小手先の作業

あおみなみ

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「オリジナル」への敬意

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 1月末から2月にかけてのXタイムライン。

 ドラマ『セクシー田中さん』の原作(コミック)者である芦原妃名子さんの死に衝撃を受けていたら、三重交通の公式キャラクターのはつらつとした美人運転士のイラストを、「修正」と称して勝手に描きかえた人が出現し、衝撃と同時に怒りを覚えました。

 とだけ書くと、この二つに何の関連が?と思える並びになっていますが、どちらもオリジナル創作者への敬意が欠けていたことにより起きている、ということです。

『田中さん』は原作もドラマもよく知らないので、報道とXでの投稿から状況判断するしかありませんが、不本意な原作改変に異議を唱えていたとのことです。
 思うところはいろいろあったのでしょう。遺書らしきものを残し、自ら命を絶つというやるせない結果になりました。ただただ、その無念に思いをはせ、ご冥福をお祈りするだけです。

 これに対して三重交通キャラクターの方は、はっきりと目に見えるイラストで「わたしのかんがえたひとさまのまえにだせるじょせいキャラ」を出しているので、話が早くて助かり?ます。

 コケティッシュな笑顔、躍動感あるポーズ、なまめかしい体の曲線といった、従来「こういうエロいのはNG」と指摘され、燃やされてきた部分はもちろん、風になびくヘアスタイル、イケメン男性キャラクターとの身長差・年齢差、身に着けているジャケットの質感にまで物申す徹底ぶりで、「後ろで結んだ髪、かっちりとした立ち姿、きりっとした薄い笑顔、体の線が分からない着こなし」の、「これひょっとして、女性的な男性なのでは…?」とさえ見える、何なら花江夏樹さんや村瀬歩さんのようなハイトーンな男声で一人称「僕」でしゃべりそうなキャラクターに「修正」されました。

 ジャケットの素材が「元絵では水商売の女性みたいにペラい」と指摘されていたのも、絵を描かない私には分からないものの、しっかり素材に修正したようです。
 しかし、とにかく直そうという気持ちが先に立ってしまったのか、オリジナルでは右手でしていた敬礼のポーズが左手になっていたのはまずかったのでは。左手の敬礼は相手への敵意を意味しているというのは有名なところです。あ、ひょっとしてわざと?

 オリジナルはひたすらかわいく、修正後はかっこいい系女子といった感じで、どちらもそれぞれに魅力的ですが、そもそも公式キャラを、頼まれてもいないのに修正と称して自分がよしとする形にしただけのキャラクターを「これもいいじゃん」と褒めるほど、私は心が広くはありません。

 10年以上前、スペインのおばあさんが、キリストの肖像画を「修復」と称して台無しにしてしまう事件がありました。
 しかしその後、猿のようなその絵は意外に受け、グッズも結構売れちゃったりして、著作権収入の半分近くが魔改造おばあちゃんに入ってしまうという事態に発展したようです。テレビで「あの絵はあの絵として好きだ」と言っている現地の女性を見たこともあります。
 いやいや、そういう問題かな。
 おばあちゃんのオリジナルなら、勝手に描いて勝手にウケとけという話ですが、絵の修復という大前提がある限り、笑いごとではすみません。

 三重交通の絵を「修正」した人は、要するに自ら絵が描くお人のようなのに、オリジナルを台無しにする罪深さが分からないほど、特定思想が頭にしみ込んでしまっているのでしょうか。
 性的(な気がする)だとか、女性蔑視(だと自分が思う)とか糾弾するより先に考えるべきことだと思うのですが。

 二次創作まで話を広げると際限ないので慎んでおきますが、その二次創作だって、結局はオリジナルあってのもの。結局、基本的な敬意の感じられないものは、表面的には面白かったとしても、どこか醜悪なごうまんさが隠し切れなかったり、「そんなに原作曲げて解釈するなら、いっそオリジナル書(描)けば?」と感じてしまったり、あまりいい結果にはならないことでしょう。
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