しわすのコスモス

あおみなみ

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「彼」と花

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 バイトを終えて、8時30分に帰ってきた「彼」にご飯を出すとき、コスモスの一輪挿しも一緒に置いてみた。

「これってコスモス?」
「うん、何だかかわいくて(あなたみたいだなって思って)摘んできちゃった」
「へえ、花がある食卓っていいもんだね」

***

 今思い出すと、「彼」はそう言いながら残り物で作ったカレーうどんをすする姿も、育ちがよさそうっていうか、上品っていうか、若いヤロー特有の勢いや「雑さ」がなかった。

 適当に摘んで、適当に水に挿していただけのコスモスは、3日もすると花びらが全部散った。
 でも喜んでくれたことに気をよくした私は、それ以降もその辺に咲いている花を摘んで、その一輪挿しに挿した。

 マーガレットとカモミール《カミツレ》は、花の感じは似ているけれど、大きさとニオイが違う。

 ヤグルマソウは、団地の近くの道端で咲いているのを摘んだことがある。最初はブルー、次の年はピンクだった。
 花としてはブルーが好きだけど、ピンクのほうが一輪挿しから出た表情が魅力的に見えた。

 子供の頃を思い出して、タンポポ、キュウリグサ、シロツメグサ、アカツメグサをたくさん摘んで帰ったこともあった。

 白いコスモスが映えるように選んだ、「彼」のシャツ色の一輪挿しは、意外とどんな花を挿してもしっくりきた。
 私にフラワーアレンジメントのセンスはないから、全部素材勝負だったけど、どの花も優秀だった。

 やっぱり大地から切り離された花は寿命が短いから、花はしょっちゅう入れ替えたけれど、「彼」は何を飾っても「綺麗だね」って喜んでくれた。

 ただし、「綺麗だね」としか言ってくれなかったな……なんて、やっぱり今になって思い出す。
 そういえばあのとき、花をちゃんと見て言っていたかどうか、今となっては確かめようもない。
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