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第29章 「全て話せとは言わないが、愚痴るくらいはしてくれ」【メグと大輔】
それで十分
しおりを挟むこんな状況、大輔さんには話せない。言ったところで心配をかけるだけだもん。
学校が違うから不便だと考えるべきか、こんなことに大輔さんを巻き込まなくてよかったと考えるべきか。
そうしたら、こんなメッセージが来た。
『お前俺に隠してることがあるだろう?』
心当たりはもちろんありありだけど、大輔さんの質問の真意がわからない。
どう返すのが正解か分からないまま、こう返してみた。
「ぜんぶ話しているわけではありませんが、隠し事は特に」
「っていうか、隠し事の定義がわかりません」
『じゃ、はっきり言おう。お前が元カレを捨てて俺とつき合っているってウワサについてだ』
え?
『それで校内で随分なことを言われているらしいじゃないか』
『英明の3年生と個人的に親交のある先輩が教えてくれたんだ』
「元カレは、私に恥をかかせないように自分が振られたことにしたらしいんです」
「でも、それが裏目に出ちゃったみたいで」
『なるほど。同じ学校だったら俺本人が明言すれば済むんだろうが』
「人はどっちかというとゲスい噂を好むし信じるんだって、今回思い知りました」
「檜先輩が真相を説明しても、私と仲がいいからかばってるって取られるらしくて」
『そうか。檜さんは実はあんまり人望がないのかもしれないな 笑』
「いやいや、そういう話じゃなくて(焦)」
檜先輩についてネガティブなことを言いたがるのは、大輔さんの癖みたいなものだ。
『今の俺は、お前自身が「悔しい」とか「悲しい」って言ってくれないと、その気持ちを共有できない』
『全て話せとは言わないが、愚痴るくらいはしてくれ』
「ありがとうございます。その言葉だけで十分報われました」
大輔さんは、少し口は悪いけどとても優しい。
まだカイとの関係が良好だった頃、私にあてこすりを言う先輩にカイが食ってかかろうとして、必死に止めたことがあったのを思い出した。
(無鉄砲で困った子だねえ……)と思いつつ、ちょっとだけうれしかった。
そうだ。私は意外と嫌なうわさには慣れているし、カイとのいい思い出もちゃんとある。
何より今は大輔さんという人が心の支えになってくれている。
何かもう、それで十分な気がした。
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