友達も一人がいない、ぼっちでも最強になれます! 多分

ワールド

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第6話 ぼっちでも交流します

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 ギルド協会に足を踏み入れた瞬間、僕の心は一気に過去へと引き戻された。高校入学時の自己紹介、あの時の緊張と恥ずかしさが、まるで昨日のことのように鮮明に蘇る。ノート一冊分の準備をしても、結果はダダ滑りだった。その失敗が、今、ここで再び繰り返されるんじゃないかという不安が、心を占めていく。

 周りには経験豊かそうな冒険者たちがいて、彼らの歓談や笑い声が響いている。その活気ある雰囲気は、僕にとっては圧倒的すぎる。彼らは自然と溶け込んでいるけど、僕にはその場所が遠く感じられる。僕はただの高校生、ぼっち。ここで僕は上手くやれるのだろうか?

 自分を奮い立たせようとしても、内心は不安でいっぱいだ。何度も深呼吸を試みるが、胸の中のドキドキは止まらない。僕はただ立ち尽くし、どう動けばいいのか、どう接すればいいのか、わからない。このギルド協会の中で、僕はまるで迷子のようだ。

 でも、ここで何もしなければ、僕の状況は何も変わらない。これは新たな挑戦、自分を変えるチャンス。そう自分に言い聞かせて、一歩踏み出す勇気を振り絞る。

 周りは経験豊かな冒険者たちで溢れ、僕はただの高校生、しかも友達もいないぼっち。こんな場所で、僕は本当に依頼を受けられるのか?立ち去りたい気持ちでいっぱいだ。

 でも、立ち去るわけにはいかない。お腹が鳴る音が、僕を現実に引き戻す。一歩一歩、よろよろとしながらも受付に向かった。手が震えているのを感じながら、深呼吸をして自分を落ち着かせる。

「大丈夫、大丈夫」

 自分に言い聞かせるけれど、足がすくんでしまう。でも、ここで何もしなければ、僕はまたぼっちのまま。何かを変えたい、その一心で足を踏み出す。

 ギルド協会の中は、いろいろな冒険者たちでごった返していた。彼らはみんなそれぞれの戦いの証となる、様々な装備を身につけている。ある者は鎧を身に纏い、またある者は長いローブをまとっている。彼らの装備からは、それぞれがどんな戦いを経験してきたのか、その片鱗が伺える。

 僕は壁際に立ち、彼らを見ていると、無意識に自分の地味な服装に目が行く。彼らと比べると、僕はまるで異世界に紛れ込んだ普通の高校生のようだ。

 耳に入ってくるのは、冒険者たちの大声。彼らは自分たちの過去の戦いや、手に入れた貴重な戦利品について語り合っている。その会話には、モンスターとの戦闘の緊張感、仲間との絆、時には失敗談も織り交ぜられている。

「この前のドラゴン討伐でね、まさかの展開が!」

 という声が聞こえたり、「あの洞窟で見つけた魔法の剣がね、本当に役に立ったよ」という話も。

 彼らの会話は、まるで異世界の冒険譚のようで、聞いているだけでわくわくする。でも同時に、僕には到底及ばない世界の話のようにも感じられる。


 そうだ、僕にはどうしても依頼を受けなければならない理由がある。ここ数日、ろくな食事もしていないんだ。エルが用意してくれた最低限の水分と食事でしのいでいるけど、お腹は常に空いている。他の人たちは美味しいものを食べているんだろうな。

 受付に向かう足取りは重い。周りは、いかにも経験豊かな冒険者やギルドの常連たちで溢れている。僕はただの高校生、しかも友達もいないぼっち。こんな場所で、僕は本当に依頼を受けられるのか?立ち去りたい気持ちでいっぱいだ。

 でも、立ち去るわけにはいかない。お腹が鳴る音が、僕を現実に引き戻す。一歩一歩、よろよろとしながらも受付に向かった。手が震えているのを感じながら、深呼吸をして自分を落ち着かせる。


 エルがいれば、なんとかなるかもしれないと思っていた。でも、振り返ると、彼女の姿はどこにも見えない。「エル?」と呼びかけるが、応答はない。不安が胸をよぎる。それで、ふと服のポケットに手を突っ込んでみると、紙切れが一枚。

 紙にはエルの字で、こう書かれていた。

「あーごめん、急用が出来たわ! 後は受付で依頼適当にこなして頑張って! じゃねー」

 それを読んだ瞬間、僕は静かに沈黙した。

 そして、「ああああああああああああああああ!」と、心の底から叫んだ。



 エルの突然の姿消しは、僕に過去の辛い記憶を思い出させた。まるで、中学のときにマラソン大会で一緒に走ろうと言っておきながら、当日になって僕を見捨てたあの子のようだ。約束された絆が一瞬で裏切られたあの感覚。あの時も、信じていた人に裏切られた気がして、心の中がぽっかりと空洞になった。

