【R18】Jasmine 俺のカノジョはとびきり魅力的で――飛び抜けてインランらしい

あおみなみ

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第27話 土曜日【妻】

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 夫が「用事がある」とだけ言い残して出かけた。
 今日は野球チームの練習もない――というよりも、実は最近サボりぎみなのを知っている。

 ユニフォームと道具を持って車で出かけたのに、次回の練習日程について、夫の不在中に電話で言伝を頼まれた。
 『このたびは親戚にご不幸があったそうで…』と言われ、「あ、縁はかなり遠いんですけど、個人的に親しかったので」と返してしまう自分のノリの良さが呪わしい。
 でないと、やれ弔電だ香典だ忌引き休暇だって話をされそうだったから。
 会社絡みのオツキアイは、結構デリケートだ。

 夫が私にもチームにもうそをついたのは、ここのところの何度かの無言電話と無関係ではないのだろう。

 土曜日で練習がないというだけで、今日の外出だって…。

 私は彼の不貞を責められるほどご清潔な妻ではない自覚がある。
 だから今のところはしらばっくれている。
 “やらかし”は全部、結婚前のことではあるけれど、彼に対して不誠実だったことに変わりはない。

 もし離婚したいと切り出されたら――まあ、応じるしかないよね。「一緒にいたくない」と言われて「私は一緒にいたい」とすがるのは、ただの嫌がらせでしかないし、コンコルド効果でもないけれど、早いうちに決断した方が傷も浅い。
 無言電話の主、夫との関係――あたりをあぶりだせれば、私から離婚を切り出せるわけだけど、それをする気になれないのは、「別に夫と別れたいと思っているわけではない」からだ。だから向こうがどう思っているのかを観察中というだけ。

 あまりにも淡々としている自分に少し呆れた。

 洗濯しながら簡単に掃除をし、自分の下着以外のものをベランダに干したら、「するべきこと」がなくなってしまった。
 お昼も1人だから、つくろうか、買ってこようか、外食か。
 昔よく出前を頼んでいた食堂は、ご主人が引退して、お店も畳んでしまった。

 映画青年Mを避けようとするあまり、図書館方面への散歩は控えていた。
 「ジョルジュ」のコーヒーも好きだけど、うっかり飲みにいったら、彼にばったり会いそうだし、マスターにも話を振られる可能性がある。

 自転車で適当に流して、気の向いたところで何か食べようかな?などとも考えたけれど、頭にある風景が浮かんだ。

 名前忘れたけど「なんちゃら渓谷」の探勝路、短いつり橋――隠れ家のような家。
 「おじさん」とセックスしたあの場所いえは、今どうなっているだろう。

 19歳で初めて彼に抱かれて、“お別れ”した後、いろいろ思い出すのが辛くて避けていた。
 当時は一応、「浮気はもうやめなさいってことだよね」と、けじめをつけたつもりだったけれど、今ならそれが分かる。

 私はあのときたしかに「おじさん」と愛し合っていたのだから。

◇◇◇

 ここに来たのは何年振りだろう。
 実際せいぜい5、6年ってところだし、そんなに変化があるわけでもない。
 「入居者募集」の表示はなく、掃き出し窓に淡いグリーンのカーテンが閉まっているのが見える。つまり人の住んでいる気配はあった。

 今よりもっと若くて生臭かった頃、この家の至るところで自慰と性交を繰り返したことを思い出すと、さすがに現住民に申し訳なくなった。

「やっと来てくれたか、赤ずきんちゃん…」
「え…?」

 低音の、耳にまとわりつくような声にはっとして振り返ると、おじさんが立っていた。

「どうして…?」
「まあ入ってくれ。お茶くらいは出そう」

◇◇◇

 おじさんはあの小説を出した後、まだ借り手がついていなかったこの家を買い取って、こちらに生活の拠点を移したという。
 私は大学卒業まで実家にいて、その後アパートで夫との2人暮らしを経て、また戻ってきた、わけだけど。
 
「君は――結婚したのかな、あのかわいらしい青年と」

 おじさんは、スーパーに2人で買い出しに行く私たち夫婦を時々見かけるという。

「かわいらしいって…」
「小柄でかわいい顔していて、俺みたいに薄汚いオッサンじゃないからね」
「彼――高校時代からの付き合いで、大学を卒業してすぐ結婚したんです」
「そうか。君は俺に抱かれていないときは、彼に抱かれていたってこと?妬けるな…」

 この家に足を踏み入れて、テーブルを挟んでおとなしくコーヒーを飲むだけ――で済むわけがない。
 おじさんは私の隣に座り直し、フレアスカートに手を入れて、ももを撫で始めた。

「おじさん、私もう人妻なんだけど…」
「そんな、余計にソソることを言って――そんなに欲しいのかな?」

◇◇◇

 まだ(一応)10代だった私に、「男と寝てるかい?」とささやいてナンパしてきた「おじさん」。
 おじさんとは密室でセックスし、色っぽい会話を交わすだけの間柄だったし、再会して“しまった”以上、それを繰り返すだけだ。

