【番外編集】てんどん 天辺でもどん底でもない中学生日記

あおみなみ

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南原優香

“あんなこと”の後も、中学校生活は続く

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 部活やりたくないorできない人が何となく在籍する「β」らしくというか、2、3年は、とりあえず在籍だけしてますって人がほとんどだ。
 だから、やたら熱心な斉木君と、まつりと同じクラスの喜多川君って子が、1年生ながら実質取り仕切ってる感じだった。
 喜多川君は明るくて食いしん坊で、弟にしたいかわいいタイプだけど、実際には小さな弟や妹の世話をすることも多く、ガチ部活ができないのだそうだ。
    クラスメートであるまつりに対して、少なくとも悪い感じは持ってなさそうだけど、そもそも「斉木が好きな子に手出せるわけない」という自制が働いてると見た。
 うんうん、いいぞ。分かっているじゃん(←何様ナニサマだよ…)。

 結果的に、私たちが入部してから活発になったと言って、河島先生も喜んでくれた。
 私たち4人はテスト勉強も一緒にしたし、休みの日も行動をともにすることが多かった。
 部活というより、周囲には楽しいグループ交際みたいな感じに映ったろう。

▽▽

 そして、2011年3月11日午後2時46分。
 あの忘れもしない、忌まわしい東北太平洋沖地震発生のときも一緒の場所にいた。厳密に言うと、3年生の卒業式の後、一緒にショッピングモールに遊びにいったんだった。

 ちょうど発生時刻には書店にいた。
 まつりと私がラノベコーナー、喜多川君が漫画コーナーと、お互い目の届くところにいたんだけど、斉木君だけ少し離れた別のコーナーにいて、避難誘導で落ち合った感じ。
 あのときの斉木君、頭の中にまつりのことしかないのが丸わかりの振る舞いだったんで、「リーダー、私たちも無事でーす」って言ってやったら、ちょっと冷静になった(笑)。

 自分の家に帰ったら、家の中で、高いところや不安定なところにあったものが落ちた程度で、建物の被害はなかった。
 でも、父が心配して駆けつけたのにはちょっと感激した。
 たまたま仕事が休みで、うちの近くのマス釣り場に遊びに来ていたらしい。

 いろいろ情報が取りたかったのでラジオだけつけて、「相変わらずのんきだねえ」「お前はまた背が伸びたな」なんて話をしながら部屋の中を片付けていたら、かなり遅れて母が帰宅。父からバトンタッチして帰った。

 母は「優香と一緒にいてくれてありがとっ」とボソッと言った。

 この2人、友達だったらうまくいったんだろうけど、友達で終わってたら私は生まれていなかったわけで、複雑である。

▽▽

 いろいろ不安は多いけれど、とにもかくにも2年生になった。4人一緒のクラスになって、担任が河島先生になって、おまけに転校生まで来た。
 しかもその転校生・日高ひだかがまつりを気に入って、我が部に入部しちゃった。
 部活は一層にぎやかになって結構なんだけど、斉木君が日高に敵愾心てきがいしん丸出しなんだよね。
 で、斉木君は斉木君で、日高がまつりに馴れ馴れしい態度を取るたびにピリピリしている。
 あんなにゆとりのない斉木君、なかなか見られない。

 もっともそれは、日高の出現だけが原因じゃないかもしれない。
 斉木君のお母さん、地震津波で起きた県内の原発事故の後、ちょっと面倒くさい人になっちゃったようだ。そういうのも無関係とは思えない。

  私が母に「放射能とか心配じゃない?」って聞いたら、こんな返事だった。

「そりゃ心配だけど、素人がどうこう言ってもねえ…日本ってそんなにいろいろ隠蔽できる国とは思えないし、とりあえず私は公式発表を信用してるわ」

 少しでも被曝ひばくを抑えるんだって躍起になるより、気楽に好きなことして、精神衛生をいい状態に保ちたいってさ。というか、無意味な変化を避けたいというのが本音かもしれない。
 正直私は「母がで本当によかった」と思った。

 だって斉木君のお母さんは、給食センターに事細かく食材について問い合わせたり、「うちの子には牛乳を飲ませないで」と学校に頼んだり、弁当持参の許可を取ろうとしたりしたらしい。

 それを斉木君のお父さんが「もし妻が給食費支払いを拒否することがあれば、私に直接請求してください」と言って、大もめにもめて、まあ何とか普通に給食は食べられるようになったんだけど、次に「体内にたまったセシウムを排出するため」と称して、何たらペクチンとか、あやしげな(といったら失礼かもだけど)サプリを大量に買ったとか何とか。
 あのマメさと財力がないと無理だな。うちの母が成り行き任せなのも分かる。

 その大騒ぎの中で、心のよりどころが、まったり幼馴染のまつりだってのはめっちゃ理解できるし、それを横取りしようとしている(ように見える)日高に目を光らせるのは無理もない。
 放射能がどうのって話題になると、斉木君は目に見えて不愉快そうな顔をした。
 まつりがうっかりそんな話題を出した後、「ごめんね、レイ」って謝ったら、「まつりちゃんが悪いんじゃないよ」って、頭ぽんぽんしたり、見せつけてくれるよね。
 こちとら盛り上げ要員として、「おー、イケメンの特権。頭ポンポンいただきました!」などと言うしかないでしょ。

▽▽

 夏休みあたりに何やらひと悶着あり、どうやらそのお騒がせお母さん、自分の郷里に帰ったらしい。

 斉木君は「両親はいずれ離婚するかもしれないけど、俺は父と姉と行動をともにするつもりだから、ずっとここにいるよ」って言った後、日高に向かって「すまないな」って挑戦的に。なかなか言うねえ。

 決して幸せ百点満点って状況ではないだろうけど、斉木君は相変わらず成績の方は学年トップ(結果は貼りだされないから推定)。地頭がいい上に努力家だからね。
 まつりとは、夏休みに2人だけでデートしたらしい。勉強も恋もって、どこぞの通信教育のPR漫画かよ。
 それに日高が空気読まずに「ずるい~俺も~」ってうるさかったので、一発小突いておいた。
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