかの小学校から来た桐野まつりという子と仲良くなった。
 小柄できゃしゃな体つき、見ていると心が温まるような笑顔の持ち主で、私とは正反対の「かわいい子」というのが第一印象だった。
 さらに、恥ずかしがり屋でちょっとおどおどしているけれど、私の(ほかの人には)通じにくい冗談でよく笑ってくれて、すぐ「ああ~っ、いい子だなー」って思った。

 私のことは、かぶりにくい苗字ということもあって、今まで「南原さん」って呼ぶ子が圧倒的に多かった。
 まつりも最初はそんな感じだったけど、思い切って「優香でいいよ」って言ったら、鈴を転がすような声で「ゆうか」って呼んでくれるようになった。
 当然私も彼女のことを、「まつり」と呼ぶようになった。

 まつりには、めちゃくちゃ美少年で優等生の幼馴染がいる。
 そのせいで、一部女子からの風当たりが強いらしいけれど、私の見るところ、その幼馴染君こと斉木さいきれい君の方が、ずっとまつりにご執心のようだ。
 父と母の件もあって、人間観察には慣れているから、そういうのって何となく分かる。

 それはいいんだけど、中学校の合唱部でも、私は見事に浮いてしまった。
 私の声はどう頑張っても「声の固まり」の中に入れてもらえないらしい。少しミスをすると悪目立ちしちゃうし、ミスしなくても、「南原さんが歌っている声が」という、わけのわからないの駄目出しをされた。
 先輩AさんとかBさんとか、ミスってる人は結構いるんだけど、そっちはスルーっていうのもちょっと気になる。
 そこで声量を抑え目にしてみたら、「真面目にやる気あるの?」と言われたとき、「あ、こりゃあかん」と思い、退部を決意した。
 残念だけど、ここは私の居場所じゃない。合唱が駄目というよりも、多分この部活が駄目なんだろう。

 時を同じくして、まつりもだんだん部活で居心地が悪そうな態度を取るようになった。
 彼女は声質もきれいだし、音程も正確だし、図抜けた声量で他人の邪魔をすることもなかったんだけど、親睦と称して同じメゾソプラノの人たちと行ったカラオケで、結構な集中攻撃を受けたという。
 まつり本人からじゃなくて、攻撃した側の子が私のクラスにいたから聞いちゃったんだよね、「ボカロかよww」みたいなあざけりを。

 愚かよね。プリンス斉木のお気に入りをいじめて溜飲下げるだけとか。
 私がもし斉木ファンだったら、まつりに取り入って、斉木君とお近づきになる方法をとるな。
 結果、いい子だから普通に友達になっちゃうだろう。

▽▽

 斉木君はお母さんとの約束で塾に通う必要があったらしく、部活βベータαアルファに比べ活動が緩め)の「ゆうゆうじてき部」というけったいなところで活動しているんだけど、まつりから伝え聞く話だけでも、なかなか楽しそう。

「ねえ、いっそ私たちもそこに転部しようか?」
「え…でも…できるかな?」
「どうせ合唱の方は私たちがいなくても人数足りてるし、いなくなっても困らないでしょ」
「それはまあ…」
「で、ゆうゆうじてき部の顧問は河島先生だよ。あの先生なら分かってくれそうじゃない?」
「うーん、まあ言われてみると…」
「まつりが迷ってるなら、私だけでも先にやめちゃうよ?1人出ていった後だと出づらくなるんじゃない?」
「そんな囚人の脱走みたいな…」

 ということで、私とまつりはそろって退部届けを出した。
 一応表向き(兼皮肉)の理由は「皆さんのレベルについていけない」だった。
 当然、先生や部長は「もうちょっと頑張ってみない?」などと言うけれど、別に本気で引き止めたいほどの逸材とは思われてもいないだろうし、ひたすら「スンマソン」って下手したでに出て乗り切った。

 対して、受け入れ側の河島先生は歓迎してくれたし、「お、片山姉妹結成か?」だって。
 私たちがちょっとふざけて言っていた「阿佐ヶ谷あさがや姉妹ならぬ片山姉妹になってお揃いのドレス着て部室で歌おう」って話、実現しちゃったりして。
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