「少し体つき…大人っぽくなったかな…」
「う…ん…」

 この状況でお風呂に入るのは得策ではないと想像もしたけれど、それでも、「体中を洗ってもらう」という前戯を施してもらうことを選んだ。

 大きくて触感が抜群の海綿スポンジも、ボディーソープの香りもあのときのまま。
 おじさんが大きな手でそれを使い、私を隅々まで洗ってくれた。
 「おっと、手が滑った」なんてふざけた調子で言いながら、指がじかに乳首やアソコに触れたりもする。

 泡をシャワーで流した後、私をいすに座らせて、手を握りながら正面からキスをしてきた。
 唇はそこから頬、首、鎖骨をつたい、胸をとらえる。

「君は――いつ食べても本当に美味いね…」
「あ…ん…」
「もっとその声、聞かせて。俺の耳にも“ごちそう”をくれよ…」

 こんな手順やセリフまで、あのときのままだ。

「お願いが…二つ…あるんだけど…」
「何でも…言いなさい」
「まず――足にキスして…」
「言われなくてもするつもりだったよ。もう一つは?」
「私をこの場で抱いて…」
「そういえばバスルームではシたことがなかったね。じゃ…」

 おじさんが避妊具を取りにいこうとしたのが分かったので、私は止めた。

「あの――ゴムはいいわ。そのまま…」
「え、だって…」
「私、その、妊娠しにくいみたいで…」

 自分がどれだけリスキーなことを言っているかは分かっているが、「おじさんそのもの」を味わいたい、そんな気持ちが勝ってしまったみたいだ。

「君は…何て目で見るんだ…そんな顔されたら、逆らえないよ」

 自分の挙動が、表情が、どうやらおじさんの余裕を奪い取っているみたいだ。
 そして、そんな状況に私自身も興奮する。

 おじさんは私の足を取ると、両方の小指を軽く指でなぞり、それぞれに軽くキスをした――ばかりか、指の1本1本を丁寧になめ始めた。

「え…あ…の…」
「気持ちよくない?」
「えと…よくなく…ない」

 それ自体がどうのというよりも、「こんなことまでさせてる」的なすさまじい背徳感が、快感を増幅させている感じ。
 私のたどたどしい返事を軽く鼻で笑いながら、そのまま唇を足首、すね、ひざ、ももの順に滑らせ、脚と脚のあいだのアノ部分に到達した。

「ここは特に念入りにしなくちゃね」

 そう言うと、太くて長い指でこじ開けるようにしながら刺激し、舌を入れてきた。

「あ、ああん…きもち…いい…」

 私のはしたない声に応えるように、なお攻めが深く執拗になるのが分かる。

「もっと、もっとぉ…あ…ん…」
「もっと気持ちよくしてあげたいけど…俺の方も限界みたいだから…ね」

 おじさんは私の股間から顔を離し、ゆっくりと床に私を組み敷いて、「行くよ」と言いながら入ってきた。

「あ、あ、ああっ」

 どんな女も多分、どんな状況でセックスしたとしても、ある程度の演技はすると思う。
 例えば「良すぎて」白目をむくような表情になっていたら…なんて思ったら、さすがになけなしの自制心が働くというものだ。
 何しろ相手は「セックスしてもいい」程度には思える人なのだから、そんな表情を見せるのはさすがに恥ずかしい。

 でも私は、感じるままに反応した。
 気持ちいいから声が出るし、どんな顔になっているか分からないけれど、多分知性もへったくれもない、いろいろ「丸出し」の表情だろう。
 そして、おじさんになら見られても構わないと思った。

「その顔…本当に君は…」

(帰したくなくなる…)

 耳元でそうささやかれた。
 セックス真っ最中なら結構言うようなセリフかもしれないけれど、おじさんの声音に一瞬ギクッとした。

 ここに閉じ込められて、ずっとおじさんに抱かれ続ける?
 それは何と恐ろしく――素晴らしいことだろう。

「もっと…ほしい…おく…」
「随分インランな…赤ずきんちゃんだね…」

 おじさんは相変わらず偉丈夫で、「おじさん」なんて呼ぶのが申しわけないほど若々しい。

 体勢をバックに切り替え、「ほら、ほら、これでどうだい?」と得意げに突き上げて、聞えよがしにパンバンと反響させた。

 どちらかというと小柄な私と、大きなおじさん。長い腕の一本は私の腰を押さえ、もう一本は胸元を巧みに刺激した。

 おじさんにヴァギナを舌で攻められていたときから、さざ波のような快感は断続的に走っていたけれど、奥まで突き上げられ、昇り詰める感じがこみあげてきた。

「もう…だめだ…いく…よ…」
「う…ん…」

 おじさんはそのまま私の中に放出してしまった。
 とんでもないことをしてしまったかもしれないが、不思議なほど後悔はなかった。

◇◇◇

 「夜になる前に帰る」という夫の言葉を思い出しながら、私はベッドの上でも「おじさん」に体中を愛撫され、突き上げられ、心赴くままに声を上げた。

 セックスのあとのまどろみ以上に気持ちいいものはない。
 もしこのまま、朝まで目が覚めなかったら――と思いつつ、私は目を閉じた。

 加齢臭とも香水ともボディーソープとも違う、「おじさん」のにおいに包まれると、いろいろと麻痺してしまうのが分かる。

 こんなセックスは、夫との間では到底望めない。
 雑に言うと、「もうどうなってもいい」と思ってしまうほどの快感なのだ。
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