短編集「なくしもの」

あおみなみ

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根古柳四丁目2番15号

お祖母ちゃんの質問

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 ここに着いたのが4時00分になったかならないかの頃で、お祖母ちゃんの名前が呼ばれたとき、待合場所の時計は長針が真下まで来ていないくらいの時刻だったから、ここにいたのは30分程度のようだ。

 「その部屋」に入ると、いかにもな白装束に身を包んではいるものの、思ったより穏やかな顔立ちの、普通の老婦人がいた。
 そして制服姿の私を見ると、「賢そうなお嬢ちゃんだね。屋布高校の生徒さんか。うちの息子も90期だよ」と言った。

 屋布は結構古い伝統のある学校で、OBは大抵「僕は85期だ。君は何期だね?」などと確認し合ったりする。
 私が109期なので、20年くらい先輩ということは、今36歳か7歳の人ということになる。そこからこの拝み屋さんの大体の年齢も、「60歳から70歳の間ぐらいの人かな」と、ざっくり推測できた。

 そして多分、緊張をほぐす意図でだと思うけれど、「今日は涼しいが、明日あたりは気温が上がるようだ」とか、無難な話題から入り、徐々に本題に入っていった。

「あたしのつれあいがね――3年前に死んだんだけど…」
「そうでしたか。お幾つで?」
「70になったばかりだった。の病気で手術してから、めっきり弱くなって」
「なるほどねえ…」

 私もこれまで、お祖父じいちゃんの話はそこそこ聞いているつもりだった。
 映画俳優みたいな男前だったとか、家が貧しいから上の学校には行けなかったけど、物知りできれいな字を書く人だったとか、まあそのあたりの話は、聞くたびにスタンプカードを押してもらうシステムがあったら、5,000円分くらいの商品券もらってもいいレベルの回数聞いていたと思う。

「どちらで知り合われたの?お見合いで?」
「いえ、あたしはあの人が働いていた工場の食堂で働いていて…」
「それはこのお近く?」
「あたしは若い頃、ちょっと家を出ていたことがあって――あの人の郷里の近くでしたよ」

 お祖母ちゃんはそこで県西部のある地名を出した。

「おそばで有名なところですね」
「そうそう。あの人もそばが大好きで…」

 お祖母ちゃんは社交的で話し好きで、お友達とよく話しているし、私の話もよく聞いてくれるけれど、大好きだったお祖父ちゃんのことは、誰に何度話しても物足りないというくらい「したい」らしい。

 まあそんな話が10分(体感)くらい続いた後、拝み屋さんが本題に入る発言をした。

「それで、亡くなったご主人に聞きたいことは?」

 拝み屋さんの質問に、お祖母ちゃんは答えた――けれど、私は反射的に、「それさすがにいろいろ駄目なやつなんでは…」と思った。

「うちの金庫の鍵が開かないんで、ダイヤルの番号教えてほしくて」
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