短編集「なくしもの」

あおみなみ

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マシロとミドリ

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 マシロとミドリは中学時代の同級生で、高校はそれぞれ別のところに行きました。
 中学時代に話した頻度は片手で足りるほどだったのでは――というほど接点がなかったものの、高校卒業後に入ったビジネス系の専門学校で再会し、どちらからともなく「あれ、ひょっとして…」と声を掛け合い、徐々に話すようになりました。

 最初は2人を含む男女混合グループの付き合いでしたが、だんだんと2人だけのつき合いが始まり、お互いが就職して3年目に当たる24歳のときに結婚しました。

 友達の延長上の、全く気取らない、肩ひじ張らない交わりです。
 結婚披露宴も、顔見知り同士が多い和気あいあいとしたものでした。

 新婚旅行は2人が大好きな沖縄に行きました。
 職場や親戚、友人たちには無難なお土産を買うほか、2人とも沖縄限定のちょっとした小物を「自分用のお土産」として買いました。

 マシロが選んだ中に、地元ビールメーカーのロゴデザインのピンバッチがありました。一つ数百円だったので、まとめて5個も買いました。それを見たミドリは「それも友達のお土産?」と尋ねました。

「全部自分用だよ」
「えーっ、5個も?」
、保存用二つ、布教用二つだよ」
「あんたはオタクか。というか布教用の二つって、実質お土産じゃないの?」
「んー、そうか。未来の誰かへのお土産かな」

 対等で、仲良しで、価値観も近い。性差すら薄そうな、そんな2人が結婚に至るほどの気持ちの盛り上がりがあったことが不思議に思えるほどですが、「だからこそ長続きするだろう」と、二人自身も周囲も考えていました。
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