短編集「めおと」

あおみなみ

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迷いスワン

華からのメッセージ

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 9時半のオープン合わせ、いつものように車で5分の中くらいのスーパーに行き、手早く買い物をした後、いったん食品を冷凍冷蔵庫におさめ、ブランチを食べて、洋服や生活財を見て…。

 「休みの日はやっぱり人手が多いな」と文句を言いつつ、喜朗はそんなムードを決して嫌っていないのが分かる。
 華は正直言うと、人混みが少し苦手だった。

スーパーではたっぷり買い物をしたが、クーラーバッグ一つで済んだので、全部喜朗が持った。

「あのね、ヨシくん。私、トイレに行きたいんだけど…」
「そうか?じゃ、そこで待って…」
「ううん。先に車に戻ってて」
「そうか…わかった」

 そう言ってスーパーの出口付近で別れ、喜朗は車内で10分ほど華を待った。
 さすがに時間がかかり過ぎではないだろうか、体の調子でも悪いのか?と心配になった喜朗が連絡しようとスマホを取り出すと、ちょうど華からのメッセージを受け取った。

『ごめんなさい。しばらくひとりにしてください』

◇◇◇

 喜朗は訳が分からず、スーパーに戻って店内を探したが、華の姿は見つからなかった。

 さすがに女子トイレの中まで探すことはできなかったが、しばらくトイレの出入り口が見える場所でうろうろし、(これじゃらちが明かない)と感じて車に戻り、そこで10分待ってから家に帰った。

 出口で別れてから1時間ほど経っていた。

 喜朗は心配といら立ちが混ぜこぜになり、全くいい案が浮かばない。

 とりあえず華に電話をしたり、メッセ―ジを送ったりするが、スマホの電源は切られているようだ。
 華の姉や知人など、心当たりに連絡してみたが、どこにもいなかった。

 心配の比率が高くなったり、いら立ちが心配を圧迫したりを繰り返し、華がいつ帰ってきても大丈夫なように、喜朗はずっと家にいた。
 テレビやラジオをつけたりする気にはなれず、ずっとスマホを見たり、ソファに放り出したりした。

『どうしたの?俺怒ってないから帰ってきて。君と話がしたい』

 16時頃そんなメッセージを送ったが、既読はつかない。

 10分後に華からやっとメッセージが来た。

『ごめんなさい。あと5分くらいで帰ります』
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