【R18】Jasmine 俺のカノジョはとびきり魅力的で――飛び抜けてインランらしい

あおみなみ

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第25話 【番外編】恋文の日

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※5月23日、「恋文ラブレターの日」に書いた番外編です。

 ◇妻◇

「最近、食欲もないし、顔色も悪いようなので、心配しています。

 実は今朝、生理が来ました。妊娠に結びつかなかったみたいです。
 ちょっと残念だけど、仕切り直しましょう。

 お仕事やお付き合いは仕方ないけれど、たまにはオウチで飲みませんか?
 職場の人に、カンタンでおいしいおつまみのレシピを幾つか教えてもらいました。いろんなお酒に合うそうです。

 XXX(ちゅっ)」

 クリーム色の便せんに、ブルーブラックのインクで書かれた手紙。
 弁当箱のふたの上に載せ、バンダナで包んだが、置いていかれてしまった。
 忘れたのか意図的かは不明。

◇T◇

「今日は役所に用事があるので、“半休”を取る予定です」

 真っ白いメモに、青いボールペン。
 やたら角ばった字で書いてあるのは、筆跡を隠す意図か。

◇◇◇

「なあ、メモの書き方、何であんな字だったの?」
「ああ――もしあなたが落っことしても、誰が誰に宛てたかわからないようにって」
「でも、君が早退したことはみんな知ってるし…」
「だから私、朝からこれ見よがしに気持ち悪そうな顔して、体調不良の早退を装ったのにな」
「なるほど…」
「そうすれば、あのメモをあなたが落としたとしても、奥様か誰かの伝言だって思うんじゃない?」
「なるほど――女ってそこまで計算するもんなんだな。ちょっと怖いよ」
「だからいいんでしょ?んふっ」

 「女」なんて言う必要もないのだが、つい妻の顔が頭にちらついて、そんな言い方をした。
 Tはあまり気にしていないようで、俺の上にかぶさるようにしてキスをしてきた。
 何を飲んだか“一口”で分かる。
 アルコールが入ると積極的になるのは、妻と同じか。

 俺は終業とともにそそくさとTの部屋に向かった。
 午後から帰ったので、手の込んだ牛肉の煮込み料理を作って待っていてくれた。
 こういうのは香草――ブーケガルニ、だっけ?――とかも特殊で高価なはずだ。
 料理はよく知らないが、職業柄聞いたことがある。門前の小僧ってやつだ。
 材料費大変だったんじゃないかな。
 
 俺が来なかったら、どうするつもりだったのか。
 正直な話、妻の料理の方がずっとうまいが、その気持ちがうれしい。

 それに、どんなにカクカクに書いても、やはり女っぽい雰囲気が少し残った字。
 妻ならもっと…と考えて、誰に対してだか分からない罪悪感が湧いた。

 Tは珍しく飲み過ぎたようで、上機嫌で俺と絡み合いった後、会話ピロートークが徐々にぼんやり頼りなくなっていったと思ったら、そのまますっと寝てしまった。

 化粧を落とした顔は、少しあどけなくて、いじらしい感じがする。
 でも、妻はもっと…。

 電話機の脇に置かれた分厚いメモから1枚ちぎり、ボールペンでメッセージを書きつけ、ベッドサイドのテーブルに置いていった。

「ごちそうさま、美味かった。
 料理のお礼はまた今度」

 具体的には何も考えていないし、正直実行するかも分からない。
 終バスは逃したが、タクシーで、日をまたぐ前に家に帰れそうだ。
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