【R18】Jasmine 俺のカノジョはとびきり魅力的で――飛び抜けてインランらしい

あおみなみ

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第11話 ほくろ【私】

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「おじさん」の、思いがけない置き土産

◇◇◇

 新婚旅行でできたらしい赤ちゃんが流れてしまった後、カレシ改め夫は本当に丁寧に私を抱くようになった。

 ダブルベッドに入り、2人でそれぞれ小説や雑誌を読んでゆったり過ごすが、どちらかが眠たくなると、『ねえ…』と言い、部屋の電気を消して絡み合う。

 ある夜彼は、『私の女神』を手に持っていた。
 私が少し忘れかけていた、「おじさん」がものした小説である。

 私の官能に火をつけまくり、どろっどろに甘やかし、去っていってしまった、多分あんまり売れていない小説家。
 この人との営みをそのまま綴っただけでも、結構いい感じの官能小説になりそうだけれど、本職である「おじさん」に先を越されたので、私はおじさんからの献本を、しばらくオカズにしていた。

「これ、君のでしょ?」
「え?ああ、タイトルに惹かれたんだけど、思っていたのと違って」
「へえ。じゃ、面白くなかったの?」
「でもないけど…エッチなシーンが多かったかな」
「へえ。読んでいい?」
「…もちろんいいけど、気に入るかどうかわかんないよ」

◇◇◇


「お、これはなかなか…来るね…」

 15歳の「ありさ」が、42歳の「高藤」にねちっこく攻められ、我を忘れて幼い喘ぎ声を上げるシーンは、やはり想像力をかき立てられるのだろう。

「でも、こういうので反応するのって、イケないことをしている気分になるね。少女を犯しているみたいな」
「実際にそういうことをしないで済むように創作物があるんじゃないの?漫画とか映画とかね」
「ああ、そうか。なるほどね」

 私たちが大学生の頃、「M」という男による連続幼女誘拐殺人事件が起き、日本中を震撼させた。
 犯人の男はおびただしい数と広範囲にわたるジャンルの漫画、雑誌、ビデオを所有していたのだが、なぜか「漫画やアニメが好きないわゆるオタク」だと言われ、ごく普通にオタク趣味を持つ人間までが犯罪者予備軍のように言われたようだ。

 でも実際のところ、創作物に書き記すだけなら、殺人だろうが詐欺だろうがレイプだろうがおとがめなしだし、書いた人間も読んでいる人間も、大多数は、実際にそういうことをしたいと思っているわけではない。
 善良で温厚な一般ピープルだって、猟奇的なもの、残虐なもの、反社会的なものにひどく惹かれてしまうことってあるでしょ。だから人間は面白いんだし。

 19歳の私が40歳独身のおじさんと「愛し合った」こと自体は、罪でも何でもなかったけれど、何も知らないこの人が、それを題材にした小説を読んで「興奮するね」と言ったことで、やはり少しだけ罪の意識が芽生えた。

 ただそれさえも、いざとなれば、かつての浮気相手からの突然の電話を持ち出し、「あなただって似たようなことしていたじゃない」と開き直ることができる。
 あの電話を受けたときは、少しの驚きと、カレもやっぱりオトコだったんだなという妙な感心と、別れたいと言われたら受け入れようという覚悟だけだった。

「この高藤みたいに君とかな…」
「…試してみれば?」
「これ、描写がすげえ詳しいよね。セックスマニュアルかって感じ」
「あ、あん…」

夫は後ろから唐突に、耳たぶを甘がみしながら、乳首をつぶすように胸に手を這わせた。
あまりにも性急すぎて、ちょっと笑えてくる。

「あれ…?」
「どうかした?」
「君ってありさと同じ位置にほくろがあるんだね」
「え…」

 私の心臓はこのとき、生まれて初めて「早鐘を打つような」という表現がぴったりの状態になった。予想外のことに動揺してしまったようだ。夫が胸から手を離した状態でなければ、気付かれていたかもしれない。

「自分のほくろなんて、見えない位置にあったら一生気付かないよ」
「そりゃそうか。うなじの右側の部分にあるよ。何だかありさを抱いているような気分になっちゃうな」
「もう。若い子の方がいいの?スケベおじさん」
「架空の人物に妬くなよ。君の方がずっと素敵だよ、きっとね」
「ん…」

 私が本を読んでいる間、ずーっと私の乳房ばかりいじっていたあの人を、「スケベおじさん」って、からかったことを思い出した。

 今どこでどうしているか分からない。
 出版社気付で手紙を送ることもできたけれど、なぜかそうする気にはなれなかったのは、別れも言わず去っていった「おじさん」が、それを望んでいないだろうと思ったからだ。
 今、どんな女性を抱いているのだろう。

 そう考えると少しだけ妬けるけれど、高藤のようにありさを抱こうと汗をかいている夫に身をゆだねるのが、妙に心地いい。

 初体験が近親相姦、しかも自分が望んで飛び込んでいったほどの私だから、カレシがいる状態でほかの男と寝ることに、正直言ってさほどの罪悪感はなかった。
 しかし結婚したとなると話は別だ。
 さすがに貞淑でいなければと、しごくまっとうなことを、少なくとも最初のうちは思っていた。
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