【R18】Jasmine 俺のカノジョはとびきり魅力的で――飛び抜けてインランらしい

あおみなみ

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第40話 昼からお風呂【妻】

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 娘は目が半開きの状態だったが、それでも食べているうちにお腹が空いていたのを思い出したようで、「この、お代わりできる?」と聞いた。

「フレンチトーストのこと?」
「そう、そのトースト。ジャムもいっぱいつけて」
「もうイチゴジャムないよ。マーマレードならあるけど」
「マーマレード、苦いからきらい。ホットケーキのときのやつは?」
「ケーキシロップもないなあ…あ、じゃ、これはどう?」

 私はコーヒーや紅茶のときに使う、スティック状のグラニュー糖の封を切って振りかけた。
 すると、殊のほかお気に召したようだ。

「あまーい、おいしー。これもう一枚」
「サラダのトマトもちゃんと食べたらつくってあげる」
「わかったよー」

 食べながら会話をしているうちに、徐々に目が覚めてきたようで、「いつもの娘」に戻っていった。

 その様子を見て、これからでも学校に行かせようかと思ったほどだったが、昨日の話を聞こうとすると、なぜか顔が曇り、煮え切らない感じになってしまう。

 娘を迎えにきた「おじさん」は、その日の朝、登校班の集合場所で初めて会った人だという。

「登校班?ひとりだったの?」
「早くいっちゃったから、誰も来てなかった」
「そう…」

 いろいろ想像してみれば分かる。
 多分数分の間とはいえ、1人だったのだろう。

 背が高く、「お母さんの友達で、お母さんのことは何でも知っている」というおじさん。
 娘はその初対面の人に気を許してしまった。
 
「おじさんが、お母さんに頼まれて迎えにいくって。困ったときはお互い様で、パパとママもそれよく言っているっていったら、いいパパとママだねって言って、優しそうで…」

 まだ幼く何かと未熟だが、もともと賢い子だ。
 自分の失敗を自覚した上で、何とかそれを取り繕おうとしているのだろう。口数が無駄に多くなっている。

「そうか。おじさんだったんだね」
「うん、そう思った」
「そうか。次からは気を付けてね。残念ながらお母さんには、そのおじさんが誰だか分からないわ」
「お友達じゃないの?」
「多分違うね」

***

 娘はそれ以上は積極的に話そうとしなかったが、今後のためにも詳しく聞いておかなければならないことは分かる。
 私は詰問口調にならないようにだけ気を付けて、「迎えにきた後」の話を聞いた。

「公園に行った。で、ベンチに座ってポテチとサイダーくれたの」
「どこの公園?」
「行ったことないとこ。学校からはそんなに遠くなかった」
「うーん…」

 「緑いっぱい計画」とやらで、ここのところやたら市内にちびっこ公園やら緑地やらがつくられているが、私たちの住む地域も例外ではなかった。
 ベンチと滑り台とブランコがある小さなスペースなんて、思いつくだけでも5カ所はある。

「公園で食べたの?その後は?」
「わかんない…」
「わかんない?」
「寝てたから」
「寝てたって…」
「なんか急に眠くなっちゃって」

 そして目が覚めたら自分の家の前に来ていて、呼び鈴を押していたらしい。
 
(ひょっとして、飲み物に入れられた?)

 もしも「犯人」が、実は私のよく知る「知らないおじさん」だとしたら…。
 小さな子供にそんなまねをする人であってほしくはない。
 しかしそれは、ただの私の願望でしかないのも事実だ。

 娘は例の洋服に着替えさせられてはいたが、危害を加えられたわけではなく、とにかくこうして無事に戻ってきた。
 電話や郵便のコンタクトが具体的にあったわけではないので、何らかの目的で誘拐したとしても、その動機も手段も何もかも、いろいろとぼやけてしまう。

(危害…本当に加えられていない…の…?)

 「あの人」は、まだ幼かった頃の私を知っていたし、劣情をかき立てられたような思いを隠しもしなかった。
 まさか、娘をあの頃の私に見立てて…?

(いやいやいや、さすがにそれは…)

 否定したいが、否定しきれない。
 仮に何もなかったとしても、娘を眠らせ、洋服を着替えさせたのは、間違いなく「あの人」だろう。
 想像してしまうと、その異様さにぞっとする。それは吐き気も引き起こした。

「ママ、大丈夫?」

 トイレに立った私に、ドアの向こうで娘が心配そうに声をかけた。

「大丈夫だよ…ありがと」

***

 私の性のめざめは、兄との「関係」だったから、中学生のときだった。
 自分がそれよりも幼かった頃、エロチックな知識があったり、何らかを妄想していたという記憶はない。

 それでいて、19歳のときだったか。
 「あの人」が幼い自分によからぬ妄想を抱いていたという告白を聞き、自分の未成熟な体が、あの魅力的な大人の男に蹂躙されているのを想像し、興奮したことは否定しない。

 ただ、それは「自分の」体であり、ただの「妄想の中の出来事」だからだ。

 もしも最愛の娘を辱めるような行為が本当にあったのならば、は私の敵だ。
 
「おじさんはかっこよくて優しかった」
「ポテチをくれた」

 娘の中には、ほぼこの二つしか記憶がない。

「ねえ、これからママとお風呂に入ろうか?」
「えー、まだお昼間だよ」
「だって昨日入らなかったじゃない?それに、お昼のお風呂は気持ちいいんだよ」


 私は医者や専門家ではないから、「見た」ところで何が分かるわけではない。
 それでも、一刻も早く確認しなければと思った。

***

 娘の小さな体に、あざやけがはなく、とりあえずほっとした。
 思い切って「女性器おちょいちょいも丁寧に洗おうね」と言い、少し恥ずかしがったが脚を開かせた。

「ここは“ねんまく”っていってね、こういうところからビョーキとか入ってくることもあるから、セイケツにしなきゃいけないんだよ」

 我ながらなかなかうまい理由を見つけて感心した。
 性教育、大事です。

 素人判断だけど、無理やり何かをねじ込まれた様子はない――と思う。
 堅いつぼみのままという感じがしたし、痛がっている様子もない。
 多分きっとだろう。

***

 これからも、思わぬ形で自分の若い頃の奔放さを反省したり恥じたりするような出来事があるのだろうか。
 自分自身のことは済んだことだが、娘に塁が及ぶのは見過ごせない。

 しかしとにかく娘が無事に帰ってきてくれて、本当に本当によかった。

「そうだ。あんまりパパを心配させたくないから、朝会ったおじさんの話は内緒ね」
「ナイショ?」
「そう。女同士の秘密だよ」

 怪しい人に心を許してしまった罪悪感からか、娘は真剣な顔をして、こくっと頷いた。
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