"marry me"には主語がない

北へ。

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先輩は敬われましょう

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 僕はそれから少し考えてみた。本当の晶とはどんな人間なのか。勝手な色眼鏡をかけずに、晶がどんな人物なのか。会社で働いているとき、何気ない日常の買い物の時、僕と会話をしている時、一挙手一投足を見逃さないように注意を払った。少し気が緩むと、「晶ならこうだろう」と決めつけて行動を予測している自分がいた(大抵は合っているのだけれど、合っているかどうかは重要じゃない)。
 意外な発見はいくつかあった。同性からは予想以上に頼られ、好かれているということ。意外と女性だからという基準で判断されることも、きちんとした理由があれば自分に有利なものも不利なものもあっさり受け入れているということ。最近の流行にもきちんとアンテナを張っていて、同世代と無理なく会話ができていること。
 しかし、そういった行為を重ねていっても、本当の晶というものを理解することなどできるのだろうかという問いが頭をよぎり続けた。恋人と言っても、所詮他人は他人である以上、完全な理解などというものは無理だという思いがだんだんと強まっていった。
 そう考えると、晶が結婚を拒んでいる原因は解決不可能なものということになる。僕はどうしたものかと途方に暮れていたが、そんなある日に突然市村さんから飲みに誘われた。
「どうだい?ちょっと話があるんだ」
 部署も違ってほとんど話したこともない二人の共通点と言えば、晶以外ないだろう。晶のこととなれば、僕には断る理由がなかった。
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