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きみは古本屋巡りが趣味だった。
この街にはまだ多くの古本屋が残っており、新古書店と合わせれば簡単には回りきれない数にのぼる。
きみが住んでいる街は数百万人が暮らす大都市で、電車などの交通機関もしっかり張り巡らされているので、遠出をするのもそれほど困難ではない。
芹沢優愛と出会ってから、きみはミステリー以外にも趣味を広げようとしていた。
そうしたほうが彼女と話が合わせやすいからというのが理由だが、最近では好みの範囲が広がっていることも実感する。
ジャンルを広げてみると、当然知らない作家やタイトルが増え、それもまた古本屋に通う動機となっていた。
本屋を巡るときはひとりが多かった。そのほうが落ち着いて本をチェックすることができる。
休日だと時間が余っているので、芹沢優愛から自宅に誘われるかもしれないときみは警戒していた部分があるので、デートらしいデートはあまりしていなかった。
それがこの前の帰り道ではそのような誘いがあった。自宅に来るように言われたのだ。
あまりにも突然のことできみは戸惑っていたが、一年近くも付き合いがあれば当然の流れと感じる部分もあった。
とりあえず誤魔化してはいたが、いつまでも曖昧にしておくことは難しい。これからどのような判断を下すべきか、きみは考えながら歩いていた。電車を利用して事前にチェックしていた古本屋へと向かう途中のことだった。
「ん?」
きみは立ち止まり、ある方へと視線を向けた。住宅街のなかにそれなりの規模の公園があり、そこのベンチにひとりの女の子が座っている。
今日は休日なので、とくにおかしな光景ではないはずだが、きみはやけに気になり、公園内部へと足を踏み入れた。女の子に近づいてみると、なぜ心がざわついたのか理由がわかった。
ベンチに座る女の子は目を閉じていた。石像のように身じろぎもせず、静かに座っていた。背筋をすっと伸ばしているので、寝ているのとは違う。
何かに集中しているようだった。
いったいこの女の子はなにをしているんだろう、ときみは疑問に思った。その女の子はきみよりも少し年下くらいで、公園にある遊具で遊んでいるほうがよっぽど似合っている感じだった。
目を閉じ無表情でベンチに座っている姿は異様な感じがして、きみはすぐにその場を立ち去ることはできなかった。
「大丈夫?」
あまりにも動かないのできみがそう声をかけると、その女の子はパッと目を開いた。
「優花」
女の子が最初に発した言葉がそれだった。誰かの名前。きみはとっさに背後を確認した。そこに誰かいるのかと思ったが、人影はない。
ふたたび女の子に視線を戻すと、女の子と目が合う。女の子はしばらくきみを見つめたあと、
「誰?」
と言った。
「あ、ごめん。なんか全然動かないから、どうしたんだろうと思って」
「集中してたの、優花と繋がるため」
「優花?」
女の子が視線をずらし、きみの背後に目をやる。きみがそれを追うようにして振り向くと、今度はそこにひとり、女の子が立っていた。
きみは一瞬、幻でも見ているのかと目を疑った。公園の入り口からこちらへと歩いてくる女の子は、ベンチにいる女の子とそっくりだったからだ。
「優花」
「優希」
同じ顔をした女の子がベンチの前で向き合っている。双子か、ときみは納得した。双子を間近で見たのは生まれて初めてのことだったので、きみは新鮮な驚きを感じていた。
目の前にいる二人はじっくり観察しても見分けがつかないくらいに似ている。親でも簡単には判別できないかもしれない。
「優希、この人は?」
「通りすがりの人。わたしのことが心配になって声をかけてきたみたい」
とうやらベンチに座っていたのが優希、あとから来たのが優花という名前らしい。
本来であれば、双子とはいえ面識のない二人の前にとどまる必要はない。きみも一度は通りへと戻ろうとしたが、なぜか先程の優希の発言が気になった。
「その、繋がるってどういう意味なの?」
「優希、言ったの?」
後から来た優花が詰問するように言う。
「説明はしてないよ。目覚めたときに目の前にこの人がいたから、つい口走っただけ」
「気をつけないとダメだよ。悪い人に狙われるから」
「うん。でもこのお兄ちゃん、悪そうには見えないよ」
優花はきみのほうを向いた。まじまじと見つめる。
「あなたは誰ですか?」
