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第8章 本当に「多くの人の協力」があったなあ。【千弦と聡二】
「千弦さんたちのことは俺が全力で守りますから!」【聡二】
しおりを挟む運動部の3年生も引退し、生徒会や委員会も2年生に引き継ぎし、大きな行事も終わり――という晩秋。
俺には理解できない価値観だが、中学生のうちに童貞を捨てたいと焦りだす者が出てきたようだ。
しかし相手のあることなので、そううまくはいかない。
家庭教師とか、友人の大学生の姉といった、エロい年上路線が人気のようだが、同級生や下級生と「これから」だの「済ませた」といった話も聞かないではない。
いずれにしても、若さゆえの過ちにはくれぐれも気を付けてほしいものだ。
(おっさんくさくて悪かったな)
さて、うわさというのは断片的に聞こえることも多いので、「そこ」だけでは判断が難しいのだが。
「俺、あの人なら多少ババァでもいける」
「オレも。かわいい顔でインランとか、どんなオプションだよ」
みたいな下品な声に交じり、聞き捨てならない声が聞こえてきた。
「あの1年のかわいい子。桜井だっけ?」
「今は母ちゃんの方だろ、やっぱ1年の子はガキだし、2年後に期待ぐらいじゃね?」
「あの店の2階ってヤリ部屋なんだろ?ダンナいないから頼めばヤラせてくれるとかって」
「マジで?」
「おれなんかタウン誌のインタビュー記事、おかずにしてるし」
「うはっ、レベル高ww」
俺はこの情報に該当する女性を知っている。
間違いなく「カフェさくら」の店長、桜井千弦さんだろう。
ただし、「ヤリ部屋」「頼めば」のくだりは、根も葉もないうわさであると思う。
根拠も証拠もはないが、俺が好きな彼女はそんな女性ではない。
「あんな美人がお相手してくれるかも」という誰かの妄想が肥大し、独り歩きしただけだと見ている。
そうに決まっている!
◇◇◇
しかし極めて危険ではある。
テニス部のチームメイトで、身長が185で強面、武道経験者でもと風紀委員という高田礼一郎という男がいるのだが、少なくとも中等部の連中なら、彼の名前だけで怖気づいてくれる可能性もある。
カフェさくらの店頭に、「高田礼一郎立寄所」とでも懸垂幕をさげてほしいところだ。
実際あの店には一度だけ連れていった「実績」がある。
「料理はうまいが、しゃれていて落ち着かん」と、行ったのはそれっきりだが、千弦さんのことは「とても清楚で様子のいい女性」だと、昭和時代の小説のような言葉を使って褒めていた。彼女の危機ともなれば、協力してくれそうな気がする。
その日の放課後、早速カフェさくらに立ち寄った。
いつものように日本茶(を置いてくれるようになった)を注文し、どう切り出そうかと少し考えてから、あまり汚らわしい話は彼女の耳に入れたくないと思って、こう言い残して帰ってきた。
「あのっ。困ったことがあったらいつでも声をかけてください」
「え?いきなりどうしたの?」
「その…困った客に居座られるとか、何かあったら、この間連れてきた高田という男にも協力を仰ぎます。千弦さんたちのことは、俺が全力で守りますから!」
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