「エルもあの人と同じだったのか……」

 心の中でつぶやく。信頼していたエルが急にいなくなり、僕はまた一人にされた。その事実に、どう対処していいかわからない。周りの喧騒が耳につんざくようで、すべてが遠く感じられる。

「だぁぁぁぁぁぁ」

 僕はギルド協会の隅でうなだれる。この場から逃げ出したい。でも、逃げ出す場所も、逃げ出す勇気もない。ただ、失望と孤独感に包まれていた。僕は再び、ぼっちになってしまった。


 僕が自分の孤独感と失望に浸っていると、突然受付から声が聞こえた。

「ねぇ―君、そんなところで一人で何やってんの?」

 僕はきょとんとして、まさか自分に話しかけているのかと思い、戸惑いながら「ぼ、僕ですか?」と答えた。

 声の主は、「君以外にいないよ」とケラケラ笑いながら答えてくれた。

 声の主は、とてもおしゃれなおねいさんだった。僕には彼女のような人と話すのは無理だ、と思う。七海さんとはまた違うタイプのコミュニケーション能力の高い人だ。内心で「うわわわわ」と焦る僕。

 これは何かの罠かもしれないと思っていると、受付のおねいさんは「おーい、戻ってこい」と笑いながら言った。彼女は何か優しさを感じる人だった。僕は、少し勇気を出して彼女の方に近づくことにした。こんなに話しかけやすい人だとは思わなかった。少し心が軽くなるような気がした。


 受付のおねいさんに、僕が誰もと組んでいないことを指摘された時、心の中にはグサッと痛むものがあった。彼女は、軽い口調で事実を言ってきたが、それは僕にとってはとても重く感じられた。

「やめてください、事実ですけど……」

 そう思いながらも、僕は必死に答えた。

「いや、これから誰かと組み予定だったんです……本当に、なんでもするから許してください」

 しかし、おねいさんは「えぇー、そうは見えなかったけどなぁー」とからかいながら言ってきた。

 結局、僕は正直に告白した。

「嘘です。本当は誰とも組んでくれなかったんです。すみません」

 その言葉を言い終えると、周囲は静かになっていた。ギルド協会は、クラスメイトたちの姿もなく、静寂に包まれていた。どうやら、彼らは僕の存在に気づいていなかった。寂しくて、少し悲しい気持ちになった。僕は強くなっているのに、それを誰も知らない。それを誰も見ていない。僕は一人ぼっちだった。


「んんーいいよ、ちょうど人手が欲しいんだ! 依頼があるから」と言いながら、手をパンと叩いて提案した。僕は混乱して「え?なんで、これイベント?重要なやつ?でも、まだ序盤だぞ。そんなの僕には……」

 そう思う間もなく、また自分の世界に入り込んでしまった。

「うわーーー、また自分の世界に入ったの?」

 おねいさんは笑いながら言う。

「ほら、早く戻ってきて。とりあえず、一杯やらない?」

 そうやって提案してくれた。

 よく見ると、このおねいさん、酔っているみたいだ。

「あれ? お酒飲みながら受付って……酒くさい!」

 なんだかこの人の雰囲気に引き込まれてしまう。

 こんな風に気軽に話しかけてくれる人は珍しい。
 だけど、なんだかこの人、とてもやばそう。


 おねいさんの提案を受けて、僕は彼女に対する認識を改めざるを得なかった。まず、お酒を飲みながら受付をしていること自体が、僕にとってはかなり驚きだった。彼女の態度や言動からは、ある種の無頓着さや自由奔放さが感じられる。

 彼女は酔っているにもかかわらず、依頼の話をする。これが普通か? と僕は疑問に思った。彼女はまるでルールや常識を気にしないような雰囲気を持っていて、それが僕にはかなり「ヤバい」人に思えた。

 彼女の周りには、なぜか不思議な魅力がある。他の人とは違う、何か特別なオーラを放っているように感じられる。でも、それと同時に彼女には予測不可能な面もあるようで、僕は彼女の周りにいることに少し緊張を感じる。

「やばい、この人、何考えてるんだろう……」

 僕は内心で思う。彼女の提案には乗ったけれど、どこかで警戒心を抱えたまま。彼女の次の行動が読めない不安と、そのユニークな魅力に引かれる好奇心が僕の心を複雑にしていた。
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