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第29章 「全て話せとは言わないが、愚痴るくらいはしてくれ」【メグと大輔】
“父娘”の密談
しおりを挟む「貝沼少年は――悪いやつではないのだろうが……」
いつものようにママのお店に来ていた檜先輩も、どうやらうわさを聞いたようで、眉を八の字にしていた。
貝沼少年という独特の言い方が、某人気漫画の美丈夫ヒーローみたいで笑えるけれど(どなたのことかは、各自適当に想像なさってね)、今はそれどころではない。
「俺が知っている事情とはだいぶ違うと説明しても、芽久美ちゃんと仲がいいからかばっているだけだろうと思われたらしくて。らちが明かない」
「なんか…先輩にまで迷惑をかけてしまってごめんなさい……」
「いや、君が悪いわけではない。そんなことより、大倉とはうまくやっているか?」
「はい、おかげさまで」
「この状況でも大倉の話になるとちゃんと笑顔が出るなら、確かに大丈夫だな」
「先輩――けっこう意地悪ですね」
そこで檜先輩は、私に「耳を貸せ」というしぐさをした。
「俺が千弦さんと付き合うことになったら、もっと盛大に冷やかしてもいいからな?」
「あらら、私には聞かれたくない話?」
ママが私たちをからんうようにそう言うと、
「ごめんなさい。父娘の密談ですからね」
などとしゃあしゃあと言いやがる檜先輩。
この人たちほど「もうつき合っちゃえよ」と言いたくなる2人もいない。
というか、つき合ってないだけの恋人同士って感じ?
たぶん来年、ママが38歳の誕生日を迎える頃には、名実ともに……ってやつになるだろう。
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