そう聞かれ、きみは穏やかな口調で自己紹介をした。
名前は橘海斗。隣町に住む中学二年生。趣味は読書。とくにミステリーが好き。
今日、こちらまでやってきたのは本屋巡りをするため。隣町といっても同じ市内で、電車で一駅のところに自宅はある。
いまからちょうど古本屋へと向かうところで、その途中にきみたちと会ったのだと。
それに続いて双子も名乗る。楠優花と優希の姉妹で、やはり双子。年齢はきみよりも二つ年下で、小学六年生。
ここで何をしていたのかについては当初答えようとはしなかったが、一回り体の大きいきみが丁寧に話したことを好感したのか、ベンチに座っていた優希が優花の袖を引いてこう言った。
「ねぇ、このお兄ちゃんにあのことを話してみようよ。いつまでも二人だけの秘密だと、わたしも息苦しいから」
「会ったばかりの人だよ。信頼できるかどうかなんてわからないよ」
「でも、このままだと本当に悪い人が近づいてくるかもしれないよ。エッジリンクをしているときは無防備だから、近くに誰か男の人がいて守ってくれたほうが安心かもしれない」
「エッジリンク?」
聞き慣れない単語に、きみは敏感に反応した。自分でもよくわからないが、それが何かやけに知りたいと思った。
「優希の言うことは正しいかもしれない。このままだとわたしたちのほうが被害を受けるほうになるのかも」
「うん。それにミステリーが好きなら、わたしたちの活動に協力してくれるかもしれないよ」
「活動って、何かしてるの?」
「わたしたち、猫殺しの犯人を捕まえようとしているの」
これはきみも知っているあの事件のことだ。猫の被害は広範囲に及んでおり、隣町でも殺された猫が出ている。
どうやらこの双子は街を歩いて亡くなった猫がいないのか調べ、あわよくば犯人も見つけようとしているようだ。
しかし、そうなるとひとつの疑問が出てくる。双子のうちひとりはベンチに座っていたことだ。猫を探すというのなら、歩いていないとおかしい。疲れて休んでいたようにも見えなかった。
そんな疑問をぶつけると、
「エッジリンクは二人とも歩きながらはできないからだよ」
優希のほうがそう答える。
「それってなんなの?」
「エッジリンクはわたしたち二人の特殊能力なの」
双子はそれぞれの至らないところを補うようにしながら、きみにエッジリンクについて説明した。
エッジリンク。それは双子の同一化能力だという。
ひとりが目を閉じて、まずは頭を空っぽにする。
その暗闇のなかから、もうひとりのほうだけを思い浮かべる。
すると徐々に意識がそちら側へと移行し、鋭い痛みを伴いながら双子はひとつの存在となるのだという。あくまでもこれは意識の問題なので一方は動けず、だから優希はベンチに座っていたと言う。ベンチに座りながら、歩いている優花の視界などを共有していた。
エッジリンクにはもうひとつ特徴がある。二人の意識が重なりあっているとき、動けているもうひとりのほうは動物の言葉がわかるようになるというのだ。双子はこの力を使い、猫をはじめとする動物から事情を聞いて調査を始めようとしたところだったという。
「……まさか」
きみはその話を素直に信じることはできなかった。双子に特別な力があるというのは聞いたことがあるが、それもあくまで都市伝説レベル。実際にそのようなことが可能だとは思えなかった。
「本当のことだよ。試してみても良いんだから」
動物の言葉はともかく、意識の共有なら確認する方法はある。双子を離れた場所に置き、一方にだけきみが書いた文字を見せ、それをもうひとりに当てさせる。
この公園に手品の仕掛けになるようなものはないから、正解が続けば双子の発言は事実となる。
「……当たってる」
きみは携帯のメモ帳に文字を打ち込み、何度も双子の間を往復した。長文では少しの間違いはあったものの、それはむしろ記憶の問題で、双子はほぼ確実に離れた状態で文字を言い当てた。
きみは確信した。この双子の言っていることは真実であると。あまりにも正確だったし、トリックの介在する余地もない。きみはミステリー好きなだけに、その辺りの不正についてはかなり厳格に防ぐ努力をしていた。
「どうしてそんな力が」
「わからない。気づいたらできるようになっていたの」
「きっと、猫殺しの犯人を捕まれるために、神様が授けてくれたんだよ」
動物の声が聞ける、きみはそちらの能力のほうも事実かどうか、知りたいという思うようになった。もしそれが本当のことなら、小説のミステリーを超える興奮をきみに与えることになる。この機会を逃すわけにはいかない。
