しわすのコスモス

あおみなみ

文字の大きさ
3 / 6

「彼」と花

しおりを挟む
 バイトを終えて、8時30分に帰ってきた「彼」にご飯を出すとき、コスモスの一輪挿しも一緒に置いてみた。

「これってコスモス?」
「うん、何だかかわいくて(あなたみたいだなって思って)摘んできちゃった」
「へえ、花がある食卓っていいもんだね」

***

 今思い出すと、「彼」はそう言いながら残り物で作ったカレーうどんをすする姿も、育ちがよさそうっていうか、上品っていうか、若いヤロー特有の勢いや「雑さ」がなかった。

 適当に摘んで、適当に水に挿していただけのコスモスは、3日もすると花びらが全部散った。
 でも喜んでくれたことに気をよくした私は、それ以降もその辺に咲いている花を摘んで、その一輪挿しに挿した。

 マーガレットとカモミール《カミツレ》は、花の感じは似ているけれど、大きさとニオイが違う。

 ヤグルマソウは、団地の近くの道端で咲いているのを摘んだことがある。最初はブルー、次の年はピンクだった。
 花としてはブルーが好きだけど、ピンクのほうが一輪挿しから出た表情が魅力的に見えた。

 子供の頃を思い出して、タンポポ、キュウリグサ、シロツメグサ、アカツメグサをたくさん摘んで帰ったこともあった。

 白いコスモスが映えるように選んだ、「彼」のシャツ色の一輪挿しは、意外とどんな花を挿してもしっくりきた。
 私にフラワーアレンジメントのセンスはないから、全部素材勝負だったけど、どの花も優秀だった。

 やっぱり大地から切り離された花は寿命が短いから、花はしょっちゅう入れ替えたけれど、「彼」は何を飾っても「綺麗だね」って喜んでくれた。

 ただし、「綺麗だね」としか言ってくれなかったな……なんて、やっぱり今になって思い出す。
 そういえばあのとき、花をちゃんと見て言っていたかどうか、今となっては確かめようもない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜

小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。 でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。 就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。 そこには玲央がいる。 それなのに、私は玲央に選ばれない…… そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。 瀬川真冬 25歳 一ノ瀬玲央 25歳 ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。 表紙は簡単表紙メーカーにて作成。 アルファポリス公開日 2024/10/21 作品の無断転載はご遠慮ください。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

恥ずかしすぎて

陽紫葵
恋愛
中学の時の同窓会があり、気になってた人と再会して・・・・・・。

一途な恋

凛子
恋愛
貴方だけ見つめてる……

処理中です...