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第30章 いい感じに麻痺しちゃったってことだろうか。【メグと大輔】
ゴージャスカフェ その他【大輔】
しおりを挟む俺は2年の後期から部長になったので、クラス展示より硬式テニス部の方を優先させてもらったが、休憩時間にはメグを案内することができた。
というか、それができないんじゃ呼んだ意味がない。
文化祭なんて、どこも同じようなものだと思うが、やはり微妙にカラーの違いというのはあるらしく、物珍し気にキョロキョロしている。
「玉成も中・高は一緒なんですね」
「文化系の部活や同好会は、中高合同のところも多いからな。クイズ研究部とか、速記部とか」
「速記?何か符号使って書くやつですよね。珍しい」
「らしいな。俺も詳しくは知らないが」
「ところで、お前は部活入ったことないのか?」
「中1のとき一時期だけ、手芸部にいたんですけど、作品を完成させなきゃいけないっていうのが性に合わなくてやめました」
「手芸ってそういうもんだろう?」
「そうなんですけど、入ってみて、自分が好きなのは物を作ることじゃなくて、針と糸を動かすことなんだって分かっちゃって」
「そんなもんか」
「だから今でもクロスステッチとか刺し子細工とかは趣味でやるんです」
「そうか――よくわからないが、お前らしい気がする」
変な話だが、メグが「これが好き」「これが嫌い」「こう感じる」という話を聞くたび、「こいつらしい」と思い、何気ないことでも愛おしく感じる。
これはメグと付き合っているからなのか、ほかの女子でもそう感じるのか。
よく分からないが、分からないならそのままでいい。
3年生の教室の前を通ったら、兵部さんが女装喫茶の呼び込みをしていた。
ノリノリだし、非常識なほどに美人に化けているし、他校生からの評判も上々のようだ。
とてもマネはできないが、この人のこういうところは本当に偉いと思う。
ちょっと会釈程度でやり過ごそうとしたが、やはり声をかけられてしまった。
「よお、大倉。その子が檜の“愛娘”か?」
「愛娘……は、初めまして。桜井です」
「俺は兵部だ。さすがは檜の自慢の娘だけあって礼儀正しいな」
あ、メグが引いてしまっている。というか、目をぱちくりさせている。
呼ばれ方の問題より、この化粧とドレスのせいか?
「兵部さん、その言い方……」
夏合宿で行った別荘地の道の駅でメグたちの土産を選んでいるときにもからかわれたが、この人本当にどこまで知ってるんだ? この人はこの人で本当に得体が知れない。
「なかなか可愛いいな。あと2、3年経ったら、さらに上玉になりそうだ」
「メグに下品なこと言わないでください!その姿だし、なんか企んでそうで怖いですよ」
「別にとって食おうってんじゃない。それより、お前らカフェで何か飲んでいけ」
こうなると断れない。これもある種のパワハラか?
「かわいい後輩から金は取らねえ。俺のおごりだよ」
ってことで、ひとまず小休止。
紅茶と「おすすめスイーツ」とやらを飲み食いしながら、メグと雑談をした。
◇◇◇
「あのお店の紅茶、学園祭とは思えないお味でしたね。クッキーもすごくおいしかったし」
「ああ。兵部さんのことだ、何か裏技でも使ったんだろう」
俺はあまりそちらに明るくないが、食器もけっこう凝っていたようだ。
「あ、これアラビアですね。ママが愛用しているのと同じ柄です」
「アラビア? 中東の製品なのか?」
「フィンランドのARABIAってブランドなんです」
「ふうん…?」
なんだかわからんが、シンプルなモノトーンがおしゃれ? だなと思った。
何にせよ、3年生のエリアからはさっさと引いた方が無難そうだ。
部を引退した人たちが手ぐすね引いて待っている気がしてきた。
テニス部では、ベタではあるが、ストラックアウトと呼ばれる的当てゲームの店を開いた。
当然メグは勧められても固辞したが、俺がちょっとしたデモンストレーションでプレーしたときは、しっかり応援してくれた。
カッコつけるつもりはないが、女子の歓声が耳に心地よかったのは初めてかもしれない。
クラス展示を放ってやってきた3年生も多かったため、結局こっちでさんざん冷やかされた。
他校にカノジョがいるやつは、みんな招待状を出したようで、ギャラリーに結構他校の制服や私服の高校生らしい女子もいるが――その中でもやっぱりメグが一番かわいい。
ある先輩のカノジョに、「そのまつげ、自前なんでしょ?プリクラやってもすっごい変化率の低そうな顔」だと言われた。よく分からないが、褒められたらしい。
羽鳥はあの書店で一度メグを見ているので、「まさかお付き合いしているとはね。大倉も結構やるね」と、控えめにからかわれた。
約束していた場所でメグをママさんに引き渡した。
今日のところはここでお別れだが、確実に今までで一番学園祭を楽しんだ。
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