「そうだね。ぼくも猫殺しの事件は気になっていたから、是非きみたちに協力させてもらいたい。いつからその力は使えるようになったの?」
エッジリンクの能力に気づいたのは最近のことで、だからまだ本格的な犯人探しはしていないという。どの程度の距離までエッジリンクが有効なのか、今は二人は確かめようとしていたという。
「いまのところは数百メートルが限界。集中力にも左右されるみたいだから、何度も練習を繰り返していれば、もっと持続時間は延びるかもしれない」
「それぞれの役割りって決まってるの?」
「ううん、どっちでもできるよ」
「動物とはどんなやりとりもできるの?」
「はっきりとした会話は難しいかな。相手の意識がぼんやりとこっちに流れてくる感じなの」
「これも練習すればよくなるかも」
こちら側の意識を伝えるのは難しいらしい。それができればその能力も確認することが可能だったかもしれない。
「他の人はその力のこと、知ってるの?」
「知らない。お母さんにも言ってないよ」
「変に思われるのが嫌だから。でもここでずっとやってると、いつかばれちゃうかもしれない」
「近くに住んでるんだ」
「あそこだよ」
双子が揃って指差したのは、二棟が並んで建つマンションだった。一際目を引く高さの建物で、双子が住んでいるのはその上階らしい。
「お金持ち、なんだ」
「よくわかんないけど」
「普通だと思う」
どちらにせよ、きみは金目的ではない。双子の実家が裕福かどうかなどどうでも良いことだ。
一つ気になることがあるとすれば、見知らぬ男性と娘たちが遊んでいることを不審に思った親が通報することで、昨今の事情を考えると近所の人が勝手に警察へ、ということもあり得るかもしれない。
それに気づくと、きみは急に周囲の視線が気になった。道路のほうを視線をやると、歩行者がこちらをチラチラ見ながら歩いている。
ここに長居するのは危険かもしれない。彼女たちに会ってからもう一時間は経過している。さきほどの能力試験の様子は、端からみれば異様なものと映るかもしれない。
きみは双子と次に会う約束の日取りを決め、その場を立ち去った。
この街にはまだ多くの古本屋が残っており、新古書店と合わせれば簡単には回りきれない数にのぼる。
きみが住んでいる街は数百万人が暮らす大都市で、電車などの交通機関もしっかり張り巡らされているので、遠出をするのもそれほど困難ではない。
芹沢優愛と出会ってから、きみはミステリー以外にも趣味を広げようとしていた。
そうしたほうが彼女と話が合わせやすいからというのが理由だが、最近では好みの範囲が広がっていることも実感する。
ジャンルを広げてみると、当然知らない作家やタイトルが増え、それもまた古本屋に通う動機となっていた。
本屋を巡るときはひとりが多かった。そのほうが落ち着いて本をチェックすることができる。
休日だと時間が余っているので、芹沢優愛から自宅に誘われるかもしれないときみは警戒していた部分があるので、デートらしいデートはあまりしていなかった。
それがこの前の帰り道ではそのような誘いがあった。自宅に来るように言われたのだ。
あまりにも突然のことできみは戸惑っていたが、一年近くも付き合いがあれば当然の流れと感じる部分もあった。
とりあえず誤魔化してはいたが、いつまでも曖昧にしておくことは難しい。これからどのような判断を下すべきか、きみは考えながら歩いていた。電車を利用して事前にチェックしていた古本屋へと向かう途中のことだった。
「ん?」
きみは立ち止まり、ある方へと視線を向けた。住宅街のなかにそれなりの規模の公園があり、そこのベンチにひとりの女の子が座っている。
今日は休日なので、とくにおかしな光景ではないはずだが、きみはやけに気になり、公園内部へと足を踏み入れた。女の子に近づいてみると、なぜ心がざわついたのか理由がわかった。
ベンチに座る女の子は目を閉じていた。石像のように身じろぎもせず、静かに座っていた。背筋をすっと伸ばしているので、寝ているのとは違う。
何かに集中しているようだった。
いったいこの女の子はなにをしているんだろう、ときみは疑問に思った。その女の子はきみよりも少し年下くらいで、公園にある遊具で遊んでいるほうがよっぽど似合っている感じだった。
