初恋ガチ勢

あおみなみ

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第54章 そしてきっと、全てを託してしまうだろう【メグと大輔 終】

初めてのお泊まり旅行(2)【メグ】

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「愉快な人だったな。檜さんもあの調子でからかわれたんだろう」

 そう言う大輔さんも、何だか愉快そうだった。

「大叔父さん、昔からあんな感じでした。ママとは気が合うみたいだし、私も好きですけど」
「じゃ、ママさんと2人で檜さんをいじったのかもな


 私が祖父母のところに下宿を始めてから初めてデートした日、大輔さんは18時には私を家まで送り届けて、丁寧に挨拶をしてくれた。

 おばあちゃんは「優美エレガントな子だねえ。うちのヤローどもにはない美質だわ」と言い、おじいちゃんも「優男だが、真面目そうだな」と言って好印象だったみたい。
 おばあちゃんは、私が「佐倉のおばあちゃん」と呼ぶ母方の祖母とはほぼ友達付き合いなので、話題が筒抜けになっている。
 佐倉のおばあちゃんからも「私にも大倉君を紹介して!」と連絡があり、恥ずかしながら挨拶に行ったりした。

 こうやって私の身内に少しずつ会ってもらっているし、私も大倉ファミリーの方に少しずつご紹介いただいている。
 どこまでのつながりができるか分からないけれど、そのうち大輔さんと一緒に檜先輩のご実家にもお披露目とか?
 いやいや、さすがに気が早いか。

 中途半端な時間なので、駅に人はあまりいない。
 これから片山駅に向かうと思われる高校生ぐらいの子が数人いた程度だった。

 大輔さんが20センチほど高い目線から私を見ているのを感じたので、「何ですか?」と見上げたら、

「美形の血、ね。それは我が大倉家にとっても同じなんだが…」

 と言った。

「まあ安心しろ。すぐどうこうしようってわけじゃない」

 安心しろと言われても、私今夜、初めて大輔さんと2人きりで過ごすわけですが……。

◇◇◇

 大倉家別荘は、例のときめきUFO館があった米野町こめのちょうとの境界近くの玉泉村たまいずみむらというところにあった。
 山がちな地形で、村の中に鉄道の駅は1つもなく、バスの便も当たり前のようによくないようだ。
 そこまで田舎だから、当然のように自然環境は抜群だけど。

 3LDKの2階建てで、2階に10畳くらいの寝室が2つあり、ここからバルコニーに出られるようになっている。
 1階に20畳くらいのリビングダイニングと水回り、それに8畳くらいの和室がある。
 森に沈んだみたいな落ち着いた雰囲気のある建物だけれど、適度な生活感もあって、ほっとする場所だと思った。
 ママのことを思い出して、ちょっと笑ってしまった。

「どうかしたか?」
「ママと古民家園とか、文豪の生家みたいなところに行くと、必ずはしゃいで言うんですよ、
 ここで暮らしたい!ここ仕事場にして、ここで寝起きして……とか。
 だから、こんなところに来たら、もう帰らないとか言いだすかも」
「あのママさんなら、どこに行っても楽しむタイプなんだろうな」
「私も伝染うつっちゃったかもしれません」
「それはよかった。だからお前とのデートは、どこに行っても楽しい」

 大輔さんはそう言って、私の肩を抱いてきた。

 それではっとしたけど、今、正真正銘彼と2人きりなのか。
 今までみたいな私や彼の部屋とか、カラオケボックスなんかとはわけが違う。

 なぜだか急にいたたまれなくなった。そして、「あ、ベッドの真上に天窓があるんですね!山の上だし、星きれいだろうなあ!」などと声を張ってしまった。

 大輔さんは、ちょっと呆れた様子ではあったけれど、
「……お前も随分はしゃいでるな。ちょっと落ち着けよ」
 と言って優しく顔を包み、キスしてくれた。

 高校生の頃、カラオケ屋さんのエレベーターの中でキスしたことがある。
 あれは「された」って言った方が正確かな。4秒だけ抱きしめられて、唇を重ねただけ。

 突然のことで、私は棒立ちの状態だった。

 今度は大輔さんの背中に腕を回してみた。
 細く見えるけど、しっかりした背筋を手に感じる。

 大輔さんがキスをやめて、長い腕で私をくるむように抱きしめて、そのまま優しくベッドに押し倒した。

「あの……」
「まだよ。心の準備も要るだろう?」

 すっと抜いた腕を私の顔の両脇に置いて、見下ろしてきた。
 真剣な眼差しが少し怖いけど、逃げ出したくなるような怖さではない。
 多分、見据えられたら動けなくなる。

 そしてきっと、全てを託してしまうだろう。
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