目を閉じ無表情でベンチに座っている姿は異様な感じがして、きみはすぐにその場を立ち去ることはできなかった。
「大丈夫?」
あまりにも動かないのできみがそう声をかけると、その女の子はパッと目を開いた。
「優花」
女の子が最初に発した言葉がそれだった。誰かの名前。きみはとっさに背後を確認した。そこに誰かいるのかと思ったが、人影はない。
ふたたび女の子に視線を戻すと、女の子と目が合う。女の子はしばらくきみを見つめたあと、
「誰?」
と言った。
「あ、ごめん。なんか全然動かないから、どうしたんだろうと思って」
「集中してたの、優花と繋がるため」
「優花?」
女の子が視線をずらし、きみの背後に目をやる。きみがそれを追うようにして振り向くと、今度はそこにひとり、女の子が立っていた。
きみは一瞬、幻でも見ているのかと目を疑った。公園の入り口からこちらへと歩いてくる女の子は、ベンチにいる女の子とそっくりだったからだ。
「優花」
「優希」
同じ顔をした女の子がベンチの前で向き合っている。双子か、ときみは納得した。双子を間近で見たのは生まれて初めてのことだったので、きみは新鮮な驚きを感じていた。
目の前にいる二人はじっくり観察しても見分けがつかないくらいに似ている。親でも簡単には判別できないかもしれない。
「優希、この人は?」
「通りすがりの人。わたしのことが心配になって声をかけてきたみたい」
とうやらベンチに座っていたのが優希、あとから来たのが優花という名前らしい。
本来であれば、双子とはいえ面識のない二人の前にとどまる必要はない。きみも一度は通りへと戻ろうとしたが、なぜか先程の優希の発言が気になった。
「その、繋がるってどういう意味なの?」
「優希、言ったの?」
後から来た優花が詰問するように言う。
「説明はしてないよ。目覚めたときに目の前にこの人がいたから、つい口走っただけ」
「気をつけないとダメだよ。悪い人に狙われるから」
「うん。でもこのお兄ちゃん、悪そうには見えないよ」
優花はきみのほうを向いた。まじまじと見つめる。
「あなたは誰ですか?」
そう聞かれ、きみは穏やかな口調で自己紹介をした。
名前は橘海斗。隣町に住む中学二年生。趣味は読書。とくにミステリーが好き。
今日、こちらまでやってきたのは本屋巡りをするため。隣町といっても同じ市内で、電車で一駅のところに自宅はある。
いまからちょうど古本屋へと向かうところで、その途中にきみたちと会ったのだと。
それに続いて双子も名乗る。楠優花と優希の姉妹で、やはり双子。年齢はきみよりも二つ年下で、小学六年生。
ここで何をしていたのかについては当初答えようとはしなかったが、一回り体の大きいきみが丁寧に話したことを好感したのか、ベンチに座っていた優希が優花の袖を引いてこう言った。
「ねぇ、このお兄ちゃんにあのことを話してみようよ。いつまでも二人だけの秘密だと、わたしも息苦しいから」
「会ったばかりの人だよ。信頼できるかどうかなんてわからないよ」
「でも、このままだと本当に悪い人が近づいてくるかもしれないよ。エッジリンクをしているときは無防備だから、近くに誰か男の人がいて守ってくれたほうが安心かもしれない」
「エッジリンク?」
聞き慣れない単語に、きみは敏感に反応した。自分でもよくわからないが、それが何かやけに知りたいと思った。
「優希の言うことは正しいかもしれない。このままだとわたしたちのほうが被害を受けるほうになるのかも」
「うん。それにミステリーが好きなら、わたしたちの活動に協力してくれるかもしれないよ」
「活動って、何かしてるの?」
「わたしたち、猫殺しの犯人を捕まえようとしているの」
これはきみも知っているあの事件のことだ。猫の被害は広範囲に及んでおり、隣町でも殺された猫が出ている。
どうやらこの双子は街を歩いて亡くなった猫がいないのか調べ、あわよくば犯人も見つけようとしているようだ。
しかし、そうなるとひとつの疑問が出てくる。双子のうちひとりはベンチに座っていたことだ。猫を探すというのなら、歩いていないとおかしい。疲れて休んでいたようにも見えなかった。
そんな疑問をぶつけると、
「エッジリンクは二人とも歩きながらはできないからだよ」
優希のほうがそう答える。
「それってなんなの?」
「エッジリンクはわたしたち二人の特殊能力なの」
双子はそれぞれの至らないところを補うようにしながら、きみにエッジリンクについて説明した。
エッジリンク。それは双子の同一化能力だという。
ひとりが目を閉じて、まずは頭を空っぽにする。
その暗闇のなかから、もうひとりのほうだけを思い浮かべる。
すると徐々に意識がそちら側へと移行し、鋭い痛みを伴いながら双子はひとつの存在となるのだという。あくまでもこれは意識の問題なので一方は動けず、だから優希はベンチに座っていたと言う。ベンチに座りながら、歩いている優花の視界などを共有していた。
エッジリンクにはもうひとつ特徴がある。二人の意識が重なりあっているとき、動けているもうひとりのほうは動物の言葉がわかるようになるというのだ。双子はこの力を使い、猫をはじめとする動物から事情を聞いて調査を始めようとしたところだったという。
「……まさか」
きみはその話を素直に信じることはできなかった。双子に特別な力があるというのは聞いたことがあるが、それもあくまで都市伝説レベル。実際にそのようなことが可能だとは思えなかった。
「本当のことだよ。試してみても良いんだから」
動物の言葉はともかく、意識の共有なら確認する方法はある。双子を離れた場所に置き、一方にだけきみが書いた文字を見せ、それをもうひとりに当てさせる。
この公園に手品の仕掛けになるようなものはないから、正解が続けば双子の発言は事実となる。
「……当たってる」
きみは携帯のメモ帳に文字を打ち込み、何度も双子の間を往復した。長文では少しの間違いはあったものの、それはむしろ記憶の問題で、双子はほぼ確実に離れた状態で文字を言い当てた。
きみは確信した。この双子の言っていることは真実であると。あまりにも正確だったし、トリックの介在する余地もない。きみはミステリー好きなだけに、その辺りの不正についてはかなり厳格に防ぐ努力をしていた。
「どうしてそんな力が」
「わからない。気づいたらできるようになっていたの」
「きっと、猫殺しの犯人を捕まれるために、神様が授けてくれたんだよ」
動物の声が聞ける、きみはそちらの能力のほうも事実かどうか、知りたいという思うようになった。もしそれが本当のことなら、小説のミステリーを超える興奮をきみに与えることになる。この機会を逃すわけにはいかない。
「そうだね。ぼくも猫殺しの事件は気になっていたから、是非きみたちに協力させてもらいたい。いつからその力は使えるようになったの?」
エッジリンクの能力に気づいたのは最近のことで、だからまだ本格的な犯人探しはしていないという。どの程度の距離までエッジリンクが有効なのか、今は二人は確かめようとしていたという。
「いまのところは数百メートルが限界。集中力にも左右されるみたいだから、何度も練習を繰り返していれば、もっと持続時間は延びるかもしれない」
「それぞれの役割りって決まってるの?」
「ううん、どっちでもできるよ」
「動物とはどんなやりとりもできるの?」
「はっきりとした会話は難しいかな。相手の意識がぼんやりとこっちに流れてくる感じなの」
「これも練習すればよくなるかも」
こちら側の意識を伝えるのは難しいらしい。それができればその能力も確認することが可能だったかもしれない。
「他の人はその力のこと、知ってるの?」
「知らない。お母さんにも言ってないよ」
「変に思われるのが嫌だから。でもここでずっとやってると、いつかばれちゃうかもしれない」
「近くに住んでるんだ」
「あそこだよ」
双子が揃って指差したのは、二棟が並んで建つマンションだった。一際目を引く高さの建物で、双子が住んでいるのはその上階らしい。
「お金持ち、なんだ」
「よくわかんないけど」
「普通だと思う」
どちらにせよ、きみは金目的ではない。双子の実家が裕福かどうかなどどうでも良いことだ。
一つ気になることがあるとすれば、見知らぬ男性と娘たちが遊んでいることを不審に思った親が通報することで、昨今の事情を考えると近所の人が勝手に警察へ、ということもあり得るかもしれない。
それに気づくと、きみは急に周囲の視線が気になった。道路のほうを視線をやると、歩行者がこちらをチラチラ見ながら歩いている。
ここに長居するのは危険かもしれない。彼女たちに会ってからもう一時間は経過している。さきほどの能力試験の様子は、端からみれば異様なものと映るかもしれない。
きみは双子と次に会う約束の日取りを決め、その場を立ち